'95.6.9 千歳秋吉 VS ザ ウィナー
(ASP)
(新宿タイトーゲームワールド)
二大団体時代、三大団体時代は昔の話。ここ数年の間に、インディペンデント団
体が次々と旗揚げ。現在は、三〇を超える団体が濫立(らんりつ)する、多団体時
代となっている。
そんな歴史の流れを受けてか、ここにまた新たな団体が誕生した。その名はDG
PW(Dice Game Players in the World)。
団体のエースはザ ウィナー。他に選手はいない。DGPWの所属選手はウィナ
ーひとりなのだ。まさにインディペンデント中のインディペンデントといえよう。
もちろんひとりで試合はできない。人数の少ない団体はふつう、他の団体から選
手を招いて試合を組む。
だがウィナーは違った。みずから他団体のテリトリーに飛びこみ、対戦を挑んだ
のだ。
旗揚げの地として彼が選んだのは、新宿南口のタイトーゲームワールド。インデ
ィペンデント団体ASPの勢力範囲である。
6月9日午後11時。
ウィナーは会場前で、「アイム・ザ・ウィナー!」と叫んで気勢をあげた。
しかるのち、戦いの場へと足を踏み入れる。
これが新団体DGPWの第一歩。
(BGM〜鉄人28号から「正太郎マーチ」)
ほどなくして、もう一人の男が後に続いた。スーツに身を包んでいる。
彼が、対戦相手となる千歳秋吉(ちとせ・あきよし)。
ASPのトップである。
(BGM〜『イース2』オープニングテーマ)
この試合で使用されるソフトは「ワールドヒーローズパーフェクト」(ADK)。
五ゲームマッチで、先に3勝したほうが勝者となる。
千歳がスタートボタンを押した。第1ゲーム開始である。
まずは使用キャラクターの選択。千歳は使い慣れたラスプーチンをチョイス。対
するウィナーは呂布。さまざまな団体を渡り歩いてきた彼に、ふさわしいキャラク
ターといえよう。
第1ゲーム、第1セット。ウィナー呂布がいきなり火を吹いた! 久しぶりの実
戦であるが、開始早々に必殺技を出すという、彼の奇襲戦法に変わりはない。
千歳ラスプーチンは、火が消えるまでこれをじっくりと見ている。
呂布はもう一度火を吹いた。ラスプーチン、すかさずジャンプして巨大な手でパ
ンチ。呂布がこれをくらったと見るや、間髪入れずにアクセルスピン。なんとかこ
れをガードする呂布。
その後もしばらくは千歳のペースで試合が進む。巨大手パンチ、巨大足キックを
中心に、ときおりマジックファイアーやアクセルスピンを織りまぜるラスプーチン。
ジャンプキックで第1セットをものにする。
一方のウィナー呂布は基本技主体。槍を突き出してラスプーチンにダメージを与
えるが、ところどころで出す火炎噴射(火炎拳)が、ことごとく相手に見切られる。
第2セットは接戦の末勝利するが、第3セットではふたたび押され気味。
やはり1年間のブランクは大きかったのか? 最後はコサックキックが2発入っ
てしまう。千歳が第1ゲームを先取した。
第1ゲーム
千歳秋吉 ( 4分18秒 )ザ ウィナー
(コサックキック)
だが第2ゲームに入ると、状況がやや変わってくる。
スタート直後、ウィナーはAボタンを連打した。
槍撃破だ。
近づいてきた千歳J・マックスが、槍に当たってふっとばされた。
ウィナー呂布は真上にジャンプ。そして気功蹴。繰り出す脚が青い光を放つ。
やはりジャンプ攻撃をしかけようとしていたマックスの飛び際に、その光がクリ
ーンヒット!
1年間忘却の彼方にあったこれらの技を、ウィナーは第2ゲームになって、よう
やく思いだしたのだった。
必殺技が出てくると呂布は強い。槍撃破や気功蹴が、面白いように決まりだす。
そして3分58秒、呂布がミスター・ポーゴばりに吹いた炎の直撃を受けて、マ
ックスがダウン。第2ゲームはウィナーが取った。
第2ゲーム
ザ ウィナー(3分58秒)千歳秋吉
( 火炎拳 )
続く第3ゲーム第1セットも、火炎拳によりウィナーがゲット。流れはウィナー
に傾いていた。この勢いでウィナーがあと2ゲーム連取すれば、新団体の旗揚げ戦
としては、最高のシナリオになるはずだ。
ところがどっこい、そうは問屋が、いや千歳が卸さない。
第2セットは接戦の末、千歳ラスプーチンがアイスボールで呂布を凍らせて勝利。
流れを引き戻した千歳は第3セットもファイアボールを立て続けに決め、押し気味
に試合を進めていく。
残り体力わずかとなったウィナー呂布も、ここから反撃に転じる。だがそれも長
くは続かなかった。とどめとばかりにラスプーチンが、ついにアノ技を繰り出した
のだ。
「秘密の花園」。
ラスプーチンが諸肌脱いで、呂布を両腕でしっかり抱きかかえる。そして、突如
地面に現れた、花園の中へ引きずりこむのだ。
花園の中で何が行なわれているのかはわからない。ただ、「ギュッ、ギュッ」と
いう音とともに、呂布の体力が見る見る減っていく。
そしてついに力尽きた。
ウィナーは、これ以上ない屈辱的な技で、第三ゲームを落としてしまった。
第3ゲーム
千歳秋吉 (3分46秒)ザ ウィナー
(秘密の花園)
ウィナーは第4ゲーム、使用キャラをハンゾウに変えて心機一転をはかるが、第
3ゲームで味わった屈辱をまだ引きずっていたのか、烈光斬をことごとくかわされ
るなど、動きに精彩を欠いていた。
最後は千歳ラスプーチンのジャンプ小キックでダウン。あっさり2セット連取さ
れ、勝負あり。
自団体の旗揚げ戦を、ウィナーは白星で飾ることができなかった。
第4ゲーム
千歳秋吉 ( 2分50秒 )ザ ウィナー
(ジャンプ小キック)
DGPW旗揚げ戦(ワールドヒーローズ五本勝負)
千歳秋吉 (3−1)ザ ウィナー
(ASP)
敗れたものの、ウィナーの表情は意外に明るかった。勝ち負けよりも、久しぶり
に試合ができた喜びと、DGPWの未来に対する希望、それらのほうが大きいのだ
ろう。
「いつか、ゲーム界で『カリスマ』となられているかたがたと、戦ってみたいです
ね。今はまだ無理かもしれないですけど……。(中略)『カリスマ』のみなさんと
の対戦を実現させるためには、僕もゲーマーとしての“格”を上げていかなきゃな
んないんですけどね。……ガンバります!」
ゴーグルの奥に隠されてはいたが、ウィナーの瞳の輝きは、こちらにも十分伝わ
ってきた。
(ジーサン河元)
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