浜松城公園のタイワンリス 観察レポート - 2/2

【2月6日】
※注!

現在では(記・2007年8月)、タイワンリスは外来生物法で特定外来生物に指定されています。また、鎌倉市では、タイワンリスへの餌付けを禁止すると共に、有害鳥獣として捕獲の対象としています。浜松市でも、タイワンリスへの餌付けを禁止しています。

このレポート(1999年2月付)は、鎌倉市でタイワンリスが観光資源として餌やりを容認されていた頃に、浜松のタイワンリスは餌付けに対してどのような反応をするのかを見るために、素人実験で食物を少量のみ与えたものであり、現在ではこのような行為をすることは許されておりません。決してまねをしないでください。

この餌やり実験レポートは本来なら削除するべきものですが、8年前当時の試みとして、興味深いタイワンリスの反応が見られましたので、引き続き掲載しておきたいと思います。どうぞご容赦いただきますようお願いします。

今度は食べ物を持って、もう1度タイワンリスに会いに行った。今回は市役所側の入り口から公園に入ったら、家康像の広場はすぐだった。午前10時半頃に前回と同じ木の下に行ったら、また1匹のリスが近寄って来た。手に落花生を持っていることはすぐに認識したようだが、警戒していてなかなか落花生を取りに来ようとしない。手に少し近寄っては後ずさり、を繰り返していた。それは、こちらが動くからだ、と気づいた。リスが近寄って来た時に、こちらが手を「ほらほら」と動かすと、リスはビクッとして後ずさりをし、こちらがリスの方に近寄って行くと、リスは木の幹の裏側に廻ってしまう。そこで、体を動かさずに、じっとしていた。すると、リスはそろりそろりと近寄って来て、パッと手から落花生を奪い取って、木を駆け上がり、枝の上で落花生を食べ始めた。食べ終わると、また落花生をもらいに来た。

[写真:手から餌1]

こんなことをしていたら、リスがもう2匹、落花生をもらいにやって来た。前回見たのと同じリスたちかも知れない。このうち1匹は、子リスのようだった。他のリスよりも体が2まわりくらい小さく、腹部の毛は赤茶色だった(他のリスたちは全身グレーだった)。後から登場したリスたちは初め、最初に来たリスが口にくわえていた落花生を取り合ってケンカしていた。ここまで来ればちゃんとあるのに。リスたちはそのことにすぐに気が付き、こちらにもらいに来た。3匹とも何回も繰り返し手から食べ物をもらっていった。警戒心はどんどん薄れ、じきに何の警戒もせずに手から食べ物を持って行くようになった。おまけに、あるリスなどは、枝までわざわざ登って行くのはやめて、手のすぐ近くで幹に後脚で止まって下向きで食べ物を食べ、またすぐに食べ物をもらいに来る始末。時間節約、合理的だ。


[写真:手から餌2]

落花生の他に、ミカンも持って行ったので、手の上に落花生とミカンの両方を乗せておくと、リスたちは落花生を持って行った。そこで、ミカンだけを手の上に乗せておいたら、ミカンの匂いを一生懸命嗅いで、すぐには持って行こうとしない。そこに落花生も見せると、落花生を持って行く。どうやらミカンという食べ物は初めてお目にかかったようだ。しかしそのうち、とうとうミカンを持って行くリスがでてきた。食べてみたらおいしかったらしい、どんどんミカンを持って行くようになった。それを見た他のリスたちも、ミカンを食べる気になったらしい。食べてみたら、やっぱりおいしかったらしい。タイワンリスのミカンの食べ方は、うちのシマリスと比べて、体が大きい分やはり豪快だ。うちのシマリスは、ミカンの皮(1房づつの袋)はきれいに全部残すのだが、タイワンリスはおかまいなしに皮ごと食べていき、実を食べ尽くして最後に皮の部分だけが残った時点でポイッと捨てていた。その他に、ヒマワリの種とカボチャの種も与えてみたのだが、どちらもタイワンリスのお気に召さなかったようだ(シマリスはどちらも好物)。1匹が1つだけヒマワリの種を食べたが、それ以外はまったくヒマワリとカボチャの種は売れていかなかった。


[写真:餌をくわえる]
手から受け取った落花生をくわえているリス

最初のうちは、リスたちは受け取った落花生を木の枝や幹でその場で食べていたが、そのうち、石垣の石の間にあると思われるそれぞれの巣に落花生を運ぶようになった。1つ落花生をもらっては、木の枝を伝って石垣の中に消えて行き、少しすると石の間から現れて、また落花生をもらいに来ては、また運んで行った。ミカンはやはりすべてその場で食べていた。地元の人が、さっき10時頃にいつもの人が餌をあげていたからリスたちはきっとお腹いっぱいだよ、と言っていた。


[写真:枝でミカン]
枝まで登ってミカンを食べる

リスに餌をあげている間、ハトたちが、つかず離れずといった感じで側を離れないので、ハトには鳥餌をあげた。するとまぁ群がって来るわ来るわ。リスを相手にしている間も、ハトたちはまた餌をくれるのをずっと待っている。そのうち、リスにばかり餌をあげているのに業を煮やしたハトが、驚くべき行動を示した。飛び上がって木の幹につかまり、苦しい体勢ながら、リスと同じようにして、手から餌をもらっていったのだ。ハトも必死、ということか。おまけに、ヒマワリの種を殻ごと口に入れていた。あのまま全部食べちゃうのだろうか?リスが拒絶したヒマワリの種が地面に落ちた時も、ハトがドッと集まって来て、1等賞のハトが殻ごと口に入れていた。カボチャの種が落ちた時は、ハトたちは口々に種をつついていたが、食べようとするものは1羽もいなかった。


[写真:ハト]
背に腹はかえられないハトも木に登る

浜松城公園には、カラスとネコも数多くいた。リスに食べ物をあげていた木の周りにもカラスが数羽いた。カラスが鳴き声をあげると、リスは警戒して身動きを止めていた。また、リスに食べ物を与えていたら、ネコたちが寄って来て、木の下で上をうかがっていた。リスは警戒して木のあまり低い所には降りて来なかった。通りかかった地元の人が、ネコが木に飛びついてリスを襲うことがあると教えてくれた。木の下でうろうろしているネコたちを追い払ったが、ネコたちはしばらく遠巻きにこちらをうかがっていた。野生動物の餌付けは、その天敵をも呼び寄せることがある、という話を実感した。


[写真:幹でミカン]
手のすぐそばでミカンを食べている時短リス

タイワンリスは手からの給餌にすっかり慣れると、手の上に不評なヒマワリとカボチャの種しか乗っていないと、手の臭いを一生懸命嗅ぎ、そのうち、他のおいしい餌の匂いの付いている手をカプッとくわえてみたりしていた。指をちょっと噛られたりしたが、痛くはなかった。タイワンリスが手に慣れたら、いたずら心が働いてしまった。うちのシマリスに対してたまにやる遊び(いじわるとも言う)をしてみた。餌を持った手をグーに握ってみた。タイワンリスは、うちのシマリスと同じ反応をした。口や前脚で握られた手をこじ開けて、中にある食べ物をゲットした。ところが、大きなタイワンリスはシマリスとは違って、手がリスにちょっと歯や爪を当てられただけなのに、その部分の皮膚が裂けて血がにじんでしまった。うちでシマリスに何度もひどく噛まれているので、これくらいのケガはなんでもなかったのだが、これを教訓として自らの行動を慎重にすべきであったのだ。もちろん、この遊びは2度とするのをやめたのだが、戒めが足りなかった。


いくら食べ物をあげてもきりがないので、切り上げることにして、石垣の階段を登って行き、先程までリスに食べ物をあげていた木の枝が目と同じ高さの場所に移動した。そこに立って、先程までの木でリスがまだ餌をくれるのを探しているのを見物していたら、リスがこっちに気が付いた。目と目が合った。リスはすぐに枝から枝へと伝ってこちらにやってきた。こちらの目の前の木を降りて来て「食べ物ちょーだい」という顔をしてこっちを見られてはもう、「しょ〜がないわねぇ〜」と食べ物をあげないわけにはいかなかった。さっきまでの木で餌を探していた他の2匹のリスも、こっちでリスが餌をもらっているのに気づき、皆こっちにやってきた。ここで事件は起きた。リスに餌をあげているところというシャッターチャンスを狙って、デジタルカメラのスタンバイができるまで、リスに餌をあげないで、何も持っていない手を差し出していた。リスもこちらに慣れた感じで、餌の匂いの付いている手を鼻でクンクンしていて、こっちも調子に乗ってリスの顎を撫でたりしていた。すると、カプッ!とリスが手を噛んだ。タイワンリスとしてはごく軽く口にくわえただけという感じだったが、かなりの痛みを感じた。大きな歯がまっすぐ指の中に入って行ったようで、血がポタポタとしたたり始めた。うちのシマリスに思いっきり噛まれたのに近いケガだった。野生のリスは飼育されているリスとは全然違うんだし、シマリスよりずっと大きいタイワンリスが相手だし、もっと気を付けなければいけなかった。反省。

こうして、1時間ほどのリスとの触れ合いを終了することとなった。もちろん、すぐに手洗い、消毒、絆創膏は欠かさなかった。

鎌倉で4年前に出会ったタイワンリスは、ほとんど警戒心を持っていない様子で、簡単にリスに近寄って食べ物を手渡しすることができた。鎌倉のリスは、人から餌をもらうことに既に慣れ、人との共存体制ができあがっていたのだろう。それに比べて、ここ浜松のタイワンリスは、まだまだ警戒心を持っていた。しかし、ほんの短い時間で人の手に慣れ顔を覚えるところを見ると、人慣れしたリスにするのは容易なことだろう。浜松城公園でも、リスに餌をやる人が増えれば、じきに鎌倉のように人におねだりするリスとなっていくことだろう。それと共に、タイワンリスによる人に対する被害も増えていくこととなるのだろうか。浜松城公園でタイワンリスに会いたかったら、季節による差もあるだろうが、午後3時半までには行った方がよさそうだ。


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