ナイスプレー





1.良い選手

2.良いコーチ

3.良い保護者

4.チーム作りのこつ


平成12年4月12日

4.チーム作りのこつ

 平成12年3月、我が川越フレンズ平成11年チームは、最悪の1年間を終えようとしています。春の時点では今年は与野西北かフレンズかと言われていたのが、結局県大会1回戦負け、会長杯ではシードを取れず3回戦負け、秋からは満足な成績を収めることが出来ませんでした。コーチと父兄の間もぎくしゃくし、最後にはヘッドコーチもやめました。
 チーム作りの失敗は、今考えてみると本当に基本的な問題ばかりです。失敗に学び、成功に結びつけなければなりません。
  今回学んだことをチーム作りのこつとして示し、皆さんの参考にして頂ければ幸いです。

■ チームとしてのフィロソフィー(理念)をもつ
 チームには確固たるフィロソフィーを持つことが欠かせない。これがなければ、チームは成り立たない。なければ、絶対に空中分解する。成功はあり得ないし、みんながいやな思いをするだけなので、チームを作らない方が良い。
 最も大事なことは、チームとしてなにを一番大切にするのか、選手に求めるプレーはどんなプレーなのかということをはっきりさせることである。
  これが最終的には、どんなプレースタイルのチームを目指すのか、チーム作りのスケジュールと練習方法はどうするのかという具体の施策になっていく。
例えば、
一番大切にするのは:
全員で勝つチームを作る。
求めるプレー:
一番目に楽しくプレーする。
二番目に全力でプレーする。
三番目に考えてプレーする。

■ 子供のチームを作るのだと言う決意
 NBAやJBLのチームを率い、かっこいいコーチになることを夢見てはならない。子供たちが高校で花開くことができるように、金の卵を育てるために、子供たちの才能を開花させ、これから育つ下地を作って挙げるのだと決意することが重要である。

■ 小学生チームの特性を把握
 小学生のチームにおいて、4、5年生から新正規チームを作り始める時に小学生チームの特性を理解しておくことが重要である。低学年の仲良しチームでやってきた彼らは、仲間意識でチームが成り立っている。つまり、バスケも楽しいが、みんなで群れるための集まりであり、そこにはそれなりのボスが居たり、ルールがある。彼らとつきあう時にこのことを忘れると、後に示すようにつまらないトラブルや思わぬいじめ体質を育ててしまうことになるので注意が必要だ。
 このような子供たちを仕切るには、一気にコーチが彼らのボスになるか。取りあえず、彼らのボスを味方にすることでチームをまとめることになる。
 一気にボスになるやり方としては、下級生達にも自分が率いる正規チームを予め見せること等で、尊敬される存在になることが一般的であるが、誰かを外してチームが崩れる緊張感を与える等でチームを仕切ることもよく行われる。
  外すやり方としては、言うことを聞かなければ試合に出さない。もっときついのは練習にも入れないこととなるが、やりすぎるといじめになる。せいぜい半月程度である。これ以上やると、彼は組織の中で立ち上がれないかもしれないし、これを見た他の子供たちはいつ自分もそうなるかと恐れ、後に示す潜在能力を存分に発揮できないチームとなるだろう。

■ モチベーションの形成
 チームとしてなにを目指すのかを明確にし、選手に対してしっかりとしたモチベーションを形成する必要がある。たとえば、背が高く得点力のある子は、練習に出てこなくても試合に出してもらえて、活躍する。入ったばかりの子でもコーチが才能を認めれば、下手でチームの足手まといとなっても使う。これでは子供たちにどんなモチベーションが生まれるのだろうか。すべては子供たちが一生懸命にプレーすることから始まるのだから。
 練習にこなければ、試合に出さない。才能がある子はまず、練習でみんなが認めるまで技術を磨かせ、試合に出すのが正解であり、こうしたことがモチベーションの形成に欠かせない。

■ 子供の能力を最大限に引き出す
 子供は、大人が考えも付かない能力を発揮する。例えば、鍛えたミニバスチームでは高校の練習メニューを難なくこなしてしまう。大人にあるこれ以上やると危ないというリミッターが外れやすいようである。こんな子供の能力を最大限に引き出すことが勝ちに繋がる。能力を引き出すこつはその気にさせることである。締め付けだけではだめなのだ。目を掛けること、自信を付けさせることがこつである。逆に、自信をなくせばどんな能力のある選手でも活躍することはできない。

■ チームが本当に勝つということ
 それは、選手全員、その父兄、もちろんコーチが満足することである。チームが勝つために努力した成果を発揮できた時に達成される。勝負は残念ながらその時の流れがあるので、負けるときもある。でも、ベストを出し切り自分たちのゲームをして負けても納得ができるはずだ。
 逆に、勝っても自分たちが目指したバスケが出来なければ、うれしさも半減である。少なくとも精一杯頑張れれば良い。でも不完全燃焼は最悪だ。だから選手に求める3大事項の1つとして「全力でプレーする。」を挙げる。常に練習でもこの点を重視する。
 また、ゲームにおいてコーチが気を付けなければならないのは、ここが勝負となったときに、細かな作戦を与えないことだ。特にミニでは、選手が考えすぎて、足が止まり、惨めな負け方となる可能性が高い。

■ 子供には親がいることを忘れないこと
 コーチは、親から子供を預かっているということを忘れてはいけない。そして親子は一体であることも。親があのコーチはだめだと言ったら子供は心底からコーチを信頼することはできないだろう。 逆ならどうだろう。強い味方である。めんどうくさがらず、親との会話を大切にすることである。
 親を見たら今日のお子さんはがんばっていましたとか、お子さんのここが問題でそこを直しているところですと声を掛け、親をコーチの側に引き込むこと(コーチがその子に今どのように指導しているかを話す。これならいつでもネタはあるし、親も安心する)、そして健康管理を親にお願いすることである(練習以外のところでその子がどうしているかを聞けばいい。話題に事欠かないでしょう)。

■ コーチとなる覚悟
 コーチとなるには、相当な覚悟が必要である。教え子の人生を変えるかもしれない。いや、たぶん変えることとなる。その偉大な行為はフィロソフィーを貫くことで達成される。しかし、出来なければ、大変なことになる可能性がある。子供が少なくとも中学1年生でぐれたらコーチの責任だ。指導が間違っていたのか、十分でなかったのだ。

■ 新任コーチの苦悩
 先に述べたように、ミニや中学レベルでは仲間意識でチームが成り立っている部分が多い。そこにはリーダーもすでに存在し、彼らにとって心地よい関係が出来上がっている訳だ。そこに新任コーチが現れると、彼らはどんな風にこのコーチを見るだろうか。コーチはチームを指揮する訳であり、彼らにとっては、出来上がっている仲間の関係を壊す存在に写る。この中のリーダーとの関係がスムーズに出来上がらない場合には、彼もしくは彼らから冷たい扱いを受けるだろう。彼らにすれば前任のコーチが組織のボスであり、急に新任コーチをボスと感じろというのが無理な話だ。特に番長的な存在のリーダーが入ればなおさらだ。したがって、新任コーチを引き受ける時は、このことを頭において、焦らないことだ。情熱を持って当たれば、必ず子供たちから寄ってくる。彼らの悩みはいっぱいあるし、自分に目を向けてくれる人、自分の努力を認めてくれる人を欲しているのだから。

■ 選手の育て方
 どんな選手に育てるか。技術的には身体能力、ハート等から適応性を判断して決めれば良いが、基本となる選手の気質をどう育てるかが、1年経って、全国大会予選で成果として現れる。
  試合において選手に要求されるメンタルな資質とは、「冷静さ」、「集中力」、「自信」であり、これらを常に保って動ける選手になるように育てることが必要である。
 近代バスケットにおいては、メンタルトレーニングとして練習に取り入れられつつあるが、常勝チームにおいては、昔からチームなりのトレーニング方法を持っている。
 ミニバスでは、取りあえず試合経験を積ませること、試合においてコーチが分かり易い指示を出し、これを達成することで勝利に結びつくことを子供たちに判らせることから始まる。 おまえは名シューターだ等、暗示をかけることも有効だ。また、ディフェンスを中心としたチームを作ると、例えば、プレスを使えばある時間、冷静に集中したゲームができ、ゲームの主導権を握ることで自信をもってプレーすることに繋がる。これが結果的に前記の3つを育成することになる。私がディフェンスのチームを薦める大きな理由の一つだ。
 この逆を想像してほしい。半年も練習ですらゲームをやらせず、普段やっていないようなことを試合で指示し、お前はだめだと暗示を掛ける。セットオフェンスや難しいゾーンディフェンスを教えれば、どんなに良い素質をもった選手でも自信喪失して潰れるだろう。

■ コーチングのチェックリスト
 最後にコーチとして絶対にしてはならないことをまとめ、チェックリストとしたい。

@選手から逃げていないか。
  特に新任コーチ、プレー経験のないコーチは、自信がないため、自分のプライドを傷つけられない様に、どこかで子供から逃げている。子供はこれを見逃さない。迷わず、体当たりで子供と接しよう。

A目の前の勝ちに走っていないか。
 勝つのは秋以降で十分、それまでの試合では、この試合でなにをやらなくてはいけないのか。これを常に意識して試合をしよう。子供たちに、この試合の意味をきちっと理解させて、良い勝ち方、良い負け方をしよう。目の前の勝ちに走れば、何の成果も得られない試合となる。

B上手だからといって、練習をさぼるやつを、試合に出していないか。
  精一杯、がんばることが一番大事であり、つまらない勝ちにこだわって、さぼるやつを試合に出してはならない。特別扱いが許される選手が、居てはならないのだ。小手先の技術で勝てるのは夏まで、これ以降は精一杯プレーしなければ勝てない。この下地をしっかり作ろう。

C好き嫌いや、言うことを聞かないからと言って、選手をつぶすことになっていなか。
  練習にきちっと出てくるのに、言うことを聞かない場合には、必ず理由がある。番長的立場にいるか骨のある子供である可能性が高い。育てる価値の選手と考えるべきである。

D村八分の選手を作っていないか。
  チームの勝利に貢献しない子供は村八分になる。10名で基本チームを作り、センターとガードの控えを作ると12人が試合に出て、3人が残る。3人には、マネージャー、トレーナー、スコアラーになってもらう。こうすれば、全員が勝利に貢献する事となり、村八分にはならないだろう。

E選手の自信をなくさせていないか。
  選手は、自分の子供だと思って、接しよう。そうすれば、最大限怒れるし、最大限ほめることができる。