げんちゃんです!!
     
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その日
病理解剖
お葬式
火葬 埋葬
病理検査結果


1998年2月25日(水)

毎日家族の帰りを待ちわびて、身体いっぱいで喜びを表現します。
飛んで来る事ができなくなってもなお、尾でせいいっぱい喜びを表します。
うんちが間にあわなくて、寝たまま出てしまっていた時も、それでも尾を振り喜んでくれます。
ふらふらのくせに、家族が出かける時にはついてゆきたいとせがみます。
ガリガリに痩せてしまって、ママのおふとんで寝てもいいのに、どうしてもハウスで寝るといいます。
ハウスの入り口のたった数センチの段差を上がれなくて、抱いて入れてやると、安心して眠ります。
どんなにしんどくても...死にたいとか...死にたくないとか...ジタバタしないで...。

こんなにけなげな子が...。

その日、会社の帰り、病院へ迎えに行きましたが。やはり、お昼に食べた物をもどしてしまったそうです。
院長先生が、「げんちゃんが喜んで食べてくれるので、先生も嬉しくて調子に乗ってたくさん食べさせるから...」って。少しでも私の気をひきたたせようと気づかっておっしゃいました。
先生、病院の皆さんごめんなさい。そうなる事はわかっていたのに、もしかしてまだ大丈夫かもしれないって、奇跡を信じたかったから。きっともどしたとき大変だったろうね。
帰りの車の中で意識がもうろうとしているのがわかります。何度も名前を呼びました。
病院を出る間際におむつの中にうんちがでていましたので、帰ってから、パパと、あゆみと一緒に流してやりました。
さすがに食欲はなく、水さえも飲まないので、大好きだったメロンの汁をスプーンで口に入れてやると、小さな声で、んんん。って言いながらゆっくり3さじ程飲んだでしょうか。
こんな様子は始めてです。
おしっこをしたいだろうと、ベランダのシートに連れて行きましたが、立てないし、ふたりがかりで支えてやるのですが、なかなかできません。
しかたなく、もう一度おむつをしました。
そんな状態でもずっと目を覚ましていました。
寝たままではつまらないだろうと。私が夕食の支度をする様子が見えるように、テーブルの下に場所を移動させてやりました。
夕食の間もいつもおりこうに待っていたテーブルの真下で寝かせていました。ここなら、家族全員から見えます。

パパがげんちゃんの異変に気がつきました。意識がありません。

げんちゃんしっかりして、死んだらあかん、死なんといて。げんちゃん。げんちゃん......。
声をかけ続け...身体をさすり...夢中でした。
おむつの中におしっこが出てしまったようです。舌が力なく出てしまっています。
苦しむことなく、眠るように、おだやかに息を引き取りました。

ごめんねげんちゃん...もう無理しなくていいよ...これ以上頑張らなくてももういいよ...。
おいしい物も十分食べる事ができずに、よく頑張ったもの。いっぱい我慢もしたもの...。

本当に最後までおりこうな子です。
私たち家族はげんちゃんの最後を看取ることができました。

泣いて泣いて泣いて泣いて....。

気が付いたら、テレビもついたままで。テーブルの上の食事もそのままで。げんちゃんを囲んでへたりこんでいました。

おむつをはずしてやり、きれいに拭いて、柔らかい毛をブラシでとかして。

なんで死んでしもたん?

理由がわからないまま、どんなに手を尽くしても、どんどん痩せて、弱って。
いろんな人に応援してもらって、心配してもらって、それなのになんで?
くやしくて、くやしくて、かわいそうで、かわいそうで。
このまま死なせてしまうのは、どうしても納得がいかない。
私はこの子のお腹の中が見たい。何も訴えることができなかったげんちゃんの代わりに、しっかり見届けたい。理由を知りたい。
どこが痛くて何が辛かったのか、聞いてやりたい。

その夜は枕元に寝かせました。
痩せてしまって、瞼を閉じることができなくなっていましたが。まるで眠っているみたいで。柔らかい毛の感触もそのままで。なのに、いくら撫でても、起きてきません。

朝、D動物病院の開く30分前に電話をしました。げんちゃんが呼んでくれたかのように、担当の先生が電話を取って下さいました。
夕べ亡くなった事、そして、お腹の中が見たい事を告げました。

病理解剖をしていただけるそうです。



病理解剖

1998年2月26日(木)AM 10:00
病理解剖をしていただくお約束をしました。

まるで眠っているかのような子を車のいつもの席へ寝かせ、出かけました。

元気になってねと優しく撫でてくれた受付のお姉さんの目もうるんでいます。
準備をするため、先生が抱いて連れていってくださいました。

仰向けに寝かせられ、手足を固定されています。
担当の先生により、まるでまだ生きているかの子を扱うように、優しくメスが入りました。
十二指腸が黒ずんでいます。小腸は透き通るほど薄く、院長先生が、まるで草食動物のようだとおっしゃいました。
こんな風船のような薄っぺらな腸で、消化吸収などとても無理なのではないかと、初めて見る私たちでさえ思いました。

腫瘍等はまったくみあたりません。
見た目ではやはり確定診断をすることができません。
胃・十二指腸から小腸の一部、大腸の一部、膵臓の一部を切り取られ、病理検査に出すためにホルマリンに浸けられました。

妙に冷静で、涙も出ない。

解剖がおわり、待ち合い室で待っている間に、きれいにしていただいて、ダンポールの棺桶に寝かせられました。

先生は解剖の費用だけを請求され、検査の費用は私たちも知りたいからと病院で負担してくださいました。
お支払いを済ませ、検査結果の報告をお約束していただき、ペット霊園のパンフレットをいくつかいただき、車に乗り込みました。
車まで先生がいっしょに運んでくださいました。
お役に立てなくて...。とおっしゃいましたが、私たちは最期まで本当にお世話になったと心から感謝しています。



お葬式

病院でいただいたパンフレットの中から、たからづか動物霊園の分院が奈良にあり、比較的近かったので決めました。

葬儀、個別の火葬、共同墓地への埋葬を選びました。

ほどなく葬儀が始まりました。
りっぱな祭壇に安置されたげんちゃんの手に、小さな白いお数珠をいただきました。
お経と大きなりんの音に、きっとげんちゃんは驚いているだろうな。
犬でもこんなにりっぱなお葬式をしてもらえるんだ。

たくさん並べられた椅子にポツンとふたり。
そんな事考えながらも、ぽろぽろ涙が止まらない。

そして火葬をお願いしていたのですが、火葬場は宝塚の本院にあり、今日は便がないので、明日になり、お骨は来週に戻ってくるというお話なのです。
それでは、見届けることができないし、明日までこのお寺にひとりぽっちで置いて帰るのはあまりに偲びないので、今日火葬ができる本院へ自分達で連れて行くように手続きをし直していただきました。
ご面倒をおかけしたのですが、いやな顔ひとつせずに宝塚の方と連絡を取っていただき、地図など少しでもわかりやすいものをと何枚か用意していただき、とても親切にしていただきました。

奈良から宝塚まで、げんちゃんと最後のドライブです。



火葬 埋葬

宝塚の動物霊園は、急な坂を昇ったところにあり、大阪の空を一望できます。

先ほどの分院と違って、おびただしいほどの数の愛犬、愛猫たちのお墓が並んでいます。
こんなにもたくさんの人が、私たちと同じ思いで、ここを訪れているんだ。そう思うとなんだかそのお墓たちに慰めてもらっているような気がしました。

奥の方にある火葬場へ案内されました。

観音様の前で、最後のお別れをしました。
大好きなりんご、引っ張りっこしたロープ、噛んでぼろぼろの木のトングも一緒に。
最後に撫でたこの手の感触は一生忘れない。

火葬場の方はとてもたくさんお話ししてくださいます。
まるで観光案内のように淡々と説明される口調は、思考能力がさっぱりの状態にはかえってありがたかったように思えます。

1時間足らずでげんちゃんは骨だけになってしまいました。

のけぞるような熱気です。持っていたバッグは変色してしまうといけないということで、離れた所に置きました。
骨は白くてりっぱで、とてもきれいでした。
ひとつひとつ、説明されながら、お箸で拾い、骨壷の中に納めていくのですが、爪楊枝の半分ほどのしっぽの先の骨まできれいにあります。
具合の悪かった部分は茶色く変色すると聞いたことがありますが、やはり、お腹のあたりの背骨、心臓のあたり、鼻のあたりが変色していました。
あと2個所ほど青白くなっている部分は、お薬ではないかということです。
犬にものどぼとけがあり、珍しいほどきれいに残っているそうです。
生まれ変わった時のために頭から爪の先までひとつ残らず納めてあげましょう。そういいながら主な部分は私たちが、他は霊園の方が、最後にのどぼとけをそっと納め、終わりました。

初七日まで、観音様の前に安置され、あとは共同墓地へ埋葬されます。1年間共同墓地で供養をしていただき、そして土に返してくださるそうです。



病理検査結果(1998/3/17)

動物種:犬 年令:3 性別:♂ 品種:ゴールデンレトリバー

検査臓器名:胃、小腸、大腸、膵臓

病理組織診断名:悪性リンパ腫 mallgnant lymphoma

組織所見など:
送付材料中、十二指腸、空腸および直腸では、粘膜固有層に多数の中型からやや大型のリンパ芽球様細胞が浸潤、増殖していた。特に十二指腸、直腸ではそれらの細胞の浸潤が強く、一部では筋層にまで及ぶ浸潤が観察された。膵臓自体には強い変化は観察されなかったが、膵門リンパ節が腫大しており、その内部には多数の異型リンパ芽球が増殖し、組織は破壊、壊死に陥っていた。胃では強い変化は観察されなかったが、粘膜固有層に少数の異型リンパ球の浸潤が観察された。いずれの部位でも、リンパ管内には多数の異型細胞の浸潤が観察された。

リンパ芽球様の異型細胞が増殖している点から、悪性リンパ腫と診断する。

犬の悪性リンパ腫は、その発生部位により多中心型・胸腺型・消化管型・皮膚型に分けられる。本例では、体表部リンパ節や脾臓などの腫大が観察されていないことから、消化管型ではないかと思われた。消化管型では胃原発のものが多いといわれ、その他に小腸や大腸原発のものもある。本例では、抹消血中に腫瘍細胞が出現していたのではないかと思われた。


解剖をしたのが2月26日、結果の仮報告がFAXで届いたのが3月17日、随分長くかかりました。
3週間近く待ったものですから、死んだ子のは後回しになるのかしら等といらぬ心配もしました。
亡くした直後、取り乱さないように張りつめた状態で、どれぐらい時間がかかるのか等詳しい事を伺っていなかったものですから、友達も電話して聞いてみたらって、言ってくれるのですが。
結果が出ているのなら、必ず連絡をいただけると信じていましたから、待ちました。

とても意外な結果でした。
どうあがいても、救ってやれることのできない病気だった。
どんなに戦ってもかなう相手ではなかった。
死んでまで、解剖などという辛い選択をしたけれど、決して無駄ではなかった。

ひとつ、胸のつかえがおりたような気がしました。

それでも、色々な疑問が浮かびあがってきます。
痛くなかったんでしょうか?
気持ちは悪かったかもしれないけれど、痛みはなかったと思います。
何だって食べさせてやれたんじゃないんでしょうか?
食べさせれば調子が悪くなっていたのだから、何でも食べさせていれば、死期を早めることになっていたでしょう。
始めに生検をしていれば他にもっと治療方法があったのでは...。
他に治療法はあるけれども、大差はなかったと思います。
切り取った組織はどんな方法で、検査するのですか?
絵を描いて説明してくださいました。組織をロウのように時間をかけて固め、薄くスライスして検査するそうです。

検査の費用を負担していただき、結果まで丁寧に説明していただく時間を割いていただき、おかげさまでやっとひとつだけピリオドをうつことができました。
        
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