第1部:資本の生産過程
第3篇:絶対的剰余価値の生産
第7章:剰余価値率
生産物価値の機能的または概念的に異なる構成部分を、生産物そのものの、おのおのの構成部分の比率におうじた各部分で表現することは、たしかに可能である。
マルクスは、生産物のうち剰余価値を表わしている部分を「剰余生産物(surplus produce, produit net)」と名づけた。
たいへん重要なのは、この節でマルクスが指摘した「富の程度をはかる基準」である。
剰余価値の生産が資本主義的生産の規定的目的であるのと同じように、富の高さの程度をはかるのは、生産物の絶対的大きさではなく、剰余生産物の相対的な大きさである[243]
直接的な生産者の存続に必要な労働を表わしている生産物の部分にたいする剰余生産物の割合、比率が、富の程度をはかるのである。ここには、資本主義的生産の特徴がよく表現されている。資本主義的生産社会においては、富は、生産物価値の「絶対的大きさ」の度合いではなく、剰余生産物の「相対的大きさ」によって規定されること、このことが、絶え間のない、“生産のための生産活動”の無限の循環の基盤となっている。
この章の第2節でとりあげられた例示によれば、12労働時間(1労働日)が対象化されているのが6シリング価値であり、4ポンドの糸であった。この例によれば、剰余価値率は100%であり、このうち必要労働は6労働時間(1/2労働日)、剰余労働は6労働時間(1/2労働日)である。すなわち、
必要労働と剰余労働との合計、すなわち労働者が彼の労働力の補填価値を生産する時間と剰余価値を生産する時間との合計は、彼の労働時間の絶対的大きさ――労働日( working day )を形成する[244]
労働者の労働時間、労働日の「絶対的大きさ」を規定するものには、不変資本部分に対象化されている労働時間は含まれない。労働日を形成するのは、ほんらい生産される新価値(可変資本価値の補填とその増殖価値)に対象化されている労働時間にほかならない。この規定のもつたいへん重要な内容は、次の章以降の考察で明らかにされてゆくはずである。