悠の章−1『2人目』
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「ここは〜、いったいどこなのでしょう?」
セリーヌ・ホワイトスノウは深い森の中をさ迷っていた。
ドームから出された後、とりあえずここがどんな所かを知る為にドームから真直ぐに伸びている
一本道の林道にそって歩いていた筈だったのだが…
「困りましたねえ。どうしましょう?」
その朗らかな表情からは困惑は見うけられないが、彼女はとても困っていた。
更に前に進む。突然木々が消え、林道に入った。
「あら? 真直ぐ歩いていた筈なのですが、ここは〜どこなのでしょう?」
「…セリーヌさん?」
声のした方向を見る。
そこには唖然とした表情の中等部2−C のローラ・ニューフィールドが膝を抱えて座り込んでいた。
「まあ〜、ローラさんじゃないですか、お元気でしたか?」
「セリーヌさん!」
ローラはセリーヌに抱きついた。
「ああ、ローラさん。怖かったんですね。もう大丈夫ですよ、私が…」
ブスリ…という嫌な音と同時にセリーヌの背中に焼けるような痛みが走った。
「あ、あら? なんだか背中が?…」
突然のおう吐感。ローラに抱き付かれている為口を手で押さえることも出来なかった。
「ゴフッ…えっ?」
目の前のローラが真っ赤に染まる。彼女は驚きの表情をしながらセリーヌを見つめた。
「(ローラさん、全身が真っ赤ですよ?ケチャップでも被ったのですか?)」
自分が血を吐き出した事にも気付かずセリーヌは口をパクパクと動かしていた。
もはや言葉にもなっていなかった事に本人は最後まで気付かなかった。
セリーヌは全身の力が抜け、地面に倒れ込む。
その時、ローラが何か言っていた気がしたが眠くて聞き取れなかった。
「(大丈夫ですよローラさん。私が守ってあげますから。でも…今はちょっと眠くなって…」
セリーヌは永遠の眠りについた。
…その背中には包丁が突き刺さっていた。
17番、セリーヌ・ホワイトスノウ 脱落