花束を君に
1
『さあ!ついに始まりますエンフィールド大武闘会!!予選を突破した32名の勇者
たちが闘技場に集結致しました!!果たしてエンフィールド最強の戦士は誰か?!それが今日、この場所で決まるのです!!』
ワアアアアア!!
満員のコロシアム。マイクを持つ闘う審判さんのテンションは最高潮に達していた。
そして闘技場に集まっている選手の中に当然コージの姿があった。
「フン、どうやら逃げずに来たようだなコージ。その勇気は誉めてやるが今日お前が死ぬ事に変わりは無いぞ!」
こんな物騒な事を言う男は唯1人。そう自警団1のパワーファイターアルベルトだった。
「…なあアル、何度も言うが俺とクレアは…」
「おっと!今更言い逃れはさせん!俺に勝つ以外お前に生残る道はない。まあそんなことはありえないがな」
何十回目かになる溜息まじりの反論はまったく聞く耳を持たないアルベルトにさえぎられ、コージの側から離れていった。そして入れ替わるようにこんどはリサが声をかける。
「フフ、ボウヤも大変だね」
「ああ、リサか。どうしてあいつは人の話を聞かないんだろうな?」
「クレアの事になると特にね。まあできるだけ協力してあげるからあのコを幸せにしてあげるんだよ?」
「え?それって…」
『それでは今最も最強に近い男!キングオブキングス、マスクマン選手へミス・大武闘会トリーシャフォスターさんから花束の贈呈と選手の皆さんへの激励ををお願いします』
ワアアアアアアア!!
更なる大声援。闘技場中央の台に立つ人気実力NO.1のマスクマンの元に花束を持った
トリーシャが近づく。超満員の観客席に笑顔で手を振る姿はまるで人気アイドルのようだ。
「はい花束。マスクマン様頑張ってね♪」
「…」
「マスクマン様?」
「…む、ああ」
マスクマンはトリーシャから花束を受け取り客席に向かって高々と右腕を上げた。
ワアアアァァァ!!
無言の勝利宣言であろう。その姿から凄まじいまでの自信と勝利への確信が滲み出ていた。
「り、リサ…」
「フフフ、怖いかいボウヤ?でもあの気迫が解るなら観込みはあるよ」
「リサなら勝てるか?」
「…さてね。闘ってみたいとは想うけど今回のあたしの敵はマスクマンじゃない。それ以 外にも猛者がウヨウヨいるよ。楽しみだね」
「…」
『エへへ、なんだか恥ずかしいなぁ。えっと…みんなボクも応援するからガンバってね!でも怪我とかには本当に気をつけてね』
少し頬を赤らめながら選手への激励。
(こんな表情するとカワイイんだけどなぁ)
思わずコージはトリーシャに見とれてしまった。
「…トリーシャ可愛い」
「えっ?!」
後ろから聞き覚えのある女性の声…コージが後ろを振り向くと少し頬を赤くしたエルが立っていた。自分が見つめられている事に気付いたエルはいつものクールな表情に戻りコージを睨んだ。
「なんか用か?」
ぶっきらぼうに話し掛ける。
「いや、エル今何か言わなかった?」
「空耳だろ?アタシは何も言ってない」
「そ、そう…」
『さて選手の皆さんは予選を突破された時番号札を貰ったはずです。今回の1回戦、2回戦はトーナメントではなくこちらで用意した抽選番号順で闘ってもらうことはもうお聞きになっていると思いますので、早速抽選を始めたいと思います』
『それじゃあ引きます!え〜っと、コレ!』
トリーシャが抽選箱から2枚のカードをとり出す。
『さあ!最初の選手は7番と22番の選手です!闘技場に来てください』
「うわっいきなり俺かぁ…」
「フフ、良い所みせとくれよボウヤ」
リサがコージの背中を叩いて闘技場に送り出した。
『あれっ?7番ってコージさんだったんだ?頑張ってね!』
既に解説者席に座っているトリーシャがコージに声援を送る。
『22番!いませんか?こないと失格になりますよ?』
「いるよ。俺だ!」
巨大なアックスを持ち、顔にいくつもの傷のある身長190センチ以上の巨漢の男が闘技場に現れた。その男の名はクランク。コージと浅からぬ因縁のある相手だった。
2
「ひさしぶりだなコージ!」
「?え、え〜と、すまない、会った事あったっけ?」
「おーおー、上等やないけ!以前オレに負けたくせにいい度胸だ!」
「えっ?」
『それでは1回戦始めてください!!』
試合開始!
コージの武器はブロードソード。剣の刀身が身長の2/3位の長さで片手でも両手でも扱える標準的な剣だ。対するクランクは巨大なアックス。両方共競技用の武器で当然刃は抜いてある。それでも打ち所が悪ければ大怪我をしてしまう可能性はあった。
「いてまうぞコラァ!!」
クランクは両手で担ぐような態勢から一気にアックスを振り下ろした。渾身の一撃!!この一撃で一気に試合を決めるつもりだった。
「…っと!」
しかしコージはその一撃を難なくかわし、クランクの後ろに回りこんでいた。
「なに!!」
…3秒経過。しかしコージは攻撃しなかった。その為敗北を覚悟したクランクも態勢を立て直すことに成功した。
「何してるんだいボウヤは?」
今コージは完全にクランクを倒せたはずだった。何故攻撃しなかったか腑に落ちない。それは実力のある選手全ての認識でもあった。
「なあマーシャル?あのクランクってのは強いのかい?」
「ワタシよりちょっとだけ強いアル」
リサは奇跡的に予選を勝ち抜いたマーシャルに話し掛けた。
「…あんたより弱い奴がいるとは思えないんだけど…」
聞いた相手が悪かったかもしれない。マーシャルの答えは何の参考にもならなかった。
「今の場合だと大体マーシャルの7倍位の強さだ」
「エル?何だいそれ、どんな基準だい?」
「そーだな、『少しだけ強い』だとマーシャルの10倍。『わずかに強い』だと4倍。『微妙に強い』だと3倍。『いい勝負』だと2倍って所だ」
「なるほど。『いい勝負』で2倍というのは変な話だけど、ようするにあのクランクってのはたいしたこと無いってことだね」
「そうゆうこと」
「…納得いかないアル」
リサは『たいしたこと無い』と言ったがそれはリサやエルのレベルで語っているのであってクランクは決して弱くは無い。普段の武闘大会でもベスト8〜ベスト4レベルには入れる実力の持ち主だった。
(こいつなんで攻撃してこなかったんだ?そうか!マグレで避ける事ができたからどうしていいか解らなかったんだ!)
クランクはそう判断した。
しかし真相は違った。試合開始直前にコージはクランクに『以前負けたくせに』と言われた事が気になっていたのだ。先程の隙だらけの攻撃。しかし自分が以前負けたということはこのクランクという男わざと隙を作ったのでは?と考え、あえて攻撃しなかったのだ。
「ふん、マグレで避けられたようだが次はそうはいかんで?今回はどうしても優勝しなければならんし、お前だけには負けられんからな!」
「(あれ?)…俺本当にあんたに負けたんだっけ?それにどうしてそんなに目の仇にするんだ?」
「お前本当に覚えてないんか?去年の7月頃俺が試合している最中トリーシャちゃんと一緒に突然乱入して俺にやられたやないけ!」
「去年?トリーシャと試合中に乱入?…ってああ!!」
『ああっ!!』
『わあっ?!どうしたんですかトリーシャさん?』
コージとトリ−シャはクランクとの因縁を同時に思い出した。
『あ、うん、え〜っと去年のB−1の大会でさぁ、チケット買えなかったからコージさんと一緒に魔法でコロシアムに忍び込んだんだよ!そしたら間違って試合場にでちゃってクランクさんの試合潰しちゃった事があったんだ。今思い出したよ』
『えっトリーシャさん無断入場したんですか?』
審判さんがジト目でトリーシャを睨んだ。
『えっ、アハハ、でもクランクさん許してくれたから…』
そう2人は全て思い出した。何故クランクが許してくれたのかも…
「そ、そうかそれじゃクランクが優勝するって理由は…」
「ああそうや。トリーシャちゃんのキスは俺が貰うんだ!!」
そう!なんとクランクはトリ−シャファンクラブに入っているのだ。ちなみにシーラファンクラブにも入っていることは秘密だ!!
「それじゃ何で俺を目の仇にするんだ?」
「それを言うか?解っているんだゾお前がトリ−シャちゃんと付き合ってる事は!そしてこの大会で優勝した暁にはトリーシャちゃんと結婚するって話もしっとるんや!!」
「何〜!!ちょっとまってくれクランク!俺はトリ−シャと付き合ってないし結婚の話なんて知らないぞ?!」
「知らばっくれるな!!どっちにしろお前を倒せばいいんや!!」
クランクは渾身の力を込めてアックスを振り下ろした!!
しかしアックスはまたも空を切り、クランクの後ろに回りこんだコージは隙だらけの背中に剣を振り下ろした!!
「グァッ!!…お前、めちゃめちゃ強いやんけ…」
ドサァ!!
クランクは背中への強烈な一撃を食らい崩れ落ちた。
「悪いけどあの時はキツイ仕事の後で体力も魔力もギリギリだったし、武器も無くてトリ−シャを庇いながらだったからな。それにあの頃と比べ物にならないくらい俺は強くなってる」
試合終了!!勝者コージ!!
ワアァァァァ!!
「やったねコージさん♪」
トリーシャが嬉しそうにコージに近づいてきた。
「ああ。そーいえばあんな事件もあったなあ…」
「エへへ、そうだね。あの時身をていしてボクを守ろうとしてくれたんだよね♪カッコよかったなぁ〜」
「クランクに負けたけどな」
「だってあの時はボクが後ろにいたから…だからボクは…と、ところで優勝したら結婚ってホント?」
トリーシャが頬を染めながら見つめる。
「し、知らないよ。どうせローラ辺りが変な嘘をばら撒いてるんだよ」
「そ、そっか。そういえばローラ来てないね?」
ちょっと残念そうにトリ−シャは話題を変えた。
「ああ、そういえば見かけないな」
「2人共イチャイチャしてないでどいてくれる?」
エルが間に入って2人を引き剥がした。
「あっエル。次なんだ。頑張ってね」
「…ああ」
ぶっきらぼうに返事をしてエルは闘技場に上った。
「エル怒ってた?」
「何だろうな、ん?エルの相手…たぶん強いぞ!」
「ふーん、って炎星さん?!」
「知ってるのかトリーシャ?」
「な、何言ってるんだよコージさん!優勝候補の1人じゃないか!マスクマン様に勝てるとしたら炎星さんかレオンさんだって言われてる位なんだよ?」
「そうなんだ…」
「そうなんだって知らないで強いって言ったの?」
「フフ、自分が強くなれば闘わなくても相手の力量が解るんだよトリーシャ」
「あっリサさん」
「なあマーシャル、あの炎星ってのは強いのかい?」
「ワタシより結構強いアル」
「ずいぶん謙虚じゃないか。えーっと、さっきの法則でいくと…大体マーシャルの30倍ってところか?まあ相手の力量がわかってても自分の力量が解らない奴も勝てないね」
「アハハ…」
「…納得いかないアル」
「それにしてもマーシャルよく予選突破できたな?」
「どういう意味アル?予選相手の2人は恐るべき使い手だったアル!」
ちなみにマーシャルの予選相手は子犬とケビン少年だった。その激闘はまた別の物語。
『試合開始!』
「あっボク解説者席いかなきゃ!またね♪」
トリーシャは闘技場に向かった。
「鬼の居ぬ間に洗濯!!」
炎星は訳の解らない掛け声と共に鋭い手刀をエルに放った。まさに疾風!
ガシィ!!
「何!!」
必勝の一撃は…通常なら見る事さえ不可能な炎星の手刀はエルの左腕にしっかりと捕まえられていた。
「悪いけどアタシは気が立ってるんだ。手加減しないよ?」
「な、なんだこいつのパワーは?!」
右腕がまったく動かない。常に冷静が信条の炎星の表情が恐怖に歪んだ。
エルは両手で炎星の右腕を掴み…
「な、何を?!」
「ふん!!」
炎星を放り投げた!
ドカアッ!!
信じられない事に炎星の体は競技場とスタンドの境界にあたるフェンスに激突していた。
……
コロシアムは静まりかえっていた。優勝候補の炎星が一撃も与える事無く投げ飛ばされ、倒した選手はエルフの美しい少女であり、大の男を20メートル以上放り投げたのである。
「フン・・・他愛もない。おい、アタシの勝ちじゃないのか?」
『…し、試合終了。勝者エル選手!』
ドオオオオオオオッ!!
凄まじい歓声。今日1番の大歓声であった。
「す、すごいよエル!」
トリーシャが声をかける。
「そ、そうかい?」
仏頂面で闘技場から降りてきたエルは満更でもない表情で返事をした。
ザワザワ…
しかし騒ぎは今だ収まらなかった。それもスタンドではなく会場の選手達がだ。
「おい、クランクだけじゃなく炎星まであっさり負けたぞ?」
「もしかして今回の大会すごくレベルが高いんじゃ…」
「俺達だったらもしかしたら死んでたかも…」
武闘会の中堅常連選手は今大会のレベルの高さに驚愕していた。
それは地方から参加した選手も同じだった。
「エンフィールドってのはこんなにレベルが高いのか?」
「炎星っていったら王都ジェクリや城塞都市ジンにまで伝え聞く拳法家だぞ?」
「冗談じゃない!腕試しで大怪我するつもりはないぞ」
『3戦目始まります。6番と17番の選手試合場に来てください!』
「お、おい、お前だろ?早く行けよ!」
「あっ、俺急用を思い出した。試合でれないんで、それじゃ!!」
6番の選手は番号札を捨てて走りながら闘技場を去って行った。
「うっ俺も腹痛で…それじゃっ!」
17番の選手も闘技場を走り去った。
「あっ、俺も…」
「うっ持病の癪が…」
『え?あのみなさん?!』
数分の間に闘技場に残る選手達はほぼ半数となっていた。
3
コージ対クランクの闘いで興奮状態のコロシアムの正面入口でクレアは立ち止まっていた。
「……」
コロシアムに1歩近づいては離れる。そんなことをもう30分は繰り返していた。
ドカアッ!!
「うわっ?!」
「キャアッ!」
そんなクレアが後ろから突然突き飛ばされたのはコージの試合が終った時だった。
「?!いったい何が?」
「ごめん、急いでて前をよく見てなかったんだ。立てる?」
突き飛ばされしりもちを付いていたクレアに、20代前後の青年が申し訳なさそうに右腕をだした。
「は、はい」
その腕を掴んでクレアも立ち上がる。
「本当にごめんよ。どこか怪我とかしてないか?」
「あ、はい、大丈夫ですわ。私こそボーっと立っていたのです。お気になさらないで下さい」
「…」
(こんなおしとやかな感じの女の子始めてみたかもしれない)
青年は感動で思わず何も言えなかった。
「?あの、どうかなさいましたか?」
「ああ、ごめん。それより何でこんな所で立ってたの?」
「…それは…」
クレアは下を向いて言いにくそうに押し黙った。
「ああ!そうか闘技場に入りたくてもチケットがないんだな!大丈夫突き飛ばしたお詫びに中に入れてあげるよ」
青年はクレアの腕を取って闘技場へ歩き出した。
「えっ?あの私は…」
「心配しないで。俺選手なんだ。忘れ物しちゃって遅れたんだけどね」
「は、はあ忘れ物ですか」
普段のクレアだったらこの強引な青年を投げ飛ばしたかもしれない。しかし屈託なく笑う青年に何故か好感を持った。それはもしかしたら…
「うん、コレ!」
そういって青年が懐から取り出したのは全体がピンクに染まり、顔の中央を十字に白く塗られたマスクだった。まるでプロレスラーがかぶるような…青年はそのマスクを被る。
「似合う?」
「え、ええっと…」
似合わない。がクレアはさすがにコメントできなかった。
そして青年はそのままグランドコロシアムの入口に来た。
「あっ、チャンプ選手!どうしたんですもう試合は始まってますよ?」
受け付けのお姉さんが青年に声をかける。名前はどうやらチャンプというらしい。
「ちょっと寝坊してね。まだ間に合うだろ?後彼女は俺のセコンドなんだ。入れてもいいかな?」
「はい。セコンドは2人まで大丈夫です。それより早く闘技場に行ってください。もう失格になってるかもしれませんよ?」
「わかった。入ろう、ええっと…」
「私クレアと申します」
「そう、行こうクレア」
「あ、はい」
2人はコロシアムへ入っていった。
「あの、チャンプ様とお呼びすれば宜しいですか?」
「チャンプ様?!ま、まあいいや。このマスクを被ればチャンプだしね」
「はあ?」
「実はこのマスクとチャンプって称号は貰い物なんだ。まさか本当に使う事になるとは思わなかったけどね。それよりそこの階段を昇れば客席に出られるよ」
「あ、はい…」
「?あっもしかして俺の勘違いか?ごめんてっきり…」
「あ、いいえ、そうではないんです。確かにその、チケットは持っていましたし、私は試合を見なければいけないんです。ただ…」
「…俺の控え室5番なんだ。もし俺でよかったら相談にのるからそこで待ってて。とりあえず失格になってないかどうか確かめてくるよ」
「チャンプ様…」
「控え室のジュースとか飲んでいいよ。また後でなクレア!」
チャンプと呼ばれた青年は闘技場に向かって駆け出した。
「…クスッ、優しい所も少し似てらっしゃいますわ。たしか5番でしたわね」
クレアは自分でもらしくないと思っていたが先程の青年ともう少し話を、相談を聞いて欲しいと思った。
4
「まったく全然まるっきり正反対だな。同じなのは髪型くらいだ。あの子の1/10でもおしとやかだったらなぁ…」
チャンプはクレアと出会って自分の大切な女の子の事を考えていた。会えば喧嘩ばかりしていたあの子の事を…
やっと辿りついた闘技場はザワついていた。しかも選手が15〜6人位しかいない。
「ゲッ!まだ始まったばかりの筈なのになんでこんなに人数が少ないんだ?」
その時台の上に昇った審判が選手並びに客席に向かって試合方式の変更を発表していた。
『1戦目の敗者2名、そして試合不参加の選手が14名発生致しましたので急遽16名のトーナメント戦へ変更致したいと思います』
「俺とエルだけ損じゃないか?」
「まあアタシは肩ならしに丁度よかったけどね」
最も不満があるだろう2人が特に反対もしなかったので試合方式の変更は決定。
武闘大会はベスト16から開始となることになった。
試合を棄権した選手の番号札を抜き、コージとエルの札を戻してもう一度抽選が始まった。
『あっ?!』
最初の抽選札を引いたトリーシャが思わず声を上げる。
『エへへ、ご免コージさん。また1回戦…』
「ええっ?!」
トーナメント表の1戦目に7番の番号札が置かれた。
「おいおいトリーシャ…」
トリーシャは両手を合わせ拝むようなポーズでウインクした。
こうしてトーナメント表に全ての番号札がかけられた。
『選手のみなさんは自分の試合が始まるまで控え室で休憩して頂いて結構です』
「じゃあボウヤがんばりなよ」
「俺とあたるまできえるんじゃないぞ」
リサ、アルベルトは控え室に向かう。
「エルは?」
「アタシは次だからここで待ってるよ」
結局闘技場に残ったのはコージ、エル、マーシャルの3人だった。…マーシャル?!
「何だ?もしかして32番ってマーシャルか?」
1回戦の組み合わせは7番対32番である。
「違うアル。ワタシは全てのライバルの試合を見るつもりでここにいるだけアル」
「じゃあ32番って誰だ?」
「ボクだよお兄ちゃん」
その声と共に選手入場口から現れたのは小柄な紫の髪の少年リオだった。