花束を君に
5
「リオが武闘大会?!いったいどうしたんだリオ?」
コージは舞台に上がったリオにたまらず声をかけた。
「…予選を勝ち抜いたからここにいる。それだけだよお兄ちゃん」
美少年、いやもはや美少女と言っていい程の可愛らしいリオの表情に笑顔はなく、鋭くコージを睨んでいた。
「リオ、何だか怖いんだけど…」
リオの全身から気迫めいたものまで感じ、コージは多少怖気づいていた。
『でもリオはどうしてこんな危ない大会にでたの?』
トリーシャが解説席からマイク越しに声をかける。
ギロッ!!
『わあっ?!』
まさにそんな擬音がピッタリとあっているようにリオはトリ−シャを睨んだ。
(ボ、ボクリオに嫌われるようなことしたかなぁ?)
『さあ仕切り直しの武闘会1回戦!自警団第3部隊副隊長で先程武闘会常連のクランク選手を一撃で倒したコージ選手対無傷で予選突破した最年少のリオ選手の一戦!』
試合開始!!
試合開始と言われても正直コージは困っていた。確かに試合だが、弟?のように可愛がっているリオを傷つけたくはない。
「なあリオ、棄権しないか?できれば闘いたくないんだが…」
「…じゃあお兄ちゃんが棄権してよ」
「なっ?!リオ何言ってるんだ?」
「ボクのお願い聞いてくれないの?それともボクのお願いよりこの大会で優勝しなきゃいけない理由があるの?」
「り、理由って…」
(トリーシャに頼まれたから?アルベルトに勝たなければ命がないから?それとも…)
どれも受動的な理由であって自分の確固たる信念の元で闘うべき理由は…
「お兄ちゃん…やっぱり答えられない理由なんだね」
どうやらリオはコージの沈黙を答えられない理由の為と判断したらしい。
「ちょっと待てリオ、また何か勘違いの匂いがするんだが…」
「言い訳は止めて!ボク知ってるんだ。お兄ちゃんがトリ−シャさんのキスの為に大会に参加した事!優勝の暁にはプロポーズするって事を!!」
「だ〜っ!!またそれかい?!それは全部嘘っぱちだぞリオ!!」
「それだけじゃない!お兄ちゃんはクレアさんとも付き合っていてこの大会でアルベルトさんを亡き者としてクレアさんも手に入れようとしてるってことも知ってるんだ!お兄ちゃんの人でなし!!」
リオは一気にまくしたてた。
「ぐはあっ?!アルベルトに命を狙われてるのは俺の方だぞ?誰なんだそんな噂をバラまいている奴は?!」
「ボクも最初由羅さんに聞いた時は嘘だと思ったよ。でもその後ローラちゃんに聞いて不安になってアレフ君に聞いて確信したんだ。お兄ちゃんがそんな事を考えてるって事を!」
「全員噂好きなお祭り者ばっかりじゃないか!!俺を信じてくれ!」
「しょっちゅうトリーシャさんとデートしてるのに?」
「そ、それは…(確かに買物や遊びによく付き合わされるけど…俺の奢りで…)」
「クレアさんに毎日お弁当作ってもらって、夜アルベルトさんに秘密で2人っきりで過ごしていたのに?」
「うっ…(ご馳走してもらってるけど決して疚しい事は…)」
本人に自覚症状がなくても人からみたら明らかに二股である。
「わかったよリオ。俺も考えなさすぎたかもしれない。けど今回は約束があってまだ負けるわけにはいかないんだ。でも結婚とかアルベルトを亡き者にするとかは全くの嘘でそんなことはありえないから、今回はリオが棄権してくれないか?」
「…違うんだよお兄ちゃん。ボクが本当に言いたい事は唯一つ」
リオの周りに不思議な魔力が集まっている。
「それは…」
それが次第に巨大な…
「お兄ちゃんはボクの物なんだ〜!!」
巨大な獣の姿になった。
「これはリオの守護獣、守護獣ビューティ!!」
巨大な白い狼のような獣はコージに襲いかかった!!
ガリィッ!!
コージが辛うじて避けた舞台の足場は守護獣の爪でえぐられていた。
「これはヘタすると怪我じゃすまないかも…」
またも守護獣が飛びかかる!
それを前進しながら右に避け、振り向き際剣を…
ガリィッ!!
「痛ッ!」
ふりおろすより早く、守護獣は反転して襲いかかり、前足の爪でコージの脇腹をかすめた!!
「ああっ!お兄ちゃん!」
リオもコージに怪我をさせるつもりはなかった。
「お兄ちゃんもう棄権して!ビューティに勝てるわけないよ?!」
「そうでもない。…シルフィード・フェザー(敏捷力増加)」
コージは精霊魔法を唱えて剣を構える。
今のリオなら心配はないかもしれない。しかし以前の守護獣暴走の時、手も足もでず、リオに辛い想いをさせてしまった。もうそんな想いをさせない為にも、誰も傷つかないようにする為にも俺は少し強くなった。そしてビューティを止める戦法も考えていた。
(それを試してみる)
「こい!ビューティ!!」
守護獣は三度コージに跳びかかった!先程と全く同じく、しかし倍以上のスピードでコージは前進しながら右に避け、振り向き際剣をビューティの背中に振り下ろした!
「ギャイン!!」
ショックで気を失ったビューティは消え、コージはリオの目の前まで歩いてきた。
「お、お兄ちゃん…」
泣き出しそうなリオを撫でるように頭の上にそっと手を置いた。
「リオ、俺は別に2人と付き合ってたつもりはないんだけど、誤解されるような事してたかもしれないし反省するよ。最近リオに構ってやれなかったのもゴメンな。ただアルベルトを殺すとかトリ−シャと結婚とか、全部嘘だからな。んでよかったら棄権してくれるか?」
「う、うん。あのゴメンね。痛くない?」
「ああ、こんなのかすり傷だし大した事ないよ。ビューティを叩いちゃってゴメンな」
「うん、大丈夫、ビューティはビックリして消えただけで怪我とかしてないから。…ねえお兄ちゃん、もし結婚するなら後2年待ってくれないかな?」
「何で?」
「…ダメ?」
リオは潤んだ瞳でコージを見つめた。
「(か、カワイイ…)あ、ああ、別にとうぶん結婚なんて考えてないから」
「ありがとうお兄ちゃん!」
リオはコージに嬉しそうに抱きついた。
(2年後リオは15歳である…だから何と聞かれても答えようはない…)
「お、おいリオ…しょうがないなあ。え〜と、審判さん?」
『あ、はいそうですね、試合終了!勝者コージ選手!!』
こうしてコージはベスト8一番乗りを果たした。
『トリーシャさん第一試合どうでしたか?』
『…なんだかライバルが増えた気がするんだけど…』
トリーシャは膨れた表情でコメントした。
『は?』
『あっ、え〜っと、いい試合だったね』
『そうですね。リオ選手の技もビックリしましたが結局コージ選手の圧勝と言って良いでしょう。ところで結婚がどうとか?』
『ええっ?!ち、違うよ、コージさんとは唯の友達だよ!!(そうなったら嬉しいけど)ボクまだ学生だし…』
『なるほど、そういえば次の第2試合のエル選手もお友達とか?』
『うん、大切な友達!エル頑張って〜!!』
『さあ!第2試合開始です!!』
6
「なるほどね、それでクレアの彼氏と君のお兄さんが闘うことになったんだ?」
「い、嫌ですわチャンプ様、旦那様だなんて♪」
クレアは頬に両手を当てて赤面しながら答えた。
嫌と言いながらとても嬉しそうに…
(旦那様とは言ってないんだけど…)
ここはチャンプの控え室。クレアは何故コロシアムに入場しなかったかの理由をチャンプに説明していた。
「でも別にいいじゃないか?この武闘会でハッキリ決着をつけた方がいいと思うよ?」
「で、ですが争い事で決着を付けるなんて…私もあの時は兄様の横暴についカッとなって思わず出過ぎた事を言ってしまったと後悔しているんです」
クレアは心底後悔しているらしく、暗い表情でうつむいてしまった。
「争い事じゃないよ、これは…そうだな、ルールのある試合なんだ。スポーツって言ってしまうと違う気もするけど、クレアも解っていたから武闘会で決着をつけろって言ったんだろ?」
「は、はい。ですが…」
(本当は『殺してしまっても事故として処理されますわ!』と言ったのだがそれは秘密)
「それに2人は闘わないかもしれないしね?」
「えっ、チャンプ様、それはどうしてですか?」
「俺が優勝するから。2人が戦う前に俺が君のお兄さんか彼氏を倒す可能性あるだろ?」
「まあ!チャンプ様ったら…」
クレアに笑顔が戻る。
「うん、クレアは笑った方がカワイイ」
「えっ!チャンプ様!?」
チャンプのおもわぬ一言にクレアは真っ赤になる。
(はっしまった!気を付けてるのに俺って奴はどうしてこう…バレたら殺されるな…)
「あっあの、今のは決してナンパとかではなく…」
「ええ、解ってますわ、チャンプ様は私を元気付けようとして下さったんですわ」
チャンプのあたふたした言い訳を、笑顔で応えながらクレアは無意識にちょっとだけ後ろに下がっていた。
「プッ!」
「?」
チャンプはクレアのしっかりした所を見て思わず噴出してしまった。
「…どっちにしろ2人の試合は見てあげた方がいいよ。どっちが勝つにしろ、俺と闘うにしろ、どれだけ本気だか解るから」
「は、はあ…」
「解らない?根性が有る方が勝つとか、君に対する想いが強い方が勝つとかそんなことはありえない。闘いっていうのは全てにおいて強い方が勝つんだ。でも闘いぶりをみればその人間の気持ちが解る、それは間違いないよ。だから君の彼氏とお兄さんの君に対する気持ちをしっかりと見てあげるんだ。そして答えを…ね」
「…はい。解りましたわチャンプ様。私試合を見に行って参ります。ですがコージ様も兄様もとても強いです、チャンプ様が負けてしまうかも?」
「それは楽しみだ。俺が彼氏に勝っても怨まないでくれよ?」
「ええ、わかってますわ。私コージ様以外の方と闘う時はチャンプ様も応援致します。お怪我の無いよう気お付け下さい」
「またね、クレア」
(お兄さんはいいのかな?)等と思いながら笑顔でクレアを見送った。
クレアはチャンプの控え室から出てスタンドに向かう。
(やっぱりソックリですわ。後でコージ様に紹介しなくては。2人共きっとビックリしますわ)
その表情はとても晴れやかであった。
7
ドオオオオオオッ!!
その頃、闘技場では凄まじい怒号と歓声が沸きあがっていた。
それは1回戦第4試合においてまたもや優勝候補の1人といわれたレオン選手が開始わずか1分で若い女性に敗れたからであった。
そう、その女性の名はリサ。
『し、試合終了!勝者リサ選手!!』
ワアアアアッ!!
「ふん、たいした事ないね」
肩ならしにもならないといった表情でリサが闘技場から降りた。
『ま、まさに、まさに驚愕です!優勝候補と言われた炎星選手に続いてレオン選手までがベスト8に残れないという波乱の展開!エンフィールドという町には一体どれだけの猛者が眠っていたのでしょうか!!そして次の1回戦5試合目は…』
『2番、謎の銀仮面選手対、31番…31番の選手?出てきてください!』
「フフフ、新たなる不敗伝説の始まりアル!!」
そう!ついに我らがマーシャルの登場であった。
8
「コージさん。治療しますから早く上着を脱いで下さい」
「…」
「ちょっと、コージさん聞いてるんですか?」
不思議だった。ここはコージの控え室。コージは1回戦リオとの闘いで脇腹に傷を負った為控え室で治療をしてもらうことになった。それは不思議ではない。しかし何故か今大会の主治医であるドクタークラウドではなく、見習いといっては全国の医師見習いの方に失礼ではないかと言っても過言ではない自称ドクターの1番弟子であるディアーナがコージの目の前にいるのだ。
「…あのディアーナ?」
「なんですかコージさん?」
「ドクターはどうしたんだ?」
「来てますよ。それがどうかしましたか?」
「…そうか、ドクター来てるのか。じゃあなんでディアーナがここにいるんだ?」
「いやですね〜、コージさんの怪我の治療をする為に決まってるじゃないですか」
ディアーナは(何を解りきった事を言っているの?)といった表情で笑った。
「…いや、そうじゃなくって、どうしてドクターが治療しにこないのかな〜て思ったんだけど…」
「ああ!何だその事ですか!実は先生にコージさんはあたしの恩人だからコージさんの治療は任せて欲しいって言ったんです!そしたら先生が『ディアーナよく言った!他の全ての選手は俺が観るからお前はコージに専念しろ!決して他の選手の治療をしてはいけない』って言われたんです。先生あたしの為にコージさんの治療に専念しろって言ってくれたんです。他の選手全て観るなんて大変なのに…だから先生の気持ちに答える為にもコージさんの怪我はあたしが必ず治すから安心して任せて下さい!!」
(俺はスケープゴートだ…)
ドクターの残酷な決断にコージは愕然とした。
(他の選手に被害が回らないようにディアーナの専属患者にされてしまったらしい。被害を最小限に抑える為に…)
「…俺が大怪我したらどうするつもりなんだドクター」
思わず恨めしそうに声をだしてしまった。
「何いってるんですかコージさん!その為にあたしがいるんです!大船に乗ったつもりで任せてください!」
ディアーナは胸を張って答えた!
「大船、か…ディアーナ、タイタニックって知ってる?」
「?何ですか、食べ物ですか?」
「ゴメン、忘れてくれ」
「コージさん、そんなことより上着を脱いで下さい。治療できないじゃないですか!」
「たいした怪我じゃないから…」
「何言ってるんです!その怪我からばい菌が入ったらどうするんです!もう脱がしますからね!」
ディアーナは強引にコージの上着を剥ぎ取った!
「だああっ!ディアーナ!?」
「もう!手間かけさせないでくださいよ!!って、あ…血、血が…」
ディアーナはコージの脇腹から流れ出る血を見て固まっていた。
「え、ああ、爪で引掻かれたからな…ってちょっとディアーナ」
「血〜…」
といいながらディアーナは目を回しながら気を失った。
ガシィッ!!
コージは床に崩れ落ちるディアーナをとっさに抱きとめた。
「あ、あっぶな〜…」
コンコン
その時、突然ドアがノックされ…
「失礼します…」
ガチャッ
ドアが開いた。
「あっ!イヴ!丁度良い所に…」
入ってきたのは長く美しい黒髪に深緑の瞳の長身(トリーシャやディアーナと比べたらですが)の女性、イヴ・ギャラガーであった。
「…お邪魔のようね。失礼するわ」
バタン!
イヴは控え室から出ていった。
「えっ?イヴ、それって…」
密室に2人っきり、上半身ハダカの男、気を失っているディアーナ、その女性を抱きとめているコージ…これは…!?
「だぁぁっ!?イヴ!誤解だ、助けてくれっ!!」
コージはすぐさまドアを空けイヴを必死で呼び戻した。
「そう。あまり紛らわしい事はしないでもらいたいわね」
「ああ、悪かった…って俺が悪かったのかなぁ?」
事情を説明した後、ディアーナをベットに寝かせてコージはイヴに怪我の治療をしてもらっていた。
傷口を消毒して薬を塗り、ガーゼが落ちないように軽く包帯を巻いてもらった。中々の手際だ。
「イヴ上手いなぁ」
「そう?これくらいは常識だと思うけど…」
「う〜ん、血を観て気絶してしまった医者の卵を見た後だと余計に関心してしまうかも…」
「…そうね、ディアーナさんはもう少し血になれて欲しいわね。…血は…血が流れるのは人が生きている証しなのだから…」
「…イヴ…」
人形…彼女の父、人形師ルーク・ギャラガーの最高傑作。それが彼女イヴであった。
そしてそのイヴの正体を知っているのはコージとドクタークラウドだけであった。
「ごめんなさい。深い意味はないの。私はもう大丈夫。私は生きていて、そして私を友人だと言ってくれる人達がいるかぎり私は人形じゃない。人間イヴ・ギャラガーなのだから」
軽く微笑む。決して自嘲的な笑顔ではなく心からの微笑みだった。
「…そう、か」
コージもそれ以上言わない。言う必要はないから。
「でもあなたの前ではこうして自分を確認させて。時々でいいから…今回のように私を驚かせた時にはね…」
イヴはそっとコージの胸に額を付け、かるく寄りかかった。
「今のペナルティーだったの?」
「そうよ。私を驚かせた罪」
声には出さないがイヴは確かに笑っていた。
「ところであのまま出ていったのはどういうつもりだったんだ?」
「人を呼んでくるつもりだったわ。私1人ではあなたを止められないと思ったから」
「…俺をもう少し信用してくれ」
「…二股している人は信用できないわ」
「またそれか、そんなつもりなかったんだけどな…」
コージは溜息をつかざるおえなかった。
「そうね。あなたはそんな人じゃない。でも人の気持ちに気付かないあなたの鈍感過ぎる所は罪だわ。いい機会だと思う、あなたの事を好いてくれる人を見てあげて…もう、私に縛られる必要はないと思うから…」
イヴは頭を上げ、コージを見詰めた。
「イヴ、俺そんなつもりは…」
「あなたの良い所は一つの事に走り続ける事。自警団第3部隊存続の為に、その為だけに走り続けた。そして今は私の境遇を知ってどうにかしようと思っている。どうしようもないのに。いいえ違う。もう大丈夫。私は私であるともう解っているから。…時々あなたに確認させて貰っているけれど、だからこれからは自分を見つめてみて。そしてあなたの事だけを考えている人に目を向けてあげて。あなたはそうしなければいけない義務があるから」
「…難しいな。意識して走ってるつもりはないから」
「答えはまだいいと思う。今はまず気付く事だわ。あなたならできると思うから…」
イヴに見詰められコージは想わず赤くなってしまい、誤魔化す為に立ちあがった。
「…ちょっと闘技場を観てくるよ。ディアーナを任せていいかな?ってそういえばどうしてイヴがここにいるんだ?」
「ドクターに頼まれたの。今回の大会は規模が大きいから人手が欲しいって。私の他にもセリーヌさんが頼まれていたのだけれど、彼女は昨日からまた迷子らしいわ」
「なるほど、さすがドクターだ。抜かりがないね。それじゃ後頼むよ」
「ええ」
コージは自分の控え室を出て、闘技場へ向かった。
「やっぱり鈍感は罪ね。私の本当の気持ちにまったく気付いていないのだから…」
イヴはコージが出ていったドアをいつまでも見つめていた。
9
『試合終了!勝者チャンプ選手!!』
ワアァァァァ!!
コージが闘技場に入るとちょうど1回戦第8試合が終った所だった。
「…」
「どうしたんだアル?」
無言で闘技場を睨んでいるアルベルトを見つけコージは話し掛けた。
「あのチャンプって野郎、俺のライバルとそっくりな闘い方をしやがる!」
「チャンプ?あのピンクの覆面のことか?」
「そうだ。あの剣さばき、踏み込み方…ってなんでおまえと仲良く話さなければいけないんだ!」
アルベルトは思い出したかのようにコージに怒り出した。
「仲良くって…まあいいけど…」
「いいか、オレとおまえは敵同士なんだ!解ってるな!!」
「はいはい」
『さあ!これでついに真の本選と言っていいでしょう、ベスト8が決まりました。今回は優勝候補と言われた選手が軒並み敗れるという大波乱の中見事勝ち残った最強の8選手!
果たして最強の称号は誰の手に?!そしてミス・エンフィールドの口付けは誰が手に入れるのか?いよいよ本選が始まります!!』
ワアァァァァァ!!!
『さてトリーシャさん、誰が優勝すると思いますか?』
『ええっ!?難しいなあ…やっぱりマスクマン様かな?でもコージさんもエルもリサさんもアルベルトさんも強いしなぁ…ちょっとわかんないよ』
『なるほど、それでは質問を変えましょう!誰に優勝して欲しいですか?』
『えええっ!?ちょっと審判さん、そんなのもっと答えられないよ!!』
『さあ、ミス・エンフィールドをからかうのはこの辺にしていよいよ2回戦を始めましょう!!』
『か、からかうなんてひどいじゃないか〜!!』
その頃スタンドでは…
「ふふふ、トリーシャちゃんがんばってるわ」
「そうっスか?なんだか審判さんに弄ばれてるだけみたいっスけど?」
「ぶ〜☆なんでマリアじゃないのよ〜!」
「マ、マリアちゃんまだそのこと気にしてるの?」
「そんなことより次はコージさんとエルさんの闘いですよ?」
「みゃ〜!コージちゃんエルちゃんがんばれ〜」
「リオくんは私のものよ〜!」
こんな感じで応援していた。一人関係無い声援があった気がしたが…
ちなみに上からアリサ、テディ、マリア、シェリル、クリス、メロディ、由羅。
「はぁ、参りましたわ。アリサ様達はどこにいらっしゃるのかしら…」
クレアは大観衆の為、アリサ達の居場所がわからずずっとスタンドで迷子になっていた。
「あら?クレアさんじゃない?」
「えっ、あ、ヴァネッサ様!」
クレアに声をかけたのはスタンド警備を担当していたヴァネッサだった。
「どうしたの、迷子?」
「はい。アリサ様達がどこにいるかわからなくて…」
「ああ、確かみんななら西ブロックにいたと思ったけど…ねぇ、良かったらここで一緒に試合みない?けっこう退屈してたのよ」
ヴァネッサが笑いながら言う。
「ですがヴァネッサ様はお仕事中では?」
「そうなんだけどね、入場時に危険物のチェックはしたし、この人数じゃ何か起こったらどうにもならないし、とりあえず火事とかの時の脱出路のチェックはしてるからそれ以外だったら試合を見ていいっていわれてんのよ」
「そういうことだったらご一緒致しますわ」
「宜しい。って早速コージ君とエルさんの試合ね。」
「はい。2人とも怪我などしなければよいのですが…」
「ふふ、そうね」
ちなみにマーシャルは武闘会最速記録、3秒のタイムで
KO負けをきっしていたがそれはまた別の物語。