花束を君に
ドン!!
と鈍い音がさくら亭に響いた。「はいウルトラチョコレートパフェね、おまちどうさま」
ショートカットの髪、そしてラフな服装の上にエプロンをかけた見るからにボーイッシュな雰囲気の少女パティが、カウンター近くの円テーブルに座っている3人の少女の一人、大きなリボンが特徴的なトリーシャの前に特大のチョコレートパフェを置いた。(鈍い音の正体である)
「エヘヘ、待ってました!一度こうやって食べてみたかったんだよねー」
この特大のチョコレートパフェに物怖じせず、むしろ嬉々として食べ始めるトリーシャ。
このチョコレートパフェ、どれだけ大きいかというと、まず器はビールのピッチャーの容器、その中に詰め込めるだけのアイスを入れ、隙間にクラッカーや、スポンジケーキを挟み、生クリームを
1本、チョコシロップを1本、そしてバナナを3本も刺しているのである。高さにして40センチ、当然立たなければ食べられない大きさだった。(ちなみにトリーシャが頼んで作ってもらったオリジナル商品である)
「シェリルもマリアもジュースでいいの?せっかくボクの奢りなんだからウルトラチョコレートパフェ頼めばいいのに?」
同じテーブルに座っていた眼鏡をかけたおさげのシェリル、金髪の小柄なマリアは
「わ、私お腹すいてないから…」
「マ、マリアも食べたばっかりだからいらない」
と、多少声が引きつりながらも笑顔で答えた。
「トリーシャちゃんこそ大丈夫なの?」
シェリルが(いろんな意味で)心配そうに聞くと
「エヘヘ、お金の事でしょ?実は心配ないんだなーこれが」
「いや体重が…」
と言いそうになってシェリルは黙った。確かにお金の事も気になっていたのだ。
そもそも今日のトリ−シャはテンションが高すぎた。いつも高いのだが今日はいつも以上に元気だし、しかも羽振りがいい。シェリルの知る限りでもトレーディングカードをケースごと買い(大人買い!!)新品のシューズを買い、高価な限定ブローチまでも買っているのだ。しかも今特大のパフェを注文し自分とマリアにジュースを奢っている。
「そーだよ、どうしてそんなにお金あるの?はっ、まさかトリ−シャ泥棒したんじゃ?」
「しっ、しないよ失礼だなあもう!これはねアルバイトしたの」
マリアの疑いをトリーシャは即座に否定した。
「アルバイトー?それにしたって羽振りが良すぎるんじゃないのトリーシャ?」
カウンターで話を聞いていたパティが円テーブルにやってきた。
「まあね、かなり割のいいアルバイトだから。バイト代も先払いだし♪」
「えっ、それ大丈夫なの?いかがわしいバイトじゃあないでしょうね?」
パティが心配そうな、そしてちょっと怒った口調でたずねる。
「大丈夫だよ、うーん、本当はもう少し人が集まってから発表したかったんだけどな、まあいいや、ボクのアルバイトはこれ!」
トリーシャがポケットから1枚の紙を出し、テーブルの中央に置いた。
「ミス・エンフィールド大武闘会?何これ?」
パティが理解できずトリーシャを見つめた。
「もう、書いてある通りだよ、ボクがミス・大武闘会に選ばれたの!」
「?」
パティもシェリルもマリアにもどーにも理解できない。3人は再度トリーシャを見つめた。
「だからー、大武闘会を盛り上げる為には可愛いヒロインが必要でしょ?優勝者に花束を渡したり選手にインタビューしたり、それに僕が選ばれたの!!」
自分の事を可愛いヒロイン(何故ヒロイン?)と言ってしまえるトリーシャや、花束を渡す事とインタビューとはずいぶん幅が広い等という疑問(注:トリーシャは可愛いです)はあるが3人はおおよそを理解した。
「ああ、つまり今まで受け付けのお姉さんがやっていた事をトリ−シャちゃんがやるんですね?」
「…まあね」
今ひとつ面白くない理解のされ方をしたがシェリルに悪気はないし、おおよそ合っているのでトリーシャはあえて肯定した。
「ふーん、まあ解ったけどなんでいきなりミス大武闘会なんて始めたんだろ?」
「そうだよ、何でマリアじゃなくてトリ−シャが選ばれたの?」
パティは当然、マリアはまあ置いておいて当然の質問をした。
「何でも今度の大会はちょうど50回目なんだって、それで、盛り上げる為にも華やかさもなければって事らしいよ、ボクが選ばれたのは可愛いからじゃないかな♪」
「ブー☆」
トリーシャのチョット自慢そうな説明にマリアはつまらなそうに答えた。
「あ、これが今度の大武闘会のポスター。今日から張り出すっていってたから今頃町中に貼ってあるんじゃないかな?」
トリーシャがポスターをテーブルに広げた。
「ああっ、トリーシャの写真が大きくでてるー☆」
「本当、トリーシャちゃん凄い!」
「エヘヘ、やっとみんなわかってくれたかな」
トリーシャが嬉しそうに答える。
「…あれ、でもいいのトリーシャ?」
「えっパティ、何が?」
「優勝者には賞金10万Gとミス・大武闘会からの祝福のキスってかいてあるわよ?」
「ええ〜!!」
つづく