黒のディスティニー4


 

 

 「戦況はどうなっている?」

「はい、作戦予定宙域の占領は終了。我が軍の勝利です。ただ・・・」

「なんだ?」

「はい、フェイスのシン・アスカが搭乗するネオディスティニーが予定宙域を大きくオーバーしています。

どうやら敵MSアカツキを追っていると思われます」

「帰還命令を」

「・・・したらしいのですがフェイス権限でこれを拒否。『今奴を倒さないと駄目だ』と回答されたそうです」

「・・・俺が連れ戻そう」

「えっ、しかしそれは・・・」

「俺がやられるとでも?」

「そうは想いません。ですが・・・」

「シンのトレースを続けろ、2分で追いつく」

「了解しました」

 

 

赤い機体が三度戦場へ向かう。

 

 

 

 「やっぱり追ってくるか」

 左腕と右足、そしてドラグーンユニットの半数を破壊されたムウ・ラ・フラガが搭乗するアカツキは既に満身創痍といった

状態で母艦へ向かっていた。一定の距離でピッタリとくっ付いてくるネオディスティニーをレーダーで見つめ溜息をついた。

 母艦であるアークエンジェルから通信が入る。

「ムウ無事?」

「ボロボロだ。コイツ(アカツキ)じゃなきゃ俺でも瞬殺されてるぜ」

「・・・そう。結論を言うわ。今回は完敗よ。一方的に戦力を削られて占領宙域も大きく後退してる。今回生き残った所で

近いうち全滅ね」

 逃げている最中によりにもよって酷い事実を告げられるムウ。

「・・・おいおい、指揮官がそれでどうするんだ? 方法はないのかよ?」

「あるわ、今回せめて痛み分け程度に持ち込めればまだ見込みはあるわね」

「なんだそりゃ? じゃあそうするしかないだろ?」

「・・・いいの?」

 一度言いよどんだらしいマリュー・フラガの雰囲気に気付き、ムウは小さく息を吐いた。

「あ、あーそういうことか。OK、やりましょ、俺ならできるんだろその作戦?」

「ええ、不可能を可能にするアナタならできるわ」

「・・・作戦を聞こうか?」

 

 アカツキを追っていたネオディスティニーは後方からの突然の攻撃をかわす。

「なにっ?」

 更に左側からのビーム攻撃。機体を捻りながらシールドで防御する。機体では無い、ドラグーンの攻撃。

「そこだっ!」

 長距離ビーム砲をデブリに向けてはなつ!

デブリは四散、黄金の機体、アカツキが姿を現す。

「逃げるのを諦めたか。だったら・・・」

対艦刀を構える。

「死ねェえええええッ!!!」

 猛然と突撃するネオディスティニー!エネルギーチャージをしていたドラグーンユニットがまた射出される。

「しつこいんだよッ」

 ドラグーンユニットを一刀の元に切り伏せ、後退したアカツキを追う。

「よし、かかった!!」

「なにッ!?」

 ネオディスティニーの後方に戦艦2、前方に2隻が突然現れた事をモニターが告げた。

 

戦艦識別、ガーティ・ルー級戦艦4隻!!

 

 ミラージュコロイドを使い潜伏していた。

「囲んだところでッ!・・・なっ」

 シンの視界に数え切れない程の光の線が迫る。

4隻から一斉に砲撃が開始された。ガーディルー級戦艦はネオディスティニーの側にいたアカツキ毎砲撃をしたのだった。

 

 

 「うわあああああっ!!!」

 

 

 その光の束がシンとネオディスティニー、そしてアカツキを飲み込んだ。

 

 

 

 

 「なんて恐ろしい作戦を考えるかねえ?『なにがアナタならできる』だよ、おっかねえ」

 そう、戦艦からの砲撃は全てビーム兵器。アカツキのビームコーティングをいかし、正に命がけの囮作戦を実行させた

のだった。

「確かにネオディスティニーを倒せれば痛み分けだが・・・流石に残骸も・・・・・・そりゃないだろう」

 

ムウは天を仰いだ。

 

彼の眼前には無傷のネオディスティニー、

 

そして赤の機体、レジェンドmk2があった。

 

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