丸帆亭 萬釣報 #52 2000.10/15 更新                    
ロゴ サブロゴ
  
闘え、快傑 "ラビット丸" !! 孤高なる闘争!
  
 
 十六万坪の工事現場に連日出船、
シュプレヒコールを続けている
船宿”ラビット丸”(仮称)さん
の運動と活躍を紹介します。
 
 国技館で有名な両国駅の近くに、船宿”ラビット丸”(仮称)はあります。
営業の船は一艘のみ、親方も船頭もみな経営者Kさん一人でやっておられるという、ある意味では特殊な船宿さんです。船頭としての腕は超一流との事、
「何故、あんなに無理をしてまで」と言う同業者の方もおられると聞きます。
 無理と言うのは、なんと、このKさん、ご自身の開業の為に必要な桟橋の許可を10年間もの東京都建設局との交渉で手に入れた方なのです。
 本来、船宿の開業には専用の桟橋の許可が必要で、世襲や既得権以外の新規開業はほとんど不可能なほどの、複雑な許認可の世界だそうです。役所に10年間、多い年には年間200日も通い続けた勝利の結果が、都心近く、両国の堅川に桟橋として浮かんでいます。  ここ10年では最初で最後の新規船宿開業者である誇りが、水面に映るボートハウスからも、沸々とわき立っております。
 普通でしたら、一日も早い開業を考えて、違法な桟橋利用を考えたりするのでしょうが、本人曰く、とにかく曲がったことは許さない性質だとの事です。

「違法を承知でやらなければならないなら、やって捕まれば良いだけじゃないか?それは法律や条例が間違っているのだから!」とあっさり言ってのけます。
 「だから、行政や司法がいい加減な事を言って、誤魔化すのは、絶対に許さない!」と。

 そんなKさんの”ラビット丸”(仮称)にこの十六万坪の埋立反対運動の話しが届いたのが今年の春、江戸前の会の会長、安田さんからの事ですが、船宿のいくつかの組合(屋形、遊漁、東京六浦の漁協、漁連)にもいっさい属していないKさんの判断は、「一人でもやる!」との事、「協力も、現場での合流もするが、会には入らない、お互い、どこまで頑張れるか見守ろう。」との話しでした。
 前にも当サイトで触れている様に、十六万坪に対する権利は、個々の営業者にある訳で、組合や団体には何も権利は無いのだという事を、Kさんは既に知っていたようです。10年以上の法律と権利関係の勉強は伊達では無いということです。

 基本姿勢は、「権利者である自分は、この埋立事業に関しての納得できる説明は受けていないし、当然承諾もしていないのだから、埋立事業はできないはずであり、即、中止すべきである。」ということ。
 強行着工の対応行動として、
・時間の許す限り、海上にて異議を唱えるデモ運行を続けること、
( 9/11にデモ行動の申請を個人として行い、概に許可書を得ている。
スピーカーでの反対メッセージと反対表明の大旗で、現在連日実施中)
・港湾局担当官に、納得ができるまでの説明を要求する事。
まったくの正攻法、真っ向勝負、正面からの運動を続けています。

 都港湾局に対しては、概に2回の説明を要求して、担当官3人が、”ラビット丸ボートハウス”(仮称)を訪れております。
 行政側としては、要求された説明には対応したと言う事実を作りたいのでしょうが、そうはいきません。Kさんはご自身の権利の範囲を理解していますし、何よりも東京湾の開発と釣り場事情には熟知していますから、行政側が、資料に基づかない、いい加減な事を言うと、すぐに露呈して、具体的な数字や資料を要求しますから、次回への持ち越しになっているようです。ボートハウスでの担当官との交渉は既に15時間以上にのぼっているとの事です。
 これは普通に考えれば、Kさんの運動を、行政側は無視することは出来ないし、権利者である船宿さん個々が同じ事を実施すれば、埋立中止の大きな材料になると言うことですが、「Kさんは特別な人だから」という風潮は残念ながら同業者や運動の関係者の口からも聞かれるのが現状のようです。

 今まで当サイトでの報道は、船宿さんの権利関係の問題を、かなり避けてきました。何故なら、それはあまりに複雑ですし、よく分からない部分も多く、現地の自然環境の保護を、最大のテーマと考えてきたサイトの趣旨から逸脱することを最も危惧したからです。
 個々の権利者の運動を前面に出すことは、十六万坪のかけがえのない自然の保護の為に多くの人達が立ち上がったという事実を、単に釣り船業者とハゼ釣り趣味の枠に閉込める事にもなるとの判断でした。事実、TV報道などは、その多くが、
「ハゼ釣りと釣り船の人達が、反対だと騒いでいる。」と締めくくる報道も多く、これは運動の拡大への大きな障害になっているという側面があります。
これは、埋立推進の行政側の最も意図するところであり、先日の某ラジオ局の朝の放送など、江戸前の会からの世話人の出演を要請したにもかかわらず、前日に質疑応答のシナリオをわたされ、ベテランのアナウンサーによる発言の方向操作をモロにやられています。(それでも出演者二人は、良く真実を語りました。)
マスコミのすべてが、運動の支援や、公正中立な報道をするわけではないのです。特に、その支持率と次期総理の呼び声から、石原知事の支援の立場をとる局も、ますます多くなっているような傾向さえ感じられます。

 先日、偶然に”ラビット丸ボートハウス”(仮称)にて、Kさんへの港湾局担当官の説明を一時同席の機会があり、個人的に確認した範囲では、行政側の対応の中には”釣り人”の権利などという項目はまったく無いとのことでした。
ハゼ釣りの範疇にこの反対運動を封じ込めることで、一般の人の声を権利のないものと片づけ、そんなものに対応する必要はない!とするのが、都港湾局の自らが答えた事実です。 くどいですが、繰り返します。
営業は権利であるが
、利用者(釣り人)にはなんの権利も発言権もない!
まして、船利用もしない、陸からの釣り人など、考える必要もない!
釣り人以外の反対の声は、この運動を
ハゼ釣りだけの問題に誤解させ、陸からの釣り人の声は、この運動を釣り船業者の利益闘争と誤解させることで、興味をなくさせてしまう。・・・これがすべてです。

そんな中で、この”ラビット丸”(仮称)のKさんの活動は、そのスタンスは、あまりに明確なものであり、彼がその権利を主張することが、みごとに自然環境の保護運動と連帯できるものです。
口先だけの自然保護など、いっさい触れずにご自身が納得しない開発に関して、とことん闘う姿勢と、法を楯にする開発なら、法を変えるべきとの視野には、感動すら憶えています。 

 
 陸にいて、このひと月、歯噛みと
地団駄を踏んでいる江戸前の会の
メンバーをはじめ、個々のレベルで
運動を考えられるはずの船宿の方々、
埋立反対を唱えるすべての人々が
このKさんの運動にエールを送る
だけでなく、自らの問題として、
再び強く喚起することを、
心より望んでやみません。
 ”ラビット丸”Kさん(仮称)の情報によると、十六万坪から撤去された筏杭(鉄筋コンクリート)の廃材を羽田沖に沈め、人工漁礁にするとの話しがあります。溶接で焼き切った鉄筋を剥き出しのまま、沈められたら、根掛かりで釣り場にも漁場にもならないと危惧しています。それが、事実か、学術的な裏付けのある計画なのか、またまた単なる港湾局の思いつきでやってしまうのか?確認を急ぐべきです。
 また、開発の成功例として論じられがちなお台場の風物である屋形船ですが、これも調べると、あの水域に停泊すること自体に違法性の可能性もあるとのこと、それを咎めずに、工事水域には厳密な立ち入り禁止の監視と警告までする水上警察に、
なんの正当性があるのか?とも主張しておられます。

 正に東京湾の無駄な開発工事と、行政の横暴な権力行使に毎日のように接してきたKさんですので、今後の東京湾全体の保全運動に、かかせない人物です。当方の不勉強も恥じつつ、”ラビット丸”Kさんへの最大のご支援をお願いいたします。

                            ー 丸帆亭 ー    


※ ”ラビット丸”はKさんの要望で仮称にしました。この運動を営業活動と一緒
   にはしたくないとのご判断です。しかしながら、船のランニングコストは非常
   に高価です。どうか船宿としてのご利用で、皆さまには援助をお願いしておき
   ます。仮称でも両国ですからすぐわかりますし、お問いあわせは丸帆亭にメール
   でも結構です。

  その他の情報 ★

 ※ 江戸前の海十六万坪を守る会の船宿のみなさんの海上デモも、先月末から
   連日続いております。しかしながら、デモの許可が"ラビット丸"とは違い、
   あまりに時間も短いのが現実。
   陸から見えない東雲運河での行動ゆえ、もっとおおきなシュプレヒコールが
   必要と、対応中。
   (今年の湾奥のハゼの状況は船宿さんたちが一番ご存知ですよね。今年だけの
   特殊な状況と片づけて良いのでしょうか。)

 ※ 江戸前の海十六万坪を守る会での、都港湾局への再度工事中止申し入れを
   実施予定。
 ※ TV局等、マスコミより運動の取材要請が数件あり、対応中。

 ※ 12/2に”十六万坪の自然を守る会””三番瀬Do会議”等の主催による、
   シンポジウム開催決定。詳細は後ほど。


2000.10/15  校了