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OZ's 電脳書評(2002-その4)

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暗号化─プライバシーを救った反乱者たち

スティーブン・レビー著/斉藤隆央 訳/紀伊国屋書店/2002

 公開鍵暗号方式を発明した人々を追ったドキュメンタリー。アメリカの「光と影」を 感じ取ることができる。


 まず、「光」の面から。

 合衆国憲法修正第一条の理念「言論の自由」を盾に、政府、それも国防関連機関と 対立することを厭わない人々が存在すること。そして、それらの人々が勝利をかちと ること。これはアメリカの「健全さ」だ。

 この暗号をめぐる「闘い」は、「企業・市民連合対国家」ともいうべき構図で あった。「市民」が「企業」を「味方」とみなしていることも、アメリカらしい。


 いっぽう、「影」の面。

 国家機関が、「盗聴」に固執しつづけたこと。また、結局は、自国の企業の論理 (輸出規制の継続は、企業の機会損失になる)のみで方針変更がなされたのではないか? ただ、自国企業の利益を重視するのは、どこの国の政府でも同じかもしれない。


 ところで、この本の主題である暗号そのものは、数学的素養がないと理解できなさ そうだ。そのことも強く感じた一冊だった。


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