OZ's 電脳書評(2001-その1) |
最近、「インキュベーター」(孵化器)ということばを、よく耳にする。 事務所や、各種事務処理、コンサルティングなどのサービスを提供し、ベン チャー企業の立ち上げを支援しようという存在である。
本書によれば、アメリカでは、ビジネスの世界だけでなくNPOの世界にも、 この「インキュベーター」があるというのだ。中でも、マネジメントや コンピュータ技術について、コンサルティングを行なうNPOが存在しているの には、新鮮な印象を持った。
私などは、これまで、コンサルティングというと、「きれいごとをしゃべっ て高い料金を取る」といった、あまりよくない印象しか持っていなかった。 情報システムのSEという職業柄、コンサルティングを受けたり、やったり する機会が多いが、その価格は、ハードウェアの価格やソフトウェアの開発費 と比べて、高すぎると思うからだ。
しかし、知識・技術が専門化・細分化した現代において、ひとりの人間が いろいろな分野の知識を、自ら学習して習得することは、きわめて困難だ。 そこで、ある分野の知識を必要とする人々・組織に対して、その分野の専門家が、 調査や研究を代行したり、相談にのったりするのは、現代に求められる活動なの だ。ここに、コンサルティングの意義がある。その意義は、ビジネスだけでなく 市民活動においても同じだ。
そのような、社会や人々が必要としている活動に対して、それなりの対価を 得るのは、悪いことではない。我々が自立して生活していくためには、まず、 「メシが食える」必要があるからだ。
本書では、そうやって「メシを食って」いる、「社会起業家」と著者が 呼んでいる人々を、丹念に取材している。これらの人々は、やる気と信念に 満ちていて、魅力的だ。[2001/03/04]