OZ's 電脳書評(食/2003-その2) |
本書は、オリーブをめぐるルポルタージュだ。農業や料理の観点からだけ ではなく、政治・経済面での問題点も掘り下げられており、それが本書の 「奥を深く」している。
私は、オリーブオイルといえばパスタ、パスタといえばイタリア、という ことで、オリーブの主要な産地はイタリアだと思っていた。
しかし、この本を読むと、オリーブは地中海沿岸で幅広く栽培されて いることが分かる。南フランス、スペイン、パレスチナ、イスラエル、 チュニジア、ギリシャ、クロアチア…同じオリーブでも、それぞれの地域で 関わり方がちがう。本書では、それぞれの地域で、オリーブがどのように 栽培され、オイルとなり、市場に出され、食されるかを、丹念な取材に よって明らかにしている。
パレスチナやクロアチアでは、オリーブも圧政・戦争に巻き込まれている。 ギリシャやスペインでは、EUの補助金による腐敗が生まれている。しかし、 そのような問題は、オリーブが人々の生活に深く根付いているからこそ 生じているものだろう。東アジアで相当する作物は、たとえば茶であろうか?
本書を読んで、ますますオリーブが好きになった。今後、私は、良質の エキストラ・バージン・オリーブオイルを求めて、都内の店を探しまくる ことになると思う。