続・デジカメでお気楽天体写真


 天体撮影用のCCDを用いず,一般用のデジカメで星を撮影してみよう,と思い立ち,テスト撮影をしたレポートが,「デジカメでお気楽天体写真」。このときは,新しいデジカメを購入して間もない頃の,性能テスト的な面もありました。
 さて,それから半年ほど経過し,カメラもだいぶ手になじんできました。この間,月食などにもデジカメが活躍してくれました。天体撮影の画像ストックも増え,撮影方法にも工夫が加わりました。

 ぼちぼち,「お気楽天体写真」の続編とまいりましょう。

こだわりの月面撮影

 前回,カシオQV-8000SXの光学8倍ズーム+デジタル2倍ズーム+Kenko製テレコンで,640×480ピクセルの画面に,35mm判カメラの1000mm望遠レンズに相当する画像が得られたことを,報告しました。これをWeb用に320×240ピクセルにトリミングしてやると,ちょうど月の全体像が綺麗に画面に収まると言う好結果を得ました。この手法で月食も撮影しました。
 しかし,もう少し,アップの画像も欲しい。……だんだん欲張りになってきます。
 そこで,望遠鏡を引っ張り出しました。
 望遠鏡と言っても,本格的な天体望遠鏡は,セットアップが面倒だし,一般的な道具ではないので,野鳥観察などに普及している,地上用のスポッティングスコープを出します。しかも,口径50mmと言う,最低スペックのもの。前回のレポートに,やっとこ撮影したような月面写真がありましたが,あのときの望遠鏡です。
 撮影方法は,前回同様,コリメート法,つまり,望遠鏡をカメラで覗いてシャッターを切る,と言う方式。前回は,カメラも望遠鏡も三脚に載せて,光軸合わせに手間取りました。そこで今回は,大胆にもカメラは手持ち!その代わり,速めのシャッター速度(1/15〜1/30秒)で撮影し,やや光量不足な点は,画像処理でカバーすることにしました。しっかりと三脚に据えた望遠鏡で月を捕らえ,デジカメのレンズを押し当ててシャッターを切ります。カメラのフォーカスはマニュアルで無限大にセットし,絞り開放,シャッター速度もマニュアルで調整。ピント合わせは望遠鏡のほうで行います。あとはバシャバシャ撮影して,条件の良いコマを選んで,画像処理します。
 合成焦点距離は,[カメラの焦点距離]×[望遠鏡の倍率]で決まります。望遠鏡の倍率が20倍ですから,QV-8000SXを光学8倍ズーム+デジタル2倍ズーム(=640×480ピクセルの画面に,35mm判カメラの640mm相当の画像)まで引っ張れば,640×20=12800mm相当の「超望遠」になるわけです。この条件で撮影した画像を,画像処理し,320×240ピクセルに縮小したものが,これです。



 望遠鏡の性能があまり良くないので,色収差によって,エッジ部の着色が目立ちますが,まずまずの解像度の画像が得られました。これにアンシャープマスク等の処理を行えば,もう少し鮮明になると思いますが,あえて「お気楽」にこだわり,明るさ,コントラスト,カラーバランスの3つだけ,調整しました。

 使えそうな画像が得られたことに気を良くし,こちらで紹介している手法で,クレーターの立体視に挑戦します。月の全面を撮影した画像では,月の南中時刻をはさんで4時間の時間差をつけて撮影した画像を,立体合成しましたが,月面アップの場合,4時間も時間差を作ると,その間に月齢が進んで,太陽の光のあたる角度が微妙に変わるのが,けっこう目立ってしまいます。そこで,撮影の時間差を2時間とし,左右の画像を,ややオーバーにオフセット(本来の位置関係よりも,やや内側に)して,擬似的に立体感を強調します。

こんな作例となりました。
裸眼立体視に挑戦してみてください。
平行法(左の画像を左眼で,右の画像を右眼で見ます)で見てください。

裸眼立体視の作例は,こちらにもあります。




 このテクニック,もちろん,望遠鏡だけでなく,双眼鏡でも使えます。
 そこで,双眼鏡を三脚にくくりつけ,さっきと同じように撮影。



 使った双眼鏡の口径は24mm。レンズが小さいけど,なかなか健闘しています。
 非球面レンズの効果?
 クレーターも,しっかり写っています。

もっとこだわる!

 さて,小さなスポッティングスコープでも,焦点距離が10000mm以上になり,そんな焦点距離の領域でも,けっこう使えることがわかりました。そうなると,もっと違うものを撮影したくなるのが人情。……で,こんな画像を撮影しました。



 未処理では,何が写っているのか,よくわかりませんが,明るさやコントラストを調整してゆくと……



 土星の姿,わかりますか? やっとこ写っているって感じですけどね。
 これは1カットの画像から起こしたものですが,撮影方法や画像処理方法を煮詰めれば,もっと綺麗な画像が得られると思います。

 今回の「お気楽」テクニックは,ここまで。今まで使ったものは,デジカメのほかに,テレコン,ミニサイズのスポッティングスコープ,ポケットサイズの双眼鏡,三脚,そしてお絵かきソフトだけ。これだけの道具で,土星の環まで撮影しちゃうのだから,「お気楽天体写真」と言えども,侮れませんね。


(2000年9月22日記)

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