「ちょびボーグ」自由自在


「ちょびボーグ」は使って楽しい望遠鏡か?

 望遠鏡は使ってこそ,価値がある。
 使用頻度の高い望遠鏡こそが,自分にとってのベストな望遠鏡なんだと思います。……って,似たようなことをアル・ナグラー氏も言っていましたっけ(苦笑)。

 そんなわけで,いろいろ使えて遊べる望遠鏡として開発された,口径60mmのミニ望遠鏡「ちょびボーグ」。
 その運用記録です。


使い勝手を良くするパーツ

 眼視用の簡易鏡筒バンドです。
 鏡筒と同じVU65管を切り出し,スリ割を入れて,塩ビの反発力と摩擦力で鏡筒を締めるだけのものです。開閉が容易なように,スリ割り部に取っ手をつけ,底部には1/4Wネジを仕込んで,カメラ三脚に取り付けられるようになっています。鏡筒のバランスや,操作性,デザイン性を考えた作りになっています。



 地上仕様(ミニドローチューブ+直進ヘリコイドS+45°正立プリズム+アイピース)で,この鏡筒バンドをつけた状態で,大き目のペットボトルキーパーにぴったり収まります。ペットボトルキーパーの保温材がクッションの役目をしてくれて,輸送も楽々。
 地上仕様を一式まとめてデイパックに放り込み,野鳥観察に使ってみました。まぁ,見え味は普通のアクロマートなんですが,ワイド系アイピースを標準装備しているので,思いのほか快適です。一般的なスポッティングスコープよりも視野が広いと言うメリットは,けっこう大きいなと実感。有名な探鳥地でこいつを振り回していると,いろんな人が興味を持ってくれます。概して,贅沢な機材を愛用しているオジサマ達は,外見を見ただけで鼻で笑ってくれますが,某自然観察施設では,親子連れやレンジャーのお兄さんにも受けていました。覗いてみると,スコーンと広く見渡せて,気持ちいいんです。調子に乗って,自作ワイドアイピースで低倍率&さらに広角な視野を見てもらったら,「何でそんなに明るくて広いの?」と驚かれました。……いや,単に倍率を下げてアラ隠しをしただけなんですが……。ニコンフィールドスコープと同じ口径で半分の重さと言うのも,ちょっとした「ウリ」なんですけどね。

接眼部にいろいろつけてみる





 これが現在の「標準」である,地上仕様です。




 天頂プリズムを使って,天体仕様にすると,こんな感じ。
 ミニドローチューブ+36.4mm天頂プリズム+直進ヘリコイドS+アイピース。




 ワイド系アイピースや2インチアイピースなど,光路を広く取りたいときは,M57ヘリコイドで。
 上の写真の例では,ミニドローチューブ+M57ヘリコイド+天頂プリズム+アイピース。



 カメラアダプターを使う場合は,こうなります。
 この例では,M57ヘリコイド+M57/60延長筒+カメラアダプターSD-1。
 コンパクトデジカメの場合,コリメート撮影となりますので,このセットで望遠撮影することになります。
 延長筒のところに鏡筒バンドをはめて,バランスを取ります。

 ……で,肝心の光学系の実力なんですが,やっぱり60mm短焦点ですから,多くは期待出来ませんが……



 ……辛うじて土星の環が写りました。
 元がジャンクレンズですから,このぐらい写れば上出来といたしましょう。アクロマートレンズを装備したフィールドスコープと比べれば,十分に張り合っているんじゃないかな,と思います。


自由な発想で遊ぼう!

 いかがでした? けっこう遊べる望遠鏡だと思いませんか?
 この望遠鏡の自由度の高さは,M57ネジを鏡筒後端に出したことが決め手になっています。本家「ミニボーグ」の遊び心を,「ちょびボーグ」でも十分に堪能できると思います。しかも,こっちは口径がちょびっと大きい。フィールドスコープの標準口径が60〜82mmとなっている御時世,野鳥観察にも60mmは欲しい。50mm級のスコープの重さで中身は60mm,と言う「ちょびボーグ」の軽快さは,天文用途よりも野鳥観察の場面で,そのメリットを十分に発揮してくれました。これ1本で,昼間も夜も,遊べます。最近では,ジオマ65EDの代わりにフィールドに持って行くことも多くなりましたし,夜はお気軽なRFTとして,有名どころの星雲,星団を一巡り。5分ぐらいの「ベランダ観望」には,これで十分です。

 望遠鏡の使い道を決めるのも,使い勝手を決めるのも,最終的にはユーザーです。望遠鏡に自分のライフスタイルを合わせるのではなく,自分に合った望遠鏡を探す。あるいは,自分に合ったものが見つからなければ,改造したり,作ってしまう。「その望遠鏡で何が見えるのか」ではなく,「何を見たいか」「どういう使い方をしたいか」で自分の望遠鏡を決める。そんな,自分本位で自由な発想を持って,望遠鏡遊びを楽しめば,きっと,もっと自由に,星見や鳥見が楽しめるようになるのかも知れません。「ちょびボーグ」は,そんなライフスタイルに1歩近づくための道具として,使われ始めたところです。


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