月の撮影記録

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☆共通撮影データ
 望遠鏡:BORG76EDまたはビクセン ジオマ65EDフィールドスコープ
 カメラ:カシオQV-8000SX

 BORG→LV12mmまたは15mmでコリメート
 ジオマ→25倍アイピースでコリメート
 拡大率はデジカメのズームでコントロール。

 露出時間:弱拡大→1/125〜1/1500秒,強拡大→1/8〜1/20秒


 2002.04.27

 お昼頃「満月」を向かえた月。その約半日後の姿です。

BORG76ED+LV12でコリメート。デジカメはワイド端で,露出1/500秒。80%縮小しています。
正立像に直していますので,上が北,右が東となります。

ちょうど月と地球との距離が短い時期で,撮影してみると,月が大きいこと!
「天文年鑑」を見ると,月の東側が見やすいらしいので,東側のアップも狙ってみました。

 こちらはデジカメのズームを目一杯にして撮影。露出は1/10秒。
 2枚を合成しています。継ぎ目が見え見えですね(苦笑)。

 右端の欠けぎわに黒っぽく見えるのが,スミス海
 その上(北側)に,中央に山を持つ大きなクレーターがありますが,手元の月面図で名前が確認できませんでした。

 月面図と較べてみると,確かに,この辺りが広々と,よく見えています。
 月はいつも同じ面を地球に向けているのですが,微妙に首を振って(秤動といいます),時々,いつもは見えない場所,見えにくい場所が,ちらっと見えることがあります。もちろん,その,隅っこの地形に光が当たっていなければ観測できませんから,観測のチャンスは満月の頃となります。天文ファンにはあまり人気の無い満月の時期でも,月のはじっこの観測が面白いんです。


2002.05.03

 満月を過ぎ,もうすぐ下弦と言う月。
 BORG76ED+LV12mmで拡大撮影。
 中央やや下寄りのクレーターがアルバテグニウス Albategnius。その右下の大きくてフラットなクレーターがプトレマイオス Ptolemaeus。このクレーターは直径153km。東京から富士山まで収まってしまう広さです。

 こちらは月面北部。画面中央の細い亀裂は,ヒギヌスの割れ目と呼ばれる地形,その下側(=北側……この画像は南が上になっています)のクレーターはユリウス・カエサル Julius Caesar (英語読みならジュリアス・シーザー)です。
 台地状の地形とか,ドーム状の地形,亀裂や断崖のような地形は,クレーターの少ない場所でよく目立ち,光の当たり方でさまざまな表情に見え,興味を引きます。


2002.07.20

 月齢11.7,つまり,半月と満月のちょうど中間の月です。これは月面南部。倒立像なので,上が南です。
 上のほうの大きいクレーターがクラウィウスClavius,その右下の,大きめのクレーターがロンゴモンタヌスLongomontanus,ロンゴモンタヌスの左下にある,あまり大きくないけどハッキリしたクレーターがティコTychoです。ティコは満月の頃は非常に目立ちます。このページの一番上の画像で,月の下のほう(正立像なので,下のほうが南側になってます)で,やたら目立つクレーターがティコです。満月の頃には,「光条」と言う,放射状のすじが,ティコから伸びているのがハッキリ見えるのです。
 ちなみに,一番上の画像で,月面中央よりやや左上の,「海」の中に光条を伸ばしているクレーターがコペルニクスです。

 ……と言うことで,コペルニクスCopernicusのアップです。このクレーターは,月齢9を少し過ぎたあたりから,光が当たり始め,満月の頃には光条がよく発達して見えます。「海」の中の独立峰と言う感じで,周囲に大きなクレーターが無く,均整の取れた形なので,とても目立ちます。
 この画像は,1280×960ピクセルで撮影し,4枚コンポジットしたものに,わずかにアンシャープマスク処理をし,640×480ピクセルに切り出しています。コンポジットにより,多少は粒子の荒れが目立たなくなっていると思います。簡単に見栄えを良くするためのデジタル画像処理としては,ウィナーフィルターとかアンシャープマスクなどが用いられますが,ちょっと,わざとらしくなったり,元画像の荒れを強調してしまうこともあるので,コンポジットで画質を稼ぐのもひとつの方法ではないかと思います。
 ……口径76mmの小さな望遠鏡でも,理論上の分解能は月面上で約3kmに相当します。したがって,差し渡し数kmの地形までは,なんとか見えてくれそうな気もしますが,どうでしょうか?コペルニクスのちょっと下のほうに見えている,深くて小さなクレーター……ゲリュサックGay-Lussacの直径が26km。これから推定すると,10km未満の地形も見えているような気がします。


2002.08.07

 BORG76ED+LV15+QV8000
 撮影時刻は04:34。新月の47時間前です。
 露出1/20秒,シャープネス高,彩度標準,コントラスト標準,ホワイトバランス=電球

 新月前の低空の月です。低空で黄色っぽいのを,カメラのホワイトバランスでごまかしています。
 三日月よりも細い月。低空&思いのほか暗い対象なので,結構難しい……


2002.08.08

 さらに進んで,新月の23時間前の,極細の月。
 右側に木星が見えています。
 これはカメラ単体で撮影しています。

デジタルズームで640mm相当にして,月のアップ。
朝焼けの中に消えそうな月を,やっとこ捉えました。


2002.08.31

ほぼ下弦の月。
…ってことは,夜半過ぎの撮影です。
我ながら,良く頑張るよなぁ……。
天文ファンと言うのは,こういうときに睡眠時間を平気で無視するんですよね。
2001年のしし座流星雨のときは2晩連続徹夜だったし……

……余談はさておき,明け方の空は気流が安定して,気持ち良く撮影出来ることが多いのです。
夏の夜明け前と言うのは,気温もマイルドで,実に快適なひとときなのです。
ちなみに撮影時刻は02:33です。

この画像は,07.20撮影の場所とほぼ同じです。
07.20は上弦を少し過ぎた月でしたから,光の当たり方が逆になっています。
中央やや上のクラウィウスClaviusを目印に,07.20の画像と比べてみてください。

もうひとつ,コペルニクスCopernicus付近も比べてみましょう。
右端のほうにケプラーKeplerも見えています。
ケプラーの直径は32km。コペルニクスの1/3程度なのですが,周辺に大きなクレーターが無く,光条が発達しているので,けっこう目立ちます。


2002.10.16

 口径65mm,焦点距離800mmのジャンクレンズを手に入れたので,望遠鏡を作ってみました。
 そのテスト撮影です。
 アクロマートレンズですから,目視でピントを出すと,青系統の色がにじみます。Fの大きいレンズなので,眼視では,まぁ,さほど気にならないかな,と言うレベルの色収差なのですが,撮影してみると,青がしっかり見えてしまいます。この色にじみをごまかすべく,あれやこれやと画像をいじくり回したら,ハイライト部は青にじみが残ったまま,欠けぎわは,なんとなく黄色っぽいと言う,不思議な画像になってしまいました。拡大画像では鑑賞に耐えるような状況ではないので,縮小画像にて失礼します。
 解像度はまずまずだと思います。月は色彩の乏しい天体ですから,あえてカラー画像にこだわらず,ボケの大きい青画像を捨てて,モノクロ化してみると言う手も使えそうです(こうすると,原理的には黄色フィルターをかけてシャープに仕上げたモノクロ写真のようになります)。いずれにしても,アクロマートレンズを使いこなすには,もう一工夫欲しいところです。
 撮影エリアは,おなじみクラウィウスClaviusの辺りです。

 もうひとつ,コペルニクスCopernicusの画像。
 7/20,8/31のBORG76EDによる画像と比べてみてください。
 ……解像度的には,口径65mmなりの実力は出ていると思いますが,どうでしょうか?

 65mmの長焦点アクロマートレンズって,20年前の天文少年の,ほぼスタンダードな持ち物だったと記憶しています。昔は,このぐらいの解像度の写真が撮れたら,大喜びだったのですが,撮影機器の進歩のおかげで,ちょこちょこっと撮影しただけで,このレベルまで撮れるようになったんですね〜。時の流れを感じます。それと同時に,こう言う,今となってはクラシカルなスペックの望遠鏡でも,用途によっては,まだまだ沢山の活躍の場があることを,認識させられました。
 ……この望遠鏡,ちょこちょこっと月を見たいときに,結構便利なんですよ。


2002.10.17

 久しぶりにフィールドスコープ(ジオマ65ED)で撮影。正立像です。7/20の月面南部の画像と,ほぼ同じエリアです。画像の中心にティコTychoを据え,BORG76EDほど拡大率を欲張らずに撮影しています。地上用の望遠鏡と言えども,EDレンズを使ったアポクロマートですから,切れ味は上記のアクロマートよりも,遥かに上ですね。分厚い正立プリズムを通しているせいでしょうか,上記の自作65mmやBORGに比べると,コントラストが落ちる感じがしますが,解像度,色収差の点では,EDレンズの実力を十分に発揮していると思います。
 こう言う機材も,お気軽な星見の道具として,いろいろ活用できますね。鳥を見るだけじゃもったいない?


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