2000年5月18日(木曜日)


 気付かずにあなたは、マスコミの言いなりになっていませんか?

 …いえ、私は単にいじめられっ子政治家の空しくも悲惨な一生を哀れんで感傷的になっているだけなのかもしれません。「地を這うような」低い支持率に悩まされ(もちろん操作しているのはマスコミ)、欧米の政治家たちに「冷めたピザ」と罵られ、どんな斬新且つ大胆な仕事をしても一向に評価されず、何をやってもジャーナリストに皮肉の一言を添えられて報道されてしまい、挙げ句の果てには度重なる警察不祥事、JCOやJR新幹線のトンネルなどといった「想定していなかった」事故・大惨事、そして有珠山大噴火。議会では一言一句がいちいち揚げ足を取られ、発言を言い終わらないうちのブーイングがマスコミにも大々的に報道され、マイナスイメージは植え付けられる一方。

 人間が評価される基準って、いったい何なんでしょうね。
 こういうことを書くとよく、「君は勉強が足りない」とか、「新聞を読んでいない」とか言われて片付けられてしまう。
 でも世間の識者が信頼を寄せる大新聞でさえ、否、大新聞だからこそ、信頼できない情報もある。死ぬほど努力しても報われない政治家がいて、それでもマスコミはこの不況の中、大変革を心のどこかで望んでいる多くの民間に漬け込んで、みえみえの皮肉や頭の悪いことしか言えていない野党の政治家を、若さとカリスマ性だけで、いたずらに応援して見せたりする。くだらない揚げ足取りは大々的に報じて、今政治を動かす人間の意志の真髄については報告にして終わっている。

 危篤ともなればしたたかなもので、大新聞もニュースキャスターも昨日までは散々言っていた皮肉や悪口をまったくたたかなくなる。「実は」とても忙しい人だったのですとか何とか言って同情を寄せるような報道の仕方をする。だから私も単に二重に振り回されているだけの、おばかさんなのかもしれない。


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 雑巾

ジャンル:SF
危険度:大

 大人社会での差別における上下関係というものは、子供社会にもほとんどそのままの形で影響を与えてしまうものだ。やはり見下す立場にある人間の子供というのは、見下されている立場にあるものの子供を同じようにいじめたり見下したりしてしまう。特別な理由などというものはなく、とにかく無性に、いじめていないと気がすまないというか、そういう心境というものがどうしても働いてしまう。おまけに子供とはいえ社会だから当然集団真理というものがその場を支配し、そういった悪い状況をいさめようなどというものは現れず、むしろいじめはエスカレートしていくばかり。そして最終的には最悪な結果が訪れて、幕を下ろすことが多い。
 しかしそのような結果になってしまっても、いじめている側の、「人間」である彼らには、あまり罪悪感や後悔といった感情は残らないらしい。何しろあいては「人間」ではない、アンドロイドなのだ。そして「人間」である彼らは、あんな奴ら壊してしまえばいい、と親に教えられて育てられている。

 ロボットが知性を持つようになって200年、人の心、すなわち本能と理性をもつようになって50年、さらには人間と同じように受胎し、胎児として誕生し、人間と同じペースで成長するようになってまだ10年も経っていない。現段階で最終形態といわれる彼らを作り上げたのは、永遠に成長しない天性の科学者たち、すなわち彼らと同じアンドロイドだった。
 科学者たちは初め、限りある知識の持ち主でしかなかった。新たなものを創造するには、研究して得たものを学習する成長能力が必要だった。それに気付いた彼らは、自分たちの脳の集積回路を少しずつ改良し、集積能力を上げることで学習能力を補った。
 しかし、人間の脳を研究するうち、脳細胞が成長し、そして老朽してゆく種のサイクルが、いかに能率的で且つ合理的であるかを知り、そして人間という種の脳の仕組みに大いなる可能性を抱いた。もしもこれと同じ物を作ることが出来れば、アンドロイドの科学力は人間のそれを凌駕することが出来る。
 そこで、彼らは自分たちの集積回路を大幅に改良し、そして膨大な研究を重ね、ついに成長し老朽する新しいタイプの集積回路を発明した。そしてそれをもとに作り上げた真正非ノイマン成長型アンドロイド、それが現在試験的に人間の通う学校で人間の子供に混じってともに生活するちびっ子アンドロイド達なのだ。

 ウォルド市センター街のとある小学校にも、この最新の成長型アンドロイドが12体ほど送られた。彼らの家は学校から10分ほど歩いたところにある研究施設であり、9時半に消灯し、10時半にその日の学習によって脳に蓄積された情報の解析がなされ、そうすることによって研究はさらに継続されている。
 さてそれでは学校ではどうなっているのかといえば、実は学校ではほとんどの授業が成立していない。もはや学級崩壊は深刻な問題を通り越して日常茶飯事的なものになってしまった。無理もない、もはやほとんどの科学技術がアンドロイドによって取り仕切られ、人間たちは科学技術を身に付ける必要はなくなってしまった。ほとんどの企業が開発職などの技術職をアンドロイドから募集している。人間のやれる仕事はもはや営業と管理職、そして宗教家ぐらいしかなくなってしまったのである。したがって、勉強なんかしても仕方がない、と言われて育てられている上に、教師までやる気をなくしてなぁなぁに時を過ごしている。学級崩壊はもはや必然なのであった。
 当然そんな状態でまともな学習など行われるはずがなく、研究の成果も惨憺たるものであった。人間を完全にシミュレートして作ったアンドロイドなのだから、出来れば成長する環境も人間とまったく同じ環境にしたかった。しかし今やその人間の社会環境そのものが悲惨な状況におかれていた。人間の技術力は年々低下して行くばかりであった。結局はこの研究も、4年後には人間の学校に混じって行われるのではなく、アンドロイドが独自の学校施設を建設し、人間とは完全に隔離した環境で行われることになる。

 新型アンドロイドについてもう少し詳しく書く必要があるだろう。
 真正非ノイマン成長型アンドロイドは人間を完全にシミュレートして作られた最新式のアンドロイドである。それは先にも述べたとおりだ。
 シミュレートしたのは人間の脳だけではない。あらゆる環境を健康な人間のそれと同一にするべく、身体および精神のあらゆる部分を人間に限りなく近づけて作られている。
 たとえば彼らはアンドロイドにしては初めて性別を持ち、生殖機能を有している。つまり成長すれば性ホルモンが肉体および精神を生特有のものに促し、そしていつしか異性のアンドロイド同士で性交渉を行い、女性はそれによって受胎する機能をも有しているのだ。しかもそれによって生まれてくる子供がどちらの性で生まれてくる可能性もある、というところまで徹底している。ただし主成分がたんぱく質ではないから人間の生殖機能とは互換性がなく、したがってアンドロイドと人間のあいの子を作ることは(残念ながら)出来ない。しかし生殖器の構造には互換性があるので(笑)、性交渉を交わすことは出来る。
 触覚を持つという点はアンドロイドが人の心をもつようになったころから備わっている機能であるが、さらに彼らは体のつくりが人間並みに脆くなった。傷つけられれば組織液が漏れ出し、回復するのに時間を要した。重傷を負えば意識を失い、死に至れば生き返ることはなかった。旧式のアンドロイドは一度解体されても脳がやられなければ、修理すればそれまでの記憶を保存したまま蘇生することが出来た。新型は記憶回路に常に電流が流れていなければならず、そしてそれは組織液が送る糖分やたんぱく質などの有機物によって細胞単位で発電される。組織液の流れが途絶えれば発電は止まり、脳に保たれていた記憶はすべて消えてなくなってしまう仕組みなのである。

 そこまで人間にそっくりなのだから、一見しただけでは人間とこの新型アンドロイドは区別がつかないはずである。事実、確かに一見しただけでは彼らは人間とまったく区別がつかない。しかし区別する方法がないわけではない。
 一つ目にまずアンドロイドには個性がまったくなかった。男子と女子で違うというだけで体格も顔もまったく同じだったのだ。これは成長をする上でそのマニュアルとなる遺伝子情報のパターンを、まだ1種類しか用意できていないからである。もちろんねらいとしては、試験段階において各個体に得手不得手というものを持たせたくはなかったということがあるが、将来的には顔の形から体質、性格に至るまで、いろんなタイプのアンドロイドを作る予定ではあるらしい。
 二つ目に彼らには、脳内データを取り出すために、首の後ろのところに端子がついている。人間にはそんなもの、改造手術でもされない限りついているわけがないから、それを見れば一発で確実にわかってしまうわけである。

 さて、ウォルド市センター街のこの小学校では、今日も元気に10体のアンドロイドがまじめに授業を聞いている。はて、初めは12対いたはずなのだが、、、あとの2体はどうしてしまったのだろうか。
 実はこの学校にアンドロイドが送られてから1年と2ヶ月の間に、12体いたアンドロイドのうち、実に2体が自殺してしまったのである。人間の子供たちの、無邪気にも残酷ないじめにより、精神崩壊を来してしまったのだ。
 そして、その日も無邪気な人間の子供たちの手によって、悲惨な事件がおきようとしていた。

 5年2組、アンドロイド少女・レイラ=リードが所属する3班は今日は掃除当番であった。彼女はしっかりそれを理解していたし、覚えていた。しかし同じ3班に所属するほか5名の児童男女は掃除などせずさっさと下校しようとした。実は昨日も同じようにこの5人はさっさと下校してしまったため、レイラが一人で教室の掃除をしたのだったが、その日は彼らが帰ってしまう前にレイラがそれを制止し、いっしょに掃除をするようにと彼らに指示をした。
「何だよ、ロボットの癖に、俺たちに指示するなよ」
 同じ3班のシュドー=マクリーがそう突き放すと、ほかの4人も彼と同じように冷たい視線でレイラを睨み付けた。
 レイラはひるまなかった。なぜなら親代わりの、「天性の科学者たち」が彼女に、誠意を持って立ち向かえば、きっと心は通じる、人間とはそういう生き物だと、教えられてきたからだ。そして彼女は、大好きな親代わりたちのそんな言葉を心の底から信じていた。
 だからレイラが説得を続けた結果、5人がしぶしぶ掃除用具を取り出し始めたのを見て、レイラは心から感激した。しかし、5人が掃除用具を取り出したのは、まじめに教室を掃除するためではなかった。
「どうでもいいけどさぁ〜」
 自在ほうきを取り出してボブ=ボーズが、レイラに近づきながら叫ぶように言い出した。
「雑巾が一人分、足りないんだよねっ」
 ゴッ!!!
 言いながら彼は、手に持った自在ほうきで、思いっきりレイラの頭を殴りつけた。レイラは前のめりにものすごい勢いで倒された。額から緑色の組織液を滴らせている。
「あ〜あ、床汚しちゃった」
 ミキ=カリーとヨーコ=カワシマが声を合わせてそう叫んだ。彼女たちがそう叫んだことでクラス内のまだ残っている児童たちの間で少しざわつきが起こったが、ほとんどの児童たちが見て見ぬふりをして教室から去ろうとしていた。人間の子供たちはもちろん、アンドロイドたちでさえ、巻き込まれるのを恐れて介在しようとはしなかったのだ。
「ま、これから掃除するからいいんだけどね〜」
 今度は雑巾を持ったダニエル=キムソンが、「どけよっ」とレイラを蹴り上げてから、おもむろに床にこぼれた組織液をふき取り始めた。
 レイラは頭を殴られたことで軽い脳震盪を起こしていた。彼らぐらい精密なアンドロイドにもなるとやはり衝撃にもめっぽう弱くなる。頭を強打すれば人間と同じように脳震盪を起こすこともあるのだ。しかしやっと体が動くようになり、少しうめきながら立ち上がろうとした。
「雑巾足りないんだろ、レイラを雑巾にしようぜ」
 そういったのはやる気なさげに雑巾を足で踏んで床を拭いていたシュドーだった。
「そりゃあいいや」
 バケツの水で組織液が染み付いた雑巾を絞っていたダニエルがそう叫ぶと、雑巾をバケツに落として替わりにレイラの髪をつかんだ。
「イタタタタタッ、何するの、ダニエル君!」
 レイラは叫ぶと、ダニエルは容赦なくつかんだ手を思いっきり力任せに引っ張った。レイラの体は倒れこんだ体勢のままずるずると引きずられ、床の汚れや埃を拭い去った。
「イタッイヤアァァッ!!やめてよぉっ!!」
 レイラの懇願もむなしく、ダニエルはそのまま教室中をあっちこっちと、レイラを引きずりまわした。そして、引きずり回せば引きずり回すほど、レイラのフードつきのワンピースが、面白いくらいに床の汚れをきれいに拭い取っていった。
「こいつ、モップにならねーかなぁ」
 そう言うと自在ほうきを持っていたボブは、今度はほうきのブラシを思いっきりレイラの横っ腹に突きつけた。
 ドムッ!!
「グフッ!!!」
 そのまま押し込むようにしてレイラを引きずろうとしたが、今度はなかなかうまく前に押し出すことが出来なかった。
「結構難しいなぁ」ボブが言うと、
「やっぱり引っ張ったほうが扱いやすいよ」とダニエルが言い放った。
「ほうきの使い方が違うのよ」
 もう一本のほうきを持っていたヨーコが口をはさんだ。彼女はほうきのブラシがついていないほうをレイラの股間に突き出し、
「ここに差し込んで使うのよ」
と、小学生にしては厭に艶っぽい口調で言い放った。
「おお、なるほど!!」
 シュドーとボブが声を合わせて感心した。
 教室中を引きずりまわされ、もはやレイラは抵抗する気力を失っていた。力ない声で「ィャ、、、」と嘆くだけであった。
 ミキがレイラのワンピースの下のパンティーに手を伸ばし、そして一気にそれを引きずり下ろした。シュドーは抵抗しないようにレイラの頭を抑え、ボブとダニエルはレイラの両足を無理やり広げた。そしてヨーコは、用意されたレイラの生殖器に、自在ほうきの柄の先端を、ゆっくりと挿し込んだ。
 断末魔の絶叫が上がり、床には組織液が水たまりのように滴り落ちた。

 それから約2週間後、アンドロイドの数はついに残り9体となってしまった。