2000年1月6日(木曜日)


 私が物を作ろうとするとき、どういうわけか、どこかにアブノーマルな面白さを追求しようとする癖があります。決してよい癖であるとはいえません。
 しかし、人間が作る作品が金で売買されるようになって、その作品に自分なりの面白さを追及する姿勢を持つ作家が、その姿勢を崩されてしまっているのか、あるいは創作活動をビジネスと勘違いしてしまっているのか、一般受けを狙うことに無駄な力を注ぎ、定石に身をゆだね、無難な作品ばかりを作りつづける現状には、見るに耐えないものがあります。ハリウッド映画とかね。
 私がネットワークに期待を抱くのは、そのような現状の中で、完全に趣味で物を作り、その物を作るためにたくさんの金や時間を費やしてしまっているような人たちが、無欲のままに自分の作った作品、絵や、文章や、音楽を、金もとらずに誇らしげに公開することによって、個性がどうこうとかいちいち強調するまでもなく自由奔放で強力な作品が世の中を駆け巡り、民衆が作品の購入にお金をかけるのがばかばかしくなるような、そんな時代に変わっていったら良いなぁなんて思うからなのです。

 ところで話は変わりますが、年末ぎりぎりになって突然エリツィンさんが大統領辞めるなんて言い出すものだから、私ゃてっきりロシアはY2k対策が間に合わなくて責任逃れのために駄々こね始めたものかと思いましたよ。ミサイルの1発ぐらいは期待していたのになぁ〜(^_^;)


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 合格の条件

ジャンル:フィクション
危険度:大
(このお話はフィクションであり
実際の番組および団体等
とは一切関係ありません)

 正月だというのに青年はやはり机に向かって必死に勉強をしていた。受験生に正月はいらない。青年は本気でそう思っている。青年は2浪目の大学受験を控え、最終調整に余念がない。
 しかしそんな青年だってやはり人間である。あまり何時間も集中して机に向かえばやはり疲れるのである。ふと時計を見上げてみれば夕食にもちょうど良い時間になっていた。青年はカップラーメンを食すべくやかんに火をかけ、テレビの電源をつけた。
 正月のゴールデンタイムといえばどのチャンネルも恒例行事のように特別番組を放映している。たまたまかかったその番組はその中でも特に象徴的な、素人が仮装という名の出し物をして審査員を喜ばせるというものだった。
 ポットの湯が沸騰するのを待ちながら、青年は何とはなしにその番組で流れる光景を眺めていた。

「それでは次行ってみましょーう、14番、レコード」
 幕が開いて出てきたのは、巨大なレコードプレーヤーの作り物だった。遠目で映されて驚いたのはそのハリボテの出来の良さだ。目が回りそうになるくらい溝が丁寧に掘られていて、なかなかよく出来ている。
 しかし、内容自体は大したことはなかった。ただ、そのレコード盤がくるくる回転し、音楽はテープで流され、そして針が少しずつ、と入ってもその回転数からしてみればいささか尋常じゃないくらいに早く中央へ移動していき、それだけで終わり、という内容だった。
 20点満点中15点以上であれば合格なのであるが、この出し物は9点という点数で鐘が鳴った。

 出し物が終わるとハリボテの裏側が映され、そこからひとりの男性が息を切らして出てきた。ハリボテはなかなか面白い造りになっていて、表の円盤の中心につながる木の軸棒を両手でつかみ、男が円形に組まれている足場を体操選手かハムスターのような要領で回転すると表の円盤もいっしょにくるくる回るという仕組みである。
「あー、こりゃー大変だよぉー、しんどいもんねぇー」
 司会者が大手を振るって大げさに叫んで見せる。すると審査員の一人が感心したのか、手元のスイッチを押して1点を追加した。
「あの円盤よくできてるねぇ、あれあんたが作ったの?」
「ええ、溝は確か、全部で7,609回転あります」
「ええっ!? それいちいち数えながらやったの?」
 会場内で少しだけ笑いが起こった。そしてそれとは対照的に、また審査員の一人がスイッチを押した。これで11点。
「そういえばお父さん一人じゃないんだよね」
 司会者がそう言うと、後ろで作業していた係員がやっとのことでレコード針の中にいた幼児を引っ張り出した。また少し会場内がざわつき、そしてまた1点が追加されるブザーの音が鳴り響いた。
「ぼく、いくちゅですかぁ〜?」
 司会者が鏡越しになってその幼児の口元にマイクを向けた。その男の子は特に意味もなく顔一面を黒く塗りたくっていて、それだけに無邪気に見せる笑顔が余計かわいらしく映えて見えた。
 その子は指を3本立てて見せて、
「さん、しゃい、、です!」
と、元気よく言い放った。会場内を黄色いざわつきが走り、そして一気に2点が加えられるブザーの音が鳴り響いた。これで14点、ぎりぎりでまだ合格には至らない。
「そうするとあなたがお父さんということになるんですか?」
 司会者はのけ者にされている男性に話を振った。
「はい、そうです。」
「それじゃあ、お母さんは会場に応援しにきてくれているのかなぁ?」
 そう言って司会者は、今度はまた幼児の方にマイクを向けた。
 幼児は顔をしょんぼりさせ、うつむいたまま口を開かない。
 父親の方が変わりに口を開き、察して司会者がその男のほうにマイクを向け直した。
「妻は、きっと天国で応援してくださっていると思います。」
 今度は会場全体を沈黙が走った。
「え、あ、そうなんだ、、なんだか悪いこと聞いちゃったな」
 彼特有の憎めない口調で、司会者は本当に申し訳なさそうにそう言った。
 すると今度は子供の方が司会者のズボンをつかんで引っ張り、しゃべりたい合図をした。司会者が子供の方にマイクを向けると、子供は涙目で話し始めた。
「ママね、レコード、とっても、、…」
「えっ?」
 最後のひとことがうまく聞き取れなくて、司会者はもう一度聞き返した。
「ママね、グス、レコード、とっても、好きなの」
「妻が病床に伏していたときに」
 突然父親の方が話に割り込んできたので、司会者が慌ててそちらの方にマイクを向けた。男も涙目になっている。
「妻が元気になるようにと思って考えたんです。でも、妻は助かりませんでした、、、」
 会場全体がしんみりとした空気で充満してしまった。
 そして、、、こういう話にはめっぽう弱い審査員の皆さん。いっせいに残りのスイッチが押下され、得点は一気に20点満点になってしまった。
「やったよぉ〜、満点だよぉ〜!」
 司会者が一番喜んでいる声を張り上げた。幼児は何がなんだかよくわからずに両手をあげて笑って喜び、父親も涙目のままながら、しかしにんまりと笑顔を見せた。

 ケトルのやかんがいささかもの寂しげに警笛を鳴らし始めたので、青年は腰を上げてガスの火を止め、用意していたカップめんにお湯を注いだ。
「努力だけでも十分報われる世界もあるんだなぁ」
 青年は皮肉ではなく本気でそう思った。
 湯を注いだカップめんのふたをし、上に液状スープの元とタイマー代わりの腕時計を乗せた。
「俺も結婚して子供を作ろうかなぁ」
 ふたの隙間からわずかに立ち上る湯気を眺めながら、青年は相変わらず結構真剣にそんなことを考えた。
「で、適当なときに奥さん殺して」
 空白の時間は実にゆったりと流れていた。時計の針の音が、その時間の流れを細切れにしっかりと刻んでいた。
「……それで受験がクリアーできれば、苦労はないんだけどねぇ。」
 腕時計のタイマーが、ひとりぼっちの、静かな部屋に鳴り響いた。


 年賀状(Y2Kバージョン)

ジャンル:GIFアニメ
危険度:小

 記念すべき西暦2000年を飾るむらち的年賀状である。
 しかとその目を見開き見届けたまへぃっ!!(←無礼)

90.9KB(^o^;)

(使用ツール:乙女座16色、Yamana's乙女座plag in、ペイントブラシ、D-Pixed)