99年11月11日(木曜日)


 さて、実に5ヶ月ぶりとなってしまいましたこのコーナー。皆様いかがお過ごしでしょうか。
 ページの更新を再開するよ、と言い出した途端に私のほうも突然進路が決まってしまいまして、内心ほっとしたというか、気が抜けたというか(^_^;)。それもこれもいろんな方々が私なんかを支えてくださったおかげであります。

 月並な挨拶もこの辺にして(笑)、実はこれを執筆しているのは更新前日だったりします。相変わらずぎりぎりプリンですが(あの漫画は結構好きなんだけどね^_^;)、これからもまぁ末永くお付き合いくださいませ。もちろん私のほうが末永く続けられるのか疑問ではあるのですが(笑)。


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 ピアニカ

ジャンル:フィクション
危険度:小

 2学期が始まって一月もすると、体育の時間も学活の時間も、更には道徳の時間でさえ、運動会のために費やされ始める。まだ夏の余韻でじりじりと暑くてさらには乾燥して砂埃の舞うグランドで、厳しい先生の怒鳴り声のもと、僕らはうざったい入場行進の練習を何度もやらされる。
 5年生の僕らは見世物的な種目が2つ用意されている。ひとつは6年生の男子と合同でやる組体操、もうひとつは5年生全体でやるパレードだ。
 組体操はそれなりに面白いけれど、はっきり言って厭だった。僕は決して背は高くない、むしろかなり背は低い方なんだけど、太っていて、結構体重が重いという理由で、15人組のピラミッドは下から2段目の端っこにされた。これが結構微妙な位置で、下は人の背中で足場が悪いのに、上には3段分の体重がのしかかってくる。安定しないし、重いしで、一番神経のいるポジションなんじゃないかと思う。
 それに引き換え、パレードの練習は楽しかった。

 そのパレードはちょっとフシギなもので、楽器編成は大太鼓、小太鼓、メロタム(トリオ、と呼ばれるやつ)、シンバル、ベルリラ。ここまでは月並な打楽器の編成なんだけど、それに加えて、縦笛(小学生だから、ソプラノリコーダー)、ピアニカ、アコーディオンが加わった。特に、縦笛はとにかくとして、ピアニカやアコーディオンに割り当てられる人数がかなり多かった。
 それだけこの小学校には、なぜかピアニカやアコーディオンといった楽器をたくさん保有していたということだ。アコーディオンという楽器がとても高価な楽器であったことを知ったのはだいぶ後のことだった。今考えれば、そんな楽器をあれだけたくさん保有し、しかもそれをこういう機会に児童に自由に使わせていたというのはなかなか面白い試みであったと思う。しかも児童たちは今自分たちが使っている楽器がそれほど高価なものであることなどまったく知らされずに、まるで当たり前のことであるように休み時間にそれをもちだしては、パレードのために渡された楽譜を一生懸命に練習した。
 僕はアコーディオンではなくて、ピアニカを担当することになった。アコーディオンも面白そうだとは思ったけれど、あのでかい楽器を持ち歩いて、しかもあの重いふいごを腕でこぎながら演奏ししかも更新するのは結構大変そうに思ったからだ。そして何より僕は男子では珍しくピアノを習っていたから、鍵盤ものには自信があった。

 音楽の長谷川優美子先生は、今年新任で入ってきたとても綺麗な女性の先生だった。僕たち子供の目にも、先生はとても素敵な人に映った。そして何より、女神様のようにやさしかった。
 その日の音楽は音楽室で、パレードでやる曲の合奏をした。どこのクラスも均等に楽器編成が割り当てられていたから、一クラス分だけでもちゃんと合奏ができたのだ。まだ楽譜を渡されてから日が浅い僕たちはそれはそれはたどたどしい演奏しかできなかったけれど、それでも優美子先生は、「とりあえず最後まであわせて見ましょう」と励まし、そして最後には「みんなよく最後まで止まらずに演奏できましたね」と誉めてくれた。そして、「今日できなかったところは明日できるように、明日できなかったところは明後日出来るように。みんながんばって練習しましょう」と温かい笑顔でみんなを励ましてくれるのだ。
 時間がまだ余っていたので残りの時間は個人練習になった。僕はピアノをやっていたからパレードでやるくらいの譜面は大体この頃には覚えてしまったし指も動いていたけれど、それでも一箇所どうしてもうまくいかないところがあった。それは同じ和音を裏拍で何度もスタッカートさせるところで、息を吹き込みながら手を動かすタイミングがうまくいかなくてどうしても遅れ気味になってしまうのだ。
 そこで、先生ならいいアドバイスをくれるかもしれない、と思った僕は、先生のところに寄っていって、どうやればいいのか聞いてみた。
「タンギングをすればいいのよ。」
 優美子先生は優しくそう教えてくれた。
「たんぎんぐ?」
「そう。縦笛を最初に習ったときにも教わったでしょう?」
「それはわかるけど、、、タンギングと鍵盤を押すのがうまく合わなくて。」
 先生は、ああ、なるほど、というような顔をして見せて、それから、ちょっとピアニカ、貸してくれる? と手を差し出した。僕はその、白く透き通る綺麗な指に見とれながら、素直にピアニカを差し出した。
「いい? よーく見ていてね。」
 そういうと先生は、譜面にある和音のとおりにあらかじめ指をあてがって、そしておもむろにリードを口にくわえた。
 僕はその瞬間、胸がドキッとした。そのピアニカは、僕がさっきまでたくさん吹いていたピアニカだよ。先生言ってるじゃないか、他の人も吹くんだから、終わったらちゃんと掃除して、中に入った唾を抜き取ってから片付けなさいって。なのに先生、平気なの?
 先生は鍵盤に指をあてがったまま、上手にタンギングで息を吹き込んで見せた。そして、僕の方を見た。
「どう? わかった?」
 僕はちょっとボーっとしていて、でもすぐに、え、あ、ハイッ、と返事をした。
「ピアニカはピアノよりも、むしろ笛に近い楽器だと思った方がいいのよ。ピアノと違って鍵盤を押しっぱなしでも、息さえ吹き込まなければ音は出ないでしょ。」
 そういって先生は、ピアニカを僕に差し出した。
「あ、そ、そうか、そうですよね。はは。先生ありがとうっ!」
 すっかり赤面してしまって、僕はそういうと逃げるように席に戻っていった。優美子先生は、少し不思議そうな顔をしていた。
 僕は顔を真っ赤にさせたまま、どうにも落ち着かなくて、席につくとすぐにピアニカのリードを口にくわえた。くわえてみてからまたハッとして、胸がドキッとした。
 リードが少し温かかったのだ。あるいはそう感じてしまっただけかもしれない。このぬくもりは、先生のぬくもり。先生と、間接キス。
 そう思った途端、僕はリードをくわえていた口を離した。なんだかこのリードをくわえるということが、とても冒してはならない罪なことのように思えたのだ。かといって、このリードをハンカチでぬぐってしまうのは、あまりにももったいないというか、いとおしいような気がした。そう思っていたら、チャイムが鳴った。

 音楽の授業の後、トイレでちゃかしてくるやつがいた。佐々木浩二だ。
「俺、見てたぞ。おまえ、ハセセンと間接キスしてただろ。」
 ハセセンっていうのは長谷川先生の略で、つまりは優美子先生のことだ。
 僕はそういわれて、普段ならムキになって何か言い返すところなんだけれど、なんだか悪い気がしなくて、むしろ照れくさくて少しにやついてしまった。佐々木はそんな僕の反応に嫌気がさしたのか、少しむっとして僕に聞いた。
「おまえ、ハセセンのこと好きなのか?」
 僕はすぐに「違うよ!」と言い返しそうになったが、思いとどまってやめた。あえて否定はしないことにした。実際優美子先生のことを気に入ってしまっている男子は多くて、つまり優美子先生は当時この学校の児童たちのアイドル的存在になっていたのだ。
 佐々木はますます気に入らないらしくて、ふてくされたように言った。
「なんだよ。ちんげも生えてないくせに。」
 僕は、え?、と反応した。
「おまえ、もう生えてるの?」
「オウ、生えてきたぜ。」
 何ということだ。僕は思った。確かに佐々木の方がガタイがでかくて成長が早い。しかし小学5年にして大人への証、ちんげが既に生え始めているとは思いもしなかった。当然僕にはまだ生えていなかった。
「ちょ、ちょっとみせてみろよ。」
 そういって僕は、隣の小便器で尿を放っている佐々木のイチモツを覗き込もうとした。が、佐々木は妙に恥ずかしがって小便器の縁に体をねじ込ませ、僕に見せようとはしなかった。僕はこの一件で、初めて男として、焦りを感じるようになった。


 携帯電話

ジャンル:CG
危険度:中

 人間たちが携帯電話によって束縛されるの図。転載自由。著作権放棄。

人間がいっぱい(x_x) 38KB

(使用ツール:ARTemis, TownsPaint/Lite, ICV, GMASK, ViX win版)