99年3月9日(火曜日)


 さて突然ですが問題です。
 私の受信トレイには現在100通あまりの未読メールがたまっています。そしてそのうちの半分以上が、あることに関わる類のメールであったりします。さて、その「あること」とはいったい、何でしょうか。

  1. 就職活動
  2. 就職活動
  3. 就職活動

 すみません。そろそろ、真面目に始めようと思います<m(_ _;)m>

 とりあえずこれがでる前日の日(3/8)に幕張メッセで行われたはずの会社合同説明会(理系向け)に参加してみる予定です。あと会社説明会の申し込みもぼちぼち始めようと思います。
 そんなわけで、今まで以上に暇な時間が少なくなります。
 先週のように、突然更新をポシャってしまう可能性も高くなります。

 、、、見捨てないでね(;_;)/


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 キメラ

ジャンル:SF
危険度:

「ほらよ、こいつがマムシの薫製だ。勢力つくぜぇ」
 そういうと庸平おじさんは、僕にお目当ての品物をよこしてくれた。それは頭の部分に鎌で叩かれた傷跡がある以外は全身まったく無傷のかなり立派なもので、素手で受け取るのをちょっとためらったけど、これでやっとすべてそろったと思えば全然恐いとかそういう気持ちにはならなかった。
「しかしこんなもん、いったい何に使うつもりなんだ?」
 庸平おじさんは聞いてきたけど、僕はお礼だけ言って、何も答えずに走って家に帰った。あんまり答えたくないから、というのもあったけど、とにかく早くやることをやってしまいたかったからだ。

 部屋にはいると僕はすぐさま、押入に隠してある食肉保存ケースのキーを開けた。去年の正月のお年玉を全部つぎ込んで買ったものだ。特殊な放射線を充満させて有機物が酸素と結びつくのを防ぐとか何とか、、、何だかよく分からないけどとにかく電力をほとんど使わずに常温のまま食料を長期間保存できるすげーやつだ。もっとも冷やして食べる料理って多いから未だに冷蔵庫の需要は高いんだけど、ひからびないから最近はこれもかなり人気が高くて、おかげで小さいものなら最近は僕のお年玉程度でも買えるようになったんだ。
 ケースの中にはすでに、猫と犬の死体の一部と、マトンの生肉が入っている。とりあえずケースをひっくり返して全部出し、押入のさらに奥にある道具をいくつか引っぱり出した。
 へっへっへ。これが今僕たちの間で超流行りなんだよね。その名も「キメラ・メーカー」。
 そのマシンは動物の肉の細胞からその動物の遺伝子情報を読みとる「DNAローダー」、読みとった遺伝子情報を分析・データ化し、複数の遺伝子情報を記憶してそれらを編集することの出来る「DNAエディター」、そして編集した遺伝子情報に乗っ取って新しい種の固体を生成する「ニューエージプロデューサー」の3つの部分からなっている。キメラって言うのはここでは要するに「合成怪物」のことで、つまりいくつかの動物の遺伝子情報を合成して新しい種の怪物を作ってしまう、とんでもなくマッドなおもちゃなのだ!
 もっとも、でてくる怪物は手のひらサイズのミニチュアだけどね。
 で、なんでこれが流行っているのかって言うと、こいつが作った主に忠実なかわいい奴で、モンスター同士で戦わせるのがものすごく流行っている遊びなのだ。なんてったってテレビゲームでやる対戦なんかよりよっぽどリアルだし、絶対に勝てる必勝法とかもないからね。

 で、僕が今作ろうとしているのは、ギリシャ神話にでてくる本物のキメラに近いものだ。それはライオンの頭、山羊の胴体、蛇の尻尾、オオカミの前足を組み合わせたものだ。やっぱり「キメラ・メーカー」って言うくらいだから、一度は本物のキメラを作ってみないとね。もっともライオンやオオカミの肉を仕入れるのはちょっと無理だから、ライオンの代わりにドラ猫、オオカミの代わりにシベリアン・ハスキーを使ってはいるけど。

 さて、早速材料を機械のカプセルに入れて遺伝子情報を読みとってみた。遺伝子情報1つを読みとるのにかかる時間は10分。結構根気のいる作業だ。犬・猫の時はまったく問題はなかった。マトンは読みとってみてから初めて、実は山羊じゃなくて羊だったということに気がついたが(笑)、まぁ似たようなものかと言うことで良しとした。蛇は固く薫製にされていたのでカプセルに入れられるサイズに切り取るのが一苦労で、しかも生じゃないので読みとりにものすごく時間がかかった。そして結局そこまでの作業に1時間半を費やした。
 次に4つのデータをモニターし、成長した状態の個体のモデル画像を出してみた。そして試しに、猫の頭部と羊の胴体とハスキーの前足を合成させてみた。うん。なかなか異様な格好だ。こいつは思ったよりかっこわるい。
 そこで、足をもっと太くし、顔の毛をもっと長くさせてみる。うん。少しは凶暴そうになったかな。
 そして極めつけ、マムシの頭から半分くらいを、尻尾としてくっつける。これでらしくなるかと期待したが、思わぬエラーメッセージ。「自我中枢神経を2カ所以上配置することは出来ません」だとさ。もちろん蛇の脳味噌を放棄し、代わりに感覚神経・運動神経の末端を少し多めに集中させた。これで尻尾による攻撃がかなり有効になる。いや、このままじゃあ尻尾にも消化器官が残っちゃうな、、、よし、蛇の尻尾の口はダミーにして、毒牙だけを残そう。
 さて、いよいよ形になってきたので、あとは詳細の設定だ。まず今回はほ乳類とは虫類の混合種だからそこら辺をはっきりさせないといけない。もちろんほ乳類だ。蛇のパーツは尻尾の部分だけだからね。それから生活サイクルは、と、基本的には夜行性、熟睡はせず、昼間も空腹時は活動、と。あーでも羊のパーツに無理は掛けられないしなぁー。でもまぁいいやこれでいこう。それから食は肉食ですねー。ただし虫は食えない、と。あとはまぁいいか、特に設定すべきはないかな。寿命は一律2年間って決まっているし。
 よし。これでデータは完成っと。ふぅ、編集作業に3時間もかかってしまった。もうお日様も沈む頃だね。今からやって、、、明日の朝までには何とか出来るか。よし。「個体出力」のスイッチを、ポチっとな!

 、、、つづく。