99年1月12日(火曜日)児童ポルノ特別号


 前回のトピック「日本の18禁」の中で、少しだけ児童ポルノに関する新法案のことに触れましたが、先日とあるホームページでこの法案の原文を見つけてきました。それについて思うところが結構あったので、今回はそれの特集を組むことにしました。


日付け別indexに戻る

最初のページに戻る

まるのみに戻る


このページはこれまで件のアクセスがありました。
当ページの主旨を理解し、リンクを貼って下さった各ホームページの制作者様、
及び閲覧して下さったみなさまに心より感謝いたします。<m(_ _)m>


なお、今回のトピックに関するみなさまの感想・ご意見を募集いたします(〆切無し!)。
掲示板(カキコでポン☆INT 21!)でもかまいませんが、長文の場合は必ずメールにてお願いいたします。


(まずは、その原文をお読み下さい。)

児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律案

児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律案

 (目的)
第一条 この法律は、児童に対する性的搾取及び性的虐待が児童の権利及び利益を著しく侵害することの重大性にかんがみ、児童買春、児童ポルノに係る行為等を処罰するとともに、これらの行為等により心身に有害な影響を受けた児童の保護のための措置等を定め、もって児童の心身の健やかな成長を期し、あわせて児童の権利の擁護に資することを目的とする。

 (定義)
第二条 この法律において「児童」とは、十八歳に満たない者をいう。
2 この法律において「児童買春」とは、次の各号に掲げる者に対し、対償を供与し、又はその供与の約束をして、当該児童に対し、性交等(性交若しくは性交類似行為をし、又は自己の性的好奇心を満たす目的で、性器、肛門若しくは乳首に接触することをいう。以下同じ。)をすることをいう。
 一 児童
 二 児童に対する性交等の周旋をした者
 三 児童の保護者(親権を行う者、後見人その他の者で、児童を現に監護する者をいう。以下同じ。)又は児童をその支配下に置いている者
3 この法律において「児童ポルノ」とは、写真、絵、ビデオテープその他の物であって、次の各号のいずれかに該当するものをいう。
 一 性交等に係る児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写したもの
 二 衣服の全部又は一部を脱いだ児童の姿態であって性的好奇心をそそるものを視覚により認識することができる方法により描写したもの
 三 専ら児童の性器又は肛門を視覚により認識することができる方法により描写したもの(専ら医学その他の学術研究の用に供するものを除く。)

 (児童買春)
第三条 児童買春をした者は、五年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。

 (児童買春周旋)
第四条 児童買春の周旋をした者は、三年以下の懲役又は三百万円以下の罰金に処する。
2 児童買春の周旋をすることを業とした者は、五年以下の懲役及び五百万円以下の罰金に処する。

 (児童買春勧誘)
第五条 児童買春の周旋をする目的で、人に児童買春をするように勧誘した者は、三年以下の懲役又は三百万円以下の罰金に処する。
2 前項の目的で、人に児童買春をするように勧誘することを業とした者は、五年以下の懲役及び五百万円以下の罰金に処する。

 (児童ポルノ頒布等)
第六条 児童ポルノを頒布し、販売し、業として貸与し、若しくは公然と陳列し、又はこれらの目的で製造し、所持し、運搬し、輸入し、若しくは輸出したものは、三年以下の懲役又は三百万円以下の罰金に処する。
2 児童ポルノの頒布、販売、業としての貸与、又は公然陳列に係る広告をした者も、前項と同様とする。

 (児童買春等目的人身売買等)
第七条 児童を児童買春における性交等の相手方とさせ又は第二条第三項第一号若しくは第二号の児童の姿態若しくは児童の性器若しくは肛門を描写して児童ポルノを製造する目的で、当該児童を売買した者は、二年以上の有期懲役に処する。
2 前項の目的で、外国に居住する児童をその居住国外に移送した日本国民も、同項と同様とする。
3 前二項の罪の未遂は、罰する。

 (児童ポルノの所持の禁止)
第八条 何人も、自己の性的好奇心を満たす目的で、児童ポルノを所持してはならない。

 (児童の年齢の知情)
第九条 児童を使用する者は、児童の年齢を知らないことを理由として、第三条から第七条までの規定による処罰を免れることができない。ただし、過失がないときは、この限りでない。

 (国民の国外犯)
第十条 第三条から第六条までの罪並びに第七条第一項及び第三項(第一項に係る部分に限る。)の罪は、刑法(明治四十年法律第四十五号)第三条の例に従う。

 (両罰規定)
第十一条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業員が、その法人又は人の業務に関し、第四条から第六条までの罪を犯したときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対して、各本条の罰金刑を科する。

 (捜査及び公判における配慮等)
第十二条 第三条から第七条までの罪に係る事件の捜査及び公判に職務上関係のある者(次項において「職務関係者」という。)は、その職務を行うに当たり、児童の人権及び特性に配慮するとともに、その名誉及び尊厳を害しないよう注意しなければならない。
2 国及び地方公共団体は、職務関係者に対し、児童の人権、特性等に関する理解を深めるための訓練及び啓発を行うよう努めるものとする。

 (記事等の掲載等の禁止)
第十三条 第三条から第七条までの罪に係る事件に係る児童については、その氏名、年齢、職業、住居、容ぼうその他当該児童が当該事件に係る者であることを推知することができるような事項を、新聞紙その他の出版物に掲載し、若しくは放送し、又はみだりにその情報を他に提供してはならない。

 (児童の権利に関する教育及び啓発)
第十四条 国及び地方公共団体は、児童買春、児童ポルノの頒布等の行為が児童の心身の成長に重大な影響を与えるものであることにかんがみ、これらの行為を未然に防止し、児童が年齢等に応じ健やかに成長することができるよう、児童の権利に関する国民の理解を深めるための教育及び啓発に努めなければならないものとする。

 (心身に有害な影響を受けた児童の保護)
第十五条 関係行政機関は、児童買春の相手方となり、又は児童ポルノに描写されたこと等により心身に有害な影響を受けた児童に対し、相互に連携を図りつつ、その心身の状況、その置かれている環境等に応じ、当該児童がその受けた影響から身体的及び心理的に回復し、個人の尊厳を保って成長することができるよう、相談、指導、一時保護、施設への入所その他の必要な保護のための措置を適切に講ずるものとする。
2 関係行政機関は、前項の措置を講ずる場合において、同項の児童の保護のため必要があると認めるときは、その保護者に対し、相談、指導その他の措置を講ずるものとする。

 (心身に有害な影響を受けた児童の保護のための体制の整備)
第十六条 国及び地方公共団体は、児童買春の相手方となり、又は児童ポルノに描写されたこと等により心身に有害な影響を受けた児童について専門的知識に基づく保護を適切に行うことができるよう、これらの児童の保護に関する調査研究を推進し、これらの児童の保護を行う者の資質の向上を図るとともに、これらの児童が緊急に保護を必要とする場合における関係機関の連携協力体制の強化を図る等必要な体制の整備に努めるものとする。

 (国際協力の推進)
第十七条 国は、第三条から第七条までの罪に係る行為の防止及び捜査に関し、国際的な連携の確保及び調査研究の推進その他の国際協力の推進に努めるものとする。

   附 則

 (施行期日)
第一条 この法律は、公布の日から起算して六月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。ただし、附則第三条(風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(昭和二十三年法律第百二十二号)第三十一条の五及び第三十一条の六第二項第二号の改正規定に限る。)の規定は、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律の一部を改正する法律(平成十年法律第五十五号)又はこの法律の施行の日のうちいずれか遅い日から施行する。

 (条例との関係)
第二条 地方公共団体の条例の規定で、この法律で規制する行為を処罰する旨を定めているものの当該行為に係る部分については、この法律の施行と同時に、その効力を失うものとする。
2 前項の規定により条例の規定がその効力を失う場合において、当該地方公共団体が条例で別段の定めをしないときは、その失効前にした違反行為の処罰については、その失効後も、なお従前の例による。

 (風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律の一部改正)
第三条 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律の一部を次のように改正する。
  第四条第一項第二号中「第二章に規定する罪」の下に「、児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律(平成十年法律第  号)に規定する罪」を加える。
  第三十条第一項、第三十一条の五及び第三十一条の六第二項第二号中「若しくは売春防止法第二章に規定する罪」を「、売春防止法第二章に規定する罪若しくは児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律に規定する罪」に改める。
  第三十五条中「又は第百七十五条の罪」を「若しくは第百七十五条の罪又は児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律第六条の罪」に改める。

 (暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律の一部改正)
第四条 暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(平成三年法律第七十七号)の一部を次のように改正する。
  別表第三十一号の次に次の一号を加える。
  三十一の二 児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律(平成十年法律第   号)に規定する罪

 (検討)
第五条 この法律の施行後三年を目途として、この法律の実施状況等を勘案し、必要があると認められるときは、これについて検討が加えられ、その結果に基づいて必要な措置が講ぜられるものとする。
 【注 これは法案作成議員の発言から、3年後、第8条(児童ポルノの所持の禁止)に罰則を付加する改正法案を提出するための理由付けのためにあると考えられている。】


(部分的引用を交えながら解説します)

 まずどうでもいいのですが、全体的に文章があまりにも慎重すぎて、余計な文字が多すぎて読みにくい法案になっています。これはどの法律をとっても言えることではあるのですが、もうかつての古い言い回しはやめにして、もっと国民の末端までにもわかりやすい簡潔な文章でまとめてもらいたいものです。
 一番駄目な例はこの部分でしょうか。

 (記事等の掲載等の禁止)
第十三条 第三条から第七条までの罪に係る事件に係る児童については、...

 こんな言い回しをしなくとも、せっかく第二条において「児童売春」「児童ポルノ」などの言葉を定義しているのだから、「売春及びポルノ制作・販売等の事件に関わる児童については」などとしてもまったく問題ないはずなんですけどね。

 さて。
 ある法律、法案が、多くの国民に大した関心も持たれないまま支持を受け、一方で大いに関心を持ちながらなおそれに反対する国民がいる、ということはよくあることと思います。そういうことが起きてしまうのは、要するにその法律、法案が、いくつかの矛盾点をはらんでいるからだと、私は思うのです。そしてそういった場合のほとんどが、その矛盾点、疑問点が、大して改善もされないまま、なあなあに可決されていってしまいます。
 サッカーくじの時がもっともいい例で、自民党の田中眞紀子さん(字、あってるかしら^_^;)はこの法案の決が採られたあとの会見でこんなことをおっしゃっていました。

「何だかよくわかっていないまま賛成票を入れる年配の議員さんもいらっしゃって、私が『それなら棄権という選択肢もあるんですよ』と意見したら、『まぁ政党のみなさんが賛成といっておられるのなら間違いはないでしょう』といわれた...」

 大切なのは、一つ一つの法案に対してもっと多くの国民が、自分には関係なさそうなことでも関心を持ち、意見することだと思うのです。そしてそのためにはマスコミが、今政治家がどんなことを議題とし、何を決めようとしているのかを、もっと的確に報じていかなければいけません。最も多くの国民が関心を抱きそうなことについてのみ取り上げ、しかもあまつさえマスコミの理論を掲げて世論を操作しようとする。それが本来のマスコミのあり方なのでしょうか。

 話がだんだんそれていってしまいます。

 本題に戻りましょう。
 まず取り上げるべきは、今回取り上げた「児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律案」における矛盾点です。

 (目的)
第一条 この法律は、児童に対する性的搾取及び性的虐待が児童の権利及び利益を著しく侵害することの重大性にかんがみ、児童買春、児童ポルノに係る行為等を処罰するとともに、これらの行為等により心身に有害な影響を受けた児童の保護のための措置等を定め、もって児童の心身の健やかな成長を期し、あわせて児童の権利の擁護に資することを目的とする。

 この中で2回も「児童の権利」という言葉を使用していますが、実は日本の憲法、及び法律のどこにも「児童の権利」を定めたものなどありません。「児童の義務」(義務教育)や「年齢制限」(酒、たばこ、ポルノの閲覧など)を記した法ならいくらでもありますけどね。それとも「親権者の保護を受け、働く必要なく、直接税を支払う必要もなく、強制的に教育を受けられる」ことがここでいう「児童の権利」なのでしょうか(おっと、義務教育は15歳まで、ここでの「児童」の定義は「18歳未満」でしたね)。
 ここでの「児童の権利」という言葉は、そのまま「人権」という言葉に置き換えることができます。むしろその方が自然でしょう。それを敢えてそうしないのは、児童に人権があるとは素直に認めたくないというねらいでもあるからなのでしょうか?
 そうでなければ、「児童の権利」という言葉についても第二条の中でしっかり定義するべきです。

 (定義)
第二条 この法律において「児童」とは、十八歳に満たない者をいう。
2 この法律において「児童買春」とは、次の各号に掲げる者に対し、対償を供与し、又はその供与の約束をして、当該児童に対し、性交等(性交若しくは性交類似行為をし、又は自己の性的好奇心を満たす目的で、性器、肛門若しくは乳首に接触することをいう。以下同じ。)をすることをいう。
 一 児童
 二 児童に対する性交等の周旋をした者
 三 児童の保護者(親権を行う者、後見人その他の者で、児童を現に監護する者をいう。以下同じ。)又は児童をその支配下に置いている者
3 この法律において「児童ポルノ」とは、写真、絵、ビデオテープその他の物であって、次の各号のいずれかに該当するものをいう。
 一 性交等に係る児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写したもの
 二 衣服の全部又は一部を脱いだ児童の姿態であって性的好奇心をそそるものを視覚により認識することができる方法により描写したもの
 三 専ら児童の性器又は肛門を視覚により認識することができる方法により描写したもの(専ら医学その他の学術研究の用に供するものを除く。)

 「児童」の定義については問題はないでしょう。これまでポルノに対して18禁という年齢制限が設けられていたのも、18歳未満が「児童」であるから、という定義が日本の法律・条例の間であったからです。これを今になって曲げる必要はどこにもないでしょう。もっとも、別に敢えて「児童」という言葉を使う必要があるわけではないわけです。要するにこれまで18歳未満の国民に対してポルノの閲覧を禁止してきたように、18歳未満の国民が売春やポルノに使われることを禁止しようとしているのだから、これはまったく間違いはありません。
 児童売春も、金を渡す相手については何だかよくわかりませんが(書く必要あるのか?)、これといって問題はないでしょう。
 一番の問題は第3項、「児童ポルノ」の定義です。
 まず多くの人が口にしていることですが、これによって「絵も駄目」であることが明確にされていることが判ります。しかしこの法案の目的は、「児童に対する性的搾取及び性的虐待が児童の権利及び利益を著しく侵害することの重大性にかんがみ...」ということであり、「児童に対する性的妄想を道徳的見地から排斥する」ということではないはずです。
 「児童ポルノ」を法律で規制する目的は、あくまでその制作過程において児童が使われ事件となることを予防することにあるべきであり、道徳的見地と教育的配慮から表現を規制することではないはずです。
 そして、特にこの法案を制作した政治家たちの価値観を疑いたくなるのはこの一文です。

 三 専ら児童の性器又は肛門を視覚により認識することができる方法により描写したもの(専ら医学その他の学術研究の用に供するものを除く。)

 学術用途以外はすべて「ポルノ」である、ということなのでしょうか。
 ドキュメンタリー映画「シンドラーのリスト」では、全員裸にされて集団身体測定をする場面が描かれていますが、そのシーンにモザイクなどによる修正は加えられていませんでした。同じことを「児童」にしたらその映画は「児童ポルノ」になってしまうのでしょうか。
 もっといえばNHKの「お母さんと一緒」のお風呂のコーナーも「児童ポルノ」になってしまいます。CM製作会社も迂闊に子供をCMに使えなくなってしまうでしょう。
 ポルノとは正確にはpornographyといい、「好色文学、好色文学作品(エロ映画、エロ本)」の意味です。これは言葉の定義です。日本の政治家はこの言葉の意味を分かっていて法律を作っているのでしょうか? ポルノなのかそうでないのかを、女性の裸や性交の様が描かれているかどうかだけで判断しようとする、そんな価値観でこういった法律は作られるべきなのでしょうか? この価値観のあやふやさが、今のコンビニなどの子供の目が届く範囲に平然とポルノがおかれている現状を作ってしまっている、行政の体たらくを生んでしまっていることに、この人たちはいつになったら気がつくのでしょうか?

  第三十条第一項、第三十一条の五及び第三十一条の六第二項第二号中「若しくは売春防止法第二章に規定する罪」を「、売春防止法第二章に規定する罪若しくは児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律に規定する罪」に改める。

 これがもっともわかりやすいかと思いますが、そう、実は日本には「売春防止法」というものが存在します。つまり日本は根本的に「売春」や「売春斡旋業」を禁止しているのです。
 ここでまた一つ矛盾が生ずることになります。なぜ、もとより「売春」を禁止している国が、敢えて「児童売春」を禁止する法律を作る必要があるのか? これは児童売春に関わった犯罪者に「売春」と「児童売春」の2つの罪を被せて刑を重くすることが目的であるとは単純には考えられません。国民の「人権」は平等であるべきであり、それが児童であったから特別扱いされる必要はどこにもないはずです。それとも「児童売春」は「売春」ではないということなのでしょうか?

 この疑問点は何も売春に限ったことではありません。日本ではポルノに対しても多くの規制を敷いています。性器を描写・撮影したものは、掲載・放送時に修正を加えなければならないこと、文化的価値のある作品でなければならないこと、検閲を受け、有害図書であることが認められた場合はその旨を出版物に記載しなければならないことなどです。
 これは、日本ではポルノは基本的に「いけないもの」「良くないもの」であり、それを「嗜好品」として特別に制限付きで認めている、という節があることを示しています。
 しかしながら、今回の法案で、ポルノの中でも「児童ポルノ」についてのみは、「嗜好品」としては認められないことになります。
 先ほども書いたように、その理由が、児童ポルノを作る課程において児童が使われ、それによってその児童の心身に傷を与えてしまうことの重大性をかんがみ、ということであるならこれはまったく問題はないし、そして必要であるでしょう。しかし、この法案が目指す目的はそこにはなく、「児童ポルノ」を概念的に極悪の毒であるかのように定義し、それを排斥することが目的になっている感がします(つまり、「絵も駄目」ってやつですね)。
 恐ろしいのは、こういった思想的背景が、多くの大した関心のない国民の支持をあおってしまっていることにあります。「ポルノは良くないもの」という日本人の基本的倫理観が反対をさせにくくさせているのです。しかしそれなら、なぜ「ポルノ」ではなく「児童ポルノ」のみを禁止するのでしょうか?
 たとえば「児童ポルノ」が「児童の人権を著しく侵害する思想的影響を及ぼすもの」であるから禁止するということであるなら、「ポルノ」だって「女性の人権を著しく侵害する思想的影響を及ぼすもの」である可能性もその作品の趣旨によっては十分にあり得ることであり、人権の平等を憲法で謳う以上はこれも同時に禁止しなければならないはずです。

 矛盾点としてあげられるのは以上でしょう。
 そしてここまでで、今回のこの法案の焦点は売春にはほとんどなく、もっぱら児童ポルノの方にある、ということもおわかりいただけると思います。児童の権利の保護に関する記述も、おまけでとってつけたように感じられます。
 その最大の理由は、「児童売春」と「児童ポルノ」については記述があるのにも関わらず、「児童暴行」についてはまったく記述がないことです。「児童暴行」事件に関わる児童については同等の保護を行う必要はないということでしょうか? 今まで通りマスコミにその名や住所などを公開されてもかまわないというのでしょうか?


(私が感じた、この法案に対する感想)

 先週のトピックでも書こうかと思っていたことですが、これまでこのような、児童がポルノに使われることを明確に禁止する法律が存在しなかったことについて知ったのはつい最近のことです。18禁という概念があるのだから、当然のようにすでに法によって守られていることであると思っていました。そして、当然守られるべきでもあると思っていましたし、今でも私はそう思っています。
 ですから、今回のような法律が制定されるのは、正直な意見では「遅すぎた」、そして本来ならば「歓迎すべき」ことであると、私は思うのです。
 しかし、その草案を読んで私の気持ちはかなり傾いてしまいました。あまりにも矛盾点の多すぎる草案! そして相変わらず難解で複雑な文章!
 そして、このような法案ができたからといって、すぐにポルノ業界から児童の人権が守られるというわけではありません。裏業界から治安を守り、販売店でのポルノの扱いについて徹底指導し、そしてそういった監視の目をいつまでも忘れずに機能させる。そうした、行政の働きがない限り、この法案は糞の役にも立たないでしょう。
 私は政治というものは、「法は明確に、行政は的確に」が原則であると思います。今の日本の政治ははっきり言って、「法は複雑に、行政はテキトーに」になっているのではないでしょうか。口だけで「行政改革」などとでかいことをいって、結局やっていることは金をばらまいて人の首を切っているだけ。本当に大切なのは行政の経費改革ではなく、意識改革なのではないでしょうか。

 また、話がそれていってしまっています。

 今回の法案について感想を述べると、まず一つ目に、ちょっと「怖いな」ということがあげられます。
 というのは、この部分が妙に目に付くからです。

 (児童ポルノの所持の禁止)
第八条 何人も、自己の性的好奇心を満たす目的で、児童ポルノを所持してはならない。

 (検討)
第五条 この法律の施行後三年を目途として、この法律の実施状況等を勘案し、必要があると認められるときは、これについて検討が加えられ、その結果に基づいて必要な措置が講ぜられるものとする。
 【注 これは法案作成議員の発言から、3年後、第8条(児童ポルノの所持の禁止)に罰則を付加する改正法案を提出するための理由付けのためにあると考えられている。】

 まぁようするに、将来的には児童ポルノであると認められる出版物は、銃や麻薬と同じように所持するだけで犯罪者にされてしまうかも知れないということで、将来的にこれの解釈がどのくらい広がっているかによって、捨てられないで部屋にしまい込んであるエロ写真雑誌一つのおかげで社会的地位が剥奪されてしまう可能性もあるわけで、そうなってくるとこれは雰囲気的には思想統制にも似てくるのではないかと左翼の目もぴりぴりしばたいて来るような予感がしてなんだかやだなぁな感じなのです。
 個人的にはお目にかかったことすらないのですが、大麻なんかも本当はわざわざ規制するような代物ではないんじゃないかなと思う今日この頃であり(ASAHI-NET内にもこれに関する記事を扱っているホームページがあります、、、探してみてね^_^;)、何でかんで持っているだけで犯罪の世の中というのは社会的アレルギーがストレスを鬱積させて厭な犯罪満載な国を作ってしまいそうでちょっとお関わり合いになりたくないなぁな雰囲気充満な感じです。
 しかしそうするととりあえず目下のエロゲーのいくつかは処分もしくは隠蔽しなければならないわけで(もちろん後者を選びますが^_^;)、これはちょっとやっかいだぞってな感じでしょうか(くりいむレモンとかもどうにかしないと、、、亜美ちゃんまだ中学生だし-_-..zzZZ)。

 二つ目は、こんな法律を作ったところで、事実上のロリ系マンガはそう簡単には消滅しないだろうなぁ、ということです(特に商業誌はね、、、需要もあるだろうし)。なぜならはっきりしたモチーフがあるわけではないフィクションの場合、設定如何でどうにでも逃れることができてしまうからです。
 まぁこれは先週のトピックでも書きましたが、要するに「どう見ても小学生にしか見えないけどこれでも立派に若奥様」とか、「とあるオフィスレディーのエッチな体験を、デフォルメにして描いています」とか、「薬によって細胞が退化し外見だけ幼児化してしまった女性・21歳が、変質者に無理矢理襲われて、、、(あ、コナン君だ・笑)」などといった設定を用意すれば、今まで通りの絵でもしっかり仕事が続けられるんですよ旦那ぁ>ロリ系商業マンガ作家のみなさん(笑)
 ランドセルをしょわせたければ、コスプレだとか会社の制服だとかなどといったことにしてしまえばよいし(鬼畜!)。

 もっとも、これまで正攻法に作られてきたたくさんの作品が、「児童ポルノ」のレッテルを貼られて市場から葬り去られてしまうのは悲しいことですし、将来的にはそういった作品が、たとえポルノを狙っているわけではない作品でも作られなくなってしまうことは非常に悲しいことです。たとえば「センチメンタルの季節」(榎本ナリ子/小学館)は思春期の少女の性について描かれたマンガで、その緻密な心理描写が私は非常に気に入っていたのですが、これなんかも法案が法として施工され、行政が動き出せば市場から消されてしまうのだろうかと思うと非常に残念でなりません。それが、三つ目の感想です。
 、、、先の例では分かりづらいでしょうか? もっと有名な例を挙げると何があるでしょう? 学園もので性が描かれていたらアウト、な訳ですから、、、「ハレンチ学園」(永井 豪/集英社)なんかもOUT? それから「エスパー真美」(藤子F不二夫/???)とか(いくら何でもそれはないか?)。手塚治虫とか石ノ森章太郎なんかも作品によっては何となくありそうだし、、、「電影少女」(桂正和/集英社)とか「てんで性悪キューピッド」(富樫義博/集英社)なんかもかなり危ないぞ。あと、山本直樹作品はほぼ全滅だろうな。遊人も「校内写生」以降は全滅。女子高生ばっかり書いてるし。「桜通信」は結構人気あったのにね〜。最終回を待たずしてうち切り・絶版ですか。やれやれ、、、
 「性器や肛門が描写されているもの」はみんな「児童ポルノ」な訳だから、意外な作品が結構多く潰されるかもね。「まじかる☆タルるーとくん」(江川達也/集英社)とか。タルのちんちんも本丸のちんちんも何度となく出てきてるからね。
 たとえば産まれてきた赤ちゃんなんかも、法の施行後は下半身が描写できなくなるのでしょうか?(笑)

 と、いうわけで、今回のトピックは虚しい笑いを響かせつつ、これにてお開きといたしましょう。でわでわ〜☆ミ・・・


#なお、今回の記事の中に含まれる作品名、及び作家名それから出版元そのほかすべての固有名詞固有人名はすべてうろ覚えで書かれています。
 間違っている可能性が非常に高いです(^_^;)。関係者各位、及びそのファンの方々には大変失礼であったことをここで先にお詫びしておきます<m(_ _;)m>

#また、「児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律案」の草案原文は、燃え燃え企画に掲載されていたものをそのまま借用させていただきました。