衛星通信で何が出来るか


● (EISEI.2) 衛星通信で何が出来るか (1993年 7月17日)
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 現在までに、通信・放送・気象観測・データ転送・航行支援などの目的で何千と
 いう人工衛星が打ち上げられていますが、我々アマチュア無線の目的のために、
 アメリカの「Amsat-Oscar : AO」、イギリスの「UoSAT-Oscar : UO」、旧ソ連の
 「Radio Sputnik : RS」、日本の「Fuji-Oscar : FO」など 約30個ほどのアマチ
 ュア衛星が宇宙に打ち上げられています。これらのアマチュア衛星には、一般に
 『OSCAR』の名称の通し番号がつけられていて、日本の2番目のアマチュア衛星は
 「Fuji-Oscar 20 (通称 FO-20)」(打ち上げ前名称「JAS-1b」)と呼ばれています。
                           (FUROKU.13 (2)参照)

 これらの衛星は、簡単に言えば、中継器を載せた衛星が宇宙空間を周回している
 レピーターと考えることができ、主にCW・SSBによるアナログ衛星通信と、
 衛星によっては、地上における RBBS と同様のデジタル衛星通信が可能なものと
 があります。

 たとえば「FO-20」を例にとると、アナログ通信ではアップリンク周波数(uplink
 frequency)として 145.900〜146.000MHz、そして ダウンリンク周波数(downlink
 frequency)として 435.800〜435.900MHzで、逆ヘテロダイン方式と呼ばれる方式
 に則って、モールスコードやSSB通信(uplink はLSB、downlink はUSB)
 により送受信が行われます。最近の固定リグでは、サテライト対応などの表示で、
 送受信の周波数を1回の操作でできる機能を持ったものなどが便利です。

 また、FO-20 のデジタル通信ではアップリンク周波数として、145.850、145.870
 145.890、145,910MHz のマンチェスターコードによる4つのFM波、そしてダウ
 ンリンク周波数として、435.910MHz のPSK波 によって送受信する決まりにな
 っています。実際に受信するときはドップラー効果を考慮する必要があり、手操
 作では大変なので AFC機能(周波数自動追尾機能) を有効にさせるべきです。
 この方法を次回以降、紹介します。

 この FO-20 のように、uplink 144MHz帯, downlink 430MHz帯 の組合せのことを
 Jモードと呼んでいます。衛星によっては、uplink 430MHz帯, downlink 144MHz
 帯のBモードや、uplink 1200MHz帯, downlink 430MHz帯のLモードなど、他の
 周波数帯の組合せのモードがいくつかあり、搭載されるトランスポンダー(中継
 器)のモードは衛星によって決まっています。

 FO-20 は地上からおよそ1500kmほどの高さの所を2時間弱で地球を一周し、私達
 が目(?)に出来るのは、1回のオービット(周回) で最大25分ほどで、ご存知のよ
 うにドップラー効果の影響による周波数補正とアンテナ追尾が大変なわけです。
 これらは、コンピュータによる自動制御を行うことにより操作が簡単になります。
 次回以降、このノウハウを紹介していきましょう。

 リアルタイムの交信をするには慌ただしいですが、デジタル通信は情報の蓄積、
 取り出しが容易に行えますので、地球の裏側で書き込まれたメッセージを数時間
 後には読むことが出来るのです。また、「AO-13」という衛星は 地球からはるか
 3万6千kmも離れた遠い宇宙空間を長楕円軌道で飛んでいるので、互いに数千km
 離れた地点間との数時間連続したCWやSSB交信が可能です。

 このように、衛星通信は宇宙空間を漂う人工衛星を介することにより、HF通信
 とは一味違った方法で他国の人々と交信やデジタル通信ができて、夢のある通信
 方法なのですが、それなりの設備や多くの知識を必要とし、究極のパケット通信
 と言うこともできるでしょう。


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