● (EISEI.13) ドップラー効果について #1 (1993年 10月28日) -------------------------------------------------------- 人工衛星と地球の間で信号を送受信するのに、必ず考慮しなければならないことと して、『ドップラー効果による送受信周波数の変化(ドップラー偏移)の補償』が あります。この機会に、高校で習った「物理」を思い出してみましょう。 まず直線上を動く送信点と観測点について考えてみます。送信点から受信点へ向か う方向を正の向きとし、波の速さをc[m/s]、送信周波数をfo[Hz]、波長をλ[m]、 そして受信周波数をf[Hz](1.の場合 fs とし、2.の場合fr)とします。
1.送信点Sが動く(受信点Rは静止する)場合 右図のように、送信者がSの位置で波を出し始めて 速さ vs[m/s]で受信点に近づき、n秒間にnfo個 .----.---------.---. の波を出してS'に達し、このときSで最初に出した S → S' T R 波がTに達するものとすると S'Tの中にちょうど nfo個の波が含まれているので、静止した者から見 ると見かけ上、波長が変化していることがわかります。 ST=c×n[m]、SS'=vs×n[m] だから、波長がλ'[m] になったものと すると、 λ'=S'T/nfo=(ST−SS')/nfo=(c−vs)/fo となり、公式 c=fsλ' より、c=fs(c−vs)/fo すなわち、 【fs=fo×c/(c−vs)】 が得られます。 従って、送信点が受信点に近づくときは、見かけ上周波数が高くなります。 送信点が遠ざかるときは同様にして、vsが負なので周波数は低くなります。
2.受信点Rが動く(送信点Sは静止する)場合 送信点が静止し、受信点が動く場合は、波の波長は 変わらないですが、見かけ上、受信される周波数は .------.----.------. 変わります。右図のように、受信者Rが送信点Sか S R → R' T ら、速さvr[m/s]で遠ざかり、最初にRを通過した 一つの波がn秒後にTに達するものとします。 このn秒間にRをnfo個の波が通過しますが、この間に受信者はR'まで移動 していますので、受信者はこの間にR'Tの間に含まれる波の数だけ受信します。 RT=c×n[m]、RR'=vr×n[m] だから、受信される周波数fr[Hz]は、 fr=(R'T/λ)/n=(RT−RR')/nλ=(c−vr)/λ となり、 公式 c=foλ より、λ=c/fo すなわち、 【fr=fo×(c−vr)/c】 が得られます。 従って、受信点が送信点から遠ざかるときは、見かけ上周波数は低くなります。 受信点が近づくときは同様にして、vrが負なので周波数は高くなります。
3.送信点Sも受信点Rも動く場合 1.と 2.の考察から、送信点が動くために波長が、λ'=(c−vs)/fo に変化し、受信点が動くために受信周波数が、f=(c−vr)/λ' に変化 します。この両式から、 【f=fo×(c−vr)/(c−vs)】 が得られます。 さて、ドップラー効果の復習を済ませたところで、次回、これを衛星に応用して みたいと思います。
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