ドップラー効果について #2


● (EISEI.14) ドップラー効果について #2 (1993年 10月29日)
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 4.送信点の移動方向と、送信点と受信点を結ぶ方向が異なる場合
                               S' ← S(送信点)
  送信点は S'←S の方向に速さvoで動き、受信者 ____.____.__
   はRにいるとします。Sで時刻tに出た波が時刻T     /\  θ/
  にRに到達し、S'で時刻 t+Δt に出た波が、     /  \/
  時刻T+ΔT にRに到達するものとします。     d'/   /H
  (S'R=d'、SR=d、d'<d、S'H|SR)    /  /
                        ̄      /  /d
  波の速さをc[m/s]、送信点から出る波の周波数を   / /
  fo[Hz]、R点での受信周波数をf[Hz]とすると、   //
  送信点から時間Δtの間に出た fo×Δt 個の波   .  R(受信点)
  を受信者はΔTの間に受信するので、受信周波数
  は見かけ上、f=fo×Δt/ΔT となります。

  T−t=d/c、 (T+ΔT)−(t+Δt)=d'/c の2つの式から、

  d/c+ΔT−Δt=d'/c、よって ΔT=Δt−(d−d')/c で、

     d−d'≒SH=SS'×COSθ=(Δt×vo)×COSθ だから、

     ΔT≒Δt−(Δt×vo)×COSθ/c=Δt(c−vo×COSθ)/c

  すなわち、 【f≒fo×c/(c−vo×COSθ)】 が得られます。
  (θ=0°とすれば、前頁の1.の場合となります。)

  さて、1993年 10月27日(水)の衛星FO-20のJAモードの時のCWビーコン
  で【上式】を検証してみます。まず、オービットを確認し、本編(12)で解説し
  た手順どおり関係機材をすべてセットしておきます。受信機のモードはSSB
  (USB)モードです。


      +-----+------+--------------+-----------+----+
      |   |   | 可 視  時 刻 |  方   向  |最大|
      |日 付|REV|--------------|-----------|    |
      |   |   | AOS TCA LOS|A0S TCA LOS|仰角|
      +-----+------+--------------+-----------+----+
      |10/27| 17421|0829-0835-0843| 27- 96-167| 29 |
      +-----+------+--------------+-----------+----+


  UTC 08:29 は +9時間して JST 17:29 ですから夕方の5時29分頃、
  方位は 27゜ですから北北東の方向から飛んできます。

  FO-20のCWビーコン周波数は fo=435.795[MHz]、そして本編(7)で計算
  したように秒速約7.3[km]で移動していますので vo≒7.3[km/s]、また電波の
  速さは c=3×105[km/s]です。今、AOSの時の衛星の進行方向
  と受信点との視線方向のなす角θを、およそ 20゜,LOSの時は160゜と仮定
  してみると、【上式】よりダウンリンク周波数の予測値を計算することができ
  ます。

  たとえば、AOSの時は COS20゜≒0.9397 として、次のように計算できます。

   f≒(435.7950)×(3×105)/(3×105−7.3×0.9397)≒435.80493[MHz]


  このようにして予測ダウンリンク周波数を計算し、その時の実際の観測値を
  書き並べたものが、次の表です。


      +-----+---------------+----------+
      |時 刻|  θ| 予 測 値 | 観 測 値 |
      +-----+----+----------+----------+
      |17:29|  20| 435.8049 | 435.8037 |
      +-----+----+----------+----------+
      |17:33| 60| 435.8003 |          |
      +-----+----+----------+----------+
      |17:36|  90| 435.7950 | 435.7950 |
      +-----+----+----------+----------+
      |17:39| 120| 435.7897 |          |
      +-----+----+----------+----------+
      |17:44| 160| 435.7850 | 435.7861 |
      +-----+----+----------+----------+


  この日、実際にCWビーコンを観測したダウンリンク周波数は上記右欄のと
  おりです。予測値との誤差は当然で、実際にはこれに仰角の要素を加味しな
  くてはなりません。仰角が低いときは、ドップラー効果による周波数偏移が
  少なくなり、仰角が高いときには、周波数偏移が大きくなります。 また、
  受信機の局部発信器の周波数確度の問題も含まれるものと思われます。


  PS. このCWビーコンの速さは約100字/分なので、これを耳で受信しながら
    手書きするのは至難の技です。 1アマ試験の時の受信速度が60字/分で
    したから...

    次回、アナログ通信のときに必要な、逆ヘテロダイン方式によるループ
    実験におけるドップラー偏移について解説します。



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 (参考資料)改訂版 衛星通信 飯島進著  CQ出版社
       JAS-1 ガイドブック   JARL(日本アマチュア無線連盟)
       アマチュア無線ハンドブック JARL(  〃                )
       高等学校教科書 物理    数研出版
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