子宮頚ガンdiary
【その1】
〜発 見〜
入院までの6月は、1日1回はメソメソしていた。というのも、子宮頚ガンの原因は、ヒトパピローマウィルスによるもので、これはセックスでうつるから、この病気にかかる人はまるでヤリマンみたいな言い方をしている文献まであったからだ。先生に私はこのウィルスのキャリアなのか尋ねてみた。もしどこかで感染していてキャリアならば、夫にも何らかの危険があるかもしれない。先生が言うには、普通の検査ではキャリアか否かはわからない、手のかかるDNAレベルでの検査をしなければならないそうだ。夫に危険が、なんてそこまで心配することはないとおっしゃった。私が読んで結構傷ついた、子宮頚ガンはセックスでうつる、と断言していた本の著者は、豊富なDNAサンプルをもってして本を書いたのだろうか?きっぱりと全否定できないだけに、つらい。初体験が早いというのは全くあてはまらないし、風俗嬢でもないし、セックスをするのは基本的に恋人だけだが、若気の至り(?)でつい酔っぱらってやらんでいい人とやっちゃったってことはないでもないし、かといって不特定多数となんかはしないし、そのくらいは誰でもあることだろー、でもやっぱりあれが悪かったのか、ともう頭の中は堂々巡り。とにかく昔のこととはいえ、夫に申し訳ない気持ちでいっぱいだった。これは罰が当たったのだ、などとも思えてくる。そんなに罪深いことはしていないはずだが。とにかく、ごく近しい人間にはそんな気持ちを吐露していたので、ひどく心配させた。堀江しのぶは乳ガンだっけ?清水クーコや安井かずみも子宮ガンじゃなかったっけ?と若くして女性特有の病気で亡くなった有名人がいろいろ思い出されてくる。平均寿命80歳と言われれば、自分もそのくらいは生きるんだろうな、と漠然と思っていたが、もしかしたらこの病気で来月には死ぬかもしれないと思ったら、なんだかびっくりだ。人の運命なんて一瞬先はわからないはずなのに、自分が死ぬという意識が全くなかったのだ。想像力の欠如。世界が少し違って見える。そういえば1999年7の月だ。なんだかいやな符号。遠い先のことだと思っていたのに…。病気の疑いを宣告されてから初めていろいろ調べて、子宮頚ガンは初期ならほとんど治る、決して死に至る病気ではないということがわかったにも関わらず、割とネガティブ思考な私は最悪の想像ばかりしては必要以上にメソメソしていた。0期だと思ったら病理検査で浸潤ガンだったので結局子宮全摘になってしまったとか…。そんな私に妹は神様はその人が耐えられない試練は与えないと言った。この言葉は結構救いになった。私も妹も無宗教だが。もっとたいへんな病気にがんばっている人も大勢いるのだ。小さな子どもでも。今まで子どもを作ることを先送りしてきたことが多少悔やまれる。生理は全く順調で、20代なら欲しければすぐ作れると思っていた。絶対欲しいという程ではないのだが、(自分が子どもみたいなものだからちょっと自信がない)こういう事態になってくると何がよかったのかわからなくなってくる。虐待で子どもを死なす若い親には非常に憤りを感じる。殺すならくれ!欲しくてもできない人たちがたくさんいるのに。日本もアメリカのように里親制度がもっとオープンな感じ(?)になればいいのに。 入院1週間前くらいから体調を整えるべく、なるべく2時までにはベッドに入るようにする。2年前に会社を辞めてから、私の生活は昼夜ひっくり返ってしまっていたのだ。macを使い始めると頭が冴えちゃって、朝まで全然眠くならない。IllustratorやPhotoshopを独学してきた。夫を始め私の周りの人たちは、若い頃からそういう仕事スタイルだ。30過ぎで私もそういう生活習慣に突入したわけだが、どもうそれがいけなかったのかもしれない、と勝手に自己分析。ガンの因子は誰でも持っている。それがガンになるかは遺伝的なものもあるが、生活習慣によるところも大きいのではないかと思うからだ。健康ならウィルスには負けない。だが、免疫力が低下しているとヤバイ。免疫力を強化するには、夜眠っている間に作られるメラトニンとかそういったものと、それらの働きが活発になる太陽の光を浴びることが大切らしい。(みのもんた的情報)私は全く逆のことをしている。おまけに体力が低下し始める30過ぎから…。そもそも無排卵になったのもこの頃からでは?20代後半で基礎体温をつけていたときは、ちゃんと2相になっていた。不妊の原因は環境ホルモンの影響とか、他にもいろいろ考えようと思えば考えられるが(先生はガンと不妊は関係ないと言ったが)、とにかく30過ぎてから私の体は確実に変化していったようだ。初潮が早かったから必然なのか?とにかくいろいろ考えた。周りからは考えすぎるなと言われた。ある日は人にカミングアウトしたくなり、ある日は恥ずかしい病気だから言えないという気持ちになり、6月の私の心はホントに千々に乱れていた。その度に夫に悲しい思いをさせてしまって申し訳なかったと思う。酔っぱらっては、これは罰が当たったんだ!と泣く。何の?誰も罰なんか当てやしない。でも30代も半ばになれば、私は清廉潔白です、なんて言えない。私はひどく怯えていたようだ。病気のことを告げた人には皆、検診を強く勧めた。今の私に出来ることはそのくらいしかない。今まで健康(というより丈夫)だったので、病気に関する知識がいかに乏しいか思い知らされた。女性誌などで病気の特集が組まれていても、意図的に目を背けてきたように思う。自分が当事者になって初めて知ったことの何と多いことか。保険には健康なうちに入っておくのと同様に、せめて検診を受けるなら、そのおおよその内容くらいは予め知っているべきだと思った。無知からくる余計な不安を取り除くためにも。 |