日本探偵小説のプレリュードと守口門真

                                    名探偵「明智小五郎」の誕生

 日本探偵小説の草分けとされる江戸川乱歩。乱歩の守口住まいは大正も終わる頃のことでした。守口において乱歩は初期の名作を次々発表し、探偵小説家としての展望を見出すとともに、「D坂の殺人事件」で初めて名探偵「明智小五郎」を登場させています。 守口は「本格的探偵小説」と「名探偵」の誕生に深くかかわることになったといえるでしょう。初期作品「屋根裏の散歩者」「D坂の殺人事件」「幽霊」などには守口時代の経験が投影されているといいます。

  

D坂の殺人事件
大正14年
雑誌「新青年」
 その時、先ほどちょっと名前の出た明智小五郎が、いつもの荒い棒縞の浴衣を着て、変に肩を振る歩き方で、窓の外を通りかかった。彼は私に気づくと会釈をして中へはいってきたが、冷やしコーヒーを命じておいて、私と同じように窓の方を向いて、私の隣に腰かけた。
  気分転換に文禄堤を散歩する乱歩の姿が浮かび上がります。

明智小五郎の経歴
  周知のように「D坂の殺人事件」で探偵の才能を見せた明智小五郎は、以後数々の事件を解決して、日本を代表する名探偵となります。諸国遍歴後、帰国した明智小五郎を待ち受けていた難事件が「蜘蛛男」事件でした。以後、明智は「何者」「猟奇の巣」「魔術師」「黄金仮面」「黒とかげ」「人間豹」と次々難事件に直面していきます。この過程で、明智をとりまく人々も多彩になり、アルセーヌ・ルパンとの対決、宿敵怪人二十面相との相克、少年探偵団長小林少年との出会いなどがあります。 

吸血鬼
昭和5年
 三谷がドアをたたくと、十五、六歳のリンゴのようなほおをしたつめえり服の少年が取りつぎに出た。名探偵の小さなお弟子である。