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プラナー 55mm F1.2 100jahre


プラナー、その言葉はよい響きをもっているとコンタックスユーザーならだれしも思うことだろう。
実際1996年にはプラナー100周年を祝うため1000本限定でコンタックス用レンズ"Planar 55mm F1.2"が発売されたほどプラナーは別格視されている。
そのプラナー55/1.2は卓越した描写性能でプラナーが現在の数ある標準レンズのなかでもひとつの頂点であることをあらためて誇示した。


しかしプラナーは全盛の現在と長い歴史もある反面、ツァイスの歴史の中では戦後に至るまで埋もれていた感もあるレンズタイプでもある。


そのプラナーとは。


奥多摩:御岳山 - RTSII, P55/1.2, RVP

RTSII, P55/1.2, RVP




 

 

Planar , is so popular among Carl Zeiss lenses.

Hence the special Planar was born in 1996 to celebrate 100th anniversary of the Planar.
The lens is Planar 55 F1.2 for Contax/Yashika mount.


The 55/1.2 make so crystal clear color saturation and it also make ultra razor sharp image.
It shows the Planar is still the top runner of all prime lenses against the test of time.

So what is the Planar?

 

 

 

プラナーとは

プラナーとの出会い、ひとつのシナリオはこう書けるかもしれない。

たとえば国産レンズを使用していて写りに満足はしているが雑誌等でよくツァイスの魅力という特集が組まれたりして、常にツァイスレンズというのは気になる名前であった。
そこでカメラ店などではじめてコンタックスのレンズカタログを手にするのだが、そこに焦点距離や明るさのほかに国産レンズにはない不思議な名前がレンズについていることを見つける。ぷらなー、ぞなー、びおごん・・・
これらはある特定のレンズの名前ではなくレンズ構成についてつけられた名前のことである。

レンズ構成とはどういうものかというと、

レンズは一枚でなく複数の凹凸レンズを組み合わせた方が性能がよくなる(レンズの光学上の問題点である各収差が押さえられる)。
レンズの各エレメントはもちろんひとつひとつのレンズで設計が異なるが大半は似たような組み合わせが多く、凹凸の組み合わせ、硝材の組み合わせなどでいくつかのタイプに分類することができる。
また光学レンズ設計の歴史は古く、長年の研究と評価によっていくつかの組み合わせタイプのみがふるいにかけられて残っているとも言える。


これは特にツァイスだけではなく他の光学レンズメーカーでもおなじことである。ただツァイスがレンズ構成に名前をつけているのはカールツァイスこそが多くの優秀なレンズ構成を生み出してきたという自負でもあろう。

端的に言うとプラナーとは主に標準域から中望遠でよくつかわれるレンズ構成の一つである。他のメーカーでは同様な構成をダブルガウス型と呼んでいるがこれについてはあとで触れる。
ツァイスレンズでよくこうしたレンズの構成が話題になるのは、同じ焦点距離のレンズであってもこうした構成がことなると描写傾向や明るさ・かたちが異なるからだ。
たとえばコンタックスレンズの場合85mmではプラナーもゾナーもラインナップされているがプラナーの方はF1.4と明るく柔らかい写りでやや大きめ、ゾナーのほうはF2.8とやや暗いが軽くコンパクトで開放からやや硬めのシャープな写りとよく評される。
明るければ大きいというのは一般的な傾向ともいえるが、プラナー構成の方がより明るい(大口径)レンズをつくりやすく、レンズエレメント間の距離をより必要とするのでこうした差が出てくるとも言える。

プラナーに人気があつまるのはもっともツァイスらしいレンズともいえるからだろう。
ツァイスらしいとはどういうことかというと、一般的には立体感や発色の豊かさなどと感覚的に評される。しかしアサヒカメラのテストをしていた小倉氏によれば光学的に見るとツァイスらしさとは、球面収差の補正タイプが完全補正型であることと像面の平坦性が高いということがあげられている。
簡単に言うと前者は開放から使えるタイプであることを示し、後者については画面全域にわたって高画質であることを示している。つまり絞りや像の位置によらず均質な高性能を目指しているとも言える。
これはコンタックス、ハッセル用にかかわらずそうした姿勢が貫かれており崇高な哲学のようにも見えるそうだ。

別項のようにホロゴンの名前がその特長をも端的に示していたように、プラナーでもそういえるだろう。プラナーという名前の由来は"まっすぐ"とか"平坦"を意味する言葉からきているという。
これは収差があまりないという意味もあるというし、像面が平坦であるという意味でもある。


さて、それをキーワードとして100年の過去に時間をもどしてみることにしよう。



Metal referection - RTSII, P55/1.2, RAP

RTSII, P55/1.2, RAP

 

 

*同じ名前がついているレンズでもライカではズミクロン以降は明るさによって名前が付けられている(ズミクロン=F2.0、ズミルクス=F1.4など)
これ以前はやはりタイプによって名前が決められている。
たとえばエルマーは現在はF3.5より暗いレンズだが以前はテッサータイプを指していた。

 

奥多摩:御岳山 - RTSII, P55/1.2, RVP

RTSII, P55/1.2, RVP

The Planar is a lens type. Camera lenses can be divided into several lens types, Planar is one of them. Planar is commonly used for standard to midtel Zeiss lenses.
Other type of lenses for Zeiss are Biogon, Hologon, Sonner and so on.

However, it is special to zeiss lenses because most lenses do not have such a name. It is because of the long history of Carl Zeiss.

Followings are the study of Planar
.

プラナーの100年から


カールツァイスの社史などを見るとレンズタイプが完成された年にはそのレンズが「発明された」とある。もちろん特許的な意味合いもあるだろうが、開発されたとか発表されたという響きよりツアイスらしい。
そう、プラナーが発明されたのは100年もの昔である。

ツァイスのレンズが単に高性能というより個性的で独創的なのは、衆愚つまらぬ会議ではなく、天才たちの才能のきらめきのイメージが重なるからのように思える。
ゾナー・ビオゴンに天才ベルテレが、ディスタゴン・ホロゴンに近代光学計算の父でもあるグラッツェルがいたように、テッサーそしてプラナーには数学の才に恵まれたパウル・ルドルフがいた。

ルドルフははじめ数学の教師を目指していたが、1886年にツァイスに招かれた。奇しくもプラナー誕生のちょうど10年前である。彼はアッベに見出されツァイスのカメラレンズの光学設計の任についた。
彼が光学設計をはじめたころ、すでにレンズの諸収差のうち球面収差など基本的なものはよく補正されるようになってきた。

しかし、像面湾曲の問題はあまり手付かずで残されていて、現在標準レンズと呼ばれるような画角では画面の平坦性(全画面に渡った画質の均等性)に問題を残していた。

彼が取りくんだのはこの分野であった。
まずプロターというレンズを開発した。これは絞りをはさんで異なる硝子を配し色消し(にじみを減らしシャープネスをあげる)をするという彼の代表的な考えの一つを取り入れた記念的なものであった。これにより実際のカメラレンズ部門の売上もかなり向上し、主製品の顕微鏡部門に比肩するほどになったという。

つぎに目指したものはより平坦性が高く大口径の可能なものということで、1896年に発明されたのがプラナーである。
ルドルフはプラナーを設計するにあたりガウスタイプのレンズに着目した。


ここで現在でもよく標準レンズの説明に出てくるガウスタイプというものを説明せねばならない。
ガウスタイプとはもともと有名な数学者のガウスが望遠鏡のための対物レンズとして発明したものである。fig1
それをイギリスのクラークが二枚対称型にすえつけることで写真用としても良好なものとした。fig2
ここがダブルガウスと呼ばれる所以である。

ルドルフはそれにいくつかの工夫をしてプラナーを創造した。
ダブルガウスとプラナーの(硝材選択以外での)大きな違いは主に以下の二点である。

メニスカス(三日月型の凹)を可能な限り凸レンズにちかづける
メニスカスを厚くして貼りあわせを作る。(色消しを効果的にするため)

これによりダブルガウスより画期的な性能向上をもたらしたのである。この点でいうと他社の標準レンズでダブルガウスと称されるレンズのほとんどは原始的なダブルガウスよりはプラナーの流れを汲んでいるのが明らかで、現行の6−7枚構成の標準レンズの多くはダブルガウスというよりはやはりプラナータイプあるいは変形プラナータイプと呼ぶほうが正しいように思える。

しかし、プラナーは可能性を秘めたレンズ構成ではあったが当時の技術ではなかなか解決の難しかった反射面の多さから来るフレアの問題を抱えていた。そしてツァイスとルドルフはトリプレットショックのあと、救世主とも言えるテッサータイプを発明し一世を風靡した。

その影でプラナーはツァイスでは埋もれた存在であった。

戦前にツァイスイコンとライツ(ライカ)のレンズの大口径化競争があった。当時はフィルムの感度も低く大口径化は必要なことと考えられたし、それはメーカーの威信をかけたスペックの勝負でもあった。
終始ツァイス優勢とされたその中でもプラナータイプを使用したのはライツであってツァイスは主にゾナータイプを採用していた。
これは大口径化のためにはどうしてもそれに有利なプラナー構成をとらざるを得なかったライツと、ゾナーで十分大口径化できたツァイスとの光学設計力の差が当時はそれほどあったということだろう。

当時の界面数を減らした方が良い時代を鑑みると可能であればプラナー構成よりゾナー構成を採用した方が有利だったからである。またプラナー構成の場合コマ収差が出やすいというデメリットもあり、当時の技術ではできるならプラナーはまだ避けたほうがよかったのだ。

ところが戦後のコーティング技術の実用化や計算機による設計技術の進歩、さらには新種ガラス(希土類を含むガラス)の実用化などがこれらの状況を変えていった。また一眼レフの主流化がさらなる大口径化を促進し、テッサーなどと違って焦点移動が少ない点も一眼レフレンズとして有利だった。


1953年にはローライフレックスでプラナー80/2.8としてプラナーは復活した。これは5枚構成のもので後群はガウスそのままという感じだ。

さらに1957年には現在ともつながるハッセルの新たな500Cシリーズがスタートし、本格的にツァイスの採用がそのとき始まった。そのなかにプラナー80/2.8がローライのものとは異なる設計で登場した。これらは現行のものとほとんど同じであり完成度の高さを物語っている。このうちの何本かは地球を離れ大気圏外から美しい地球を写した。
35ミリカメラでも50年代の終わりにコンタレックス用として50/2や55/1.4などが登場した。(さらにローライのQBMマウントのものもある)
そして70年代になるとヤシカ・コンタックス用として現在のラインナップが登場する。こうして一眼レフの時代とともにプラナーの全盛期もやってきた。
その点で言うとまさにプラナーとは現代が求めていたものと言える。

さらにこうした100年の歴史を踏まえて1996年にP55/1.2が登場した。
そのレンズの鏡胴の側面には誇らしげに"Planar 100Jahre"と記されている。


 

 

 

 


fig.1 ガウスタイプ

gauss.gif (1658 バイト)
ガウスの対物レンズ

fig.2 ダブルガウスタイプ

dgauss2.gif (2310 バイト)
クラークのダブルガウス


fig.3 プラナー
planar.gif (2745 バイト)
ルドルフのプラナー(1896)

プラナーの特長を一口で言えば対称性に優れていて大口径にも向いている。また色消しにすぐれたものがある。
反面、枚数がややかさみ反射面が多くなる。



代官山 - Contarex II, P55/1.4, RDPIII

Contarex , P55/1.4, RDPIII

 

fig.4 トポゴン
topogon.gif (2171 バイト)
トポゴン

ダブルガウスの派生型としては広角のトポゴンがプラナーよりも原始的なダブルガウスの形を残している


 

 

二つのプラナー55ミリ

プラナーについて語りつづけるなら二つの55ミリから続けよう。
大口径化がプラナーの一つの道ならば、55ミリと言うのは高性能大口径レンズのインシグニア(徽章)でもあるからだ。

一眼レフとしては元来50ミリは短すぎて設計にはむずかしく55ミリや58ミリが主とされた時期もあった。しかし、そのうち50ミリでも十分大口径の1.2クラスが可能となる。

それから数十年も過ぎた今、また55ミリと言う口径をツアイスは復活させた。そのレンズは580gもの重量をもち、最短も60センチと最新レンズにしては少々足りない。
そうした簡便性を引き換えにしても得たものとは。

しかし、ここまでいささか長く書きすぎたのでここからは言葉をもってするよりいく枚かの写真で語っていくほうが良いかもしれない。

 

 

 

奥多摩 - RTSII, P55/1.2, RVP

RTSII, P55/1.2, RVP

*ツァイスとしてはプラナー100周年というだけでなく、記念すべきシリアル800000番目もP55/1.2の一本である

信じがたいほどのシャープネスと発色のクリアさ、美しさ
白がこれほど白いものだったことにただ驚く

P55 F1.2 Planar100Jahref12.gif (1604 バイト)

snow.jpg (29099 バイト)

RTSII, P55/1.2, RDPIII

f55.gif (1667 バイト)

f55.gif (1667 バイト)

豊かなトーンと広がる比類なきアウトフォーカスの世界
そして昔日のツアイスに想いをはせる

コンタレックス用 P55 F1.4

f14.gif (1511 バイト)



Contarex , P55/1.4, RDPIII,
開放

 

プラナーの森へ

ホロゴンとは違いプラナーと冠されたレンズは大型からブローニーサイズ、35ミリまで多岐にわたり、マクロ用にはマクロプラナーもある。またシネ用レンズにもプラナーがありF0.7と最大の明るさを誇ったものもあった。

一般にプラナーの特徴としては柔らかさがあげられることが多い。
しかし、プラナーと言ってもこの広範なレンズ群の中にはつかいこなしのやっかいなのもいるし素直なのもいる。描写傾向もさまざまである。
そこでプラナーの森を少し歩いてみてはいかがだろうか。

P50 F1.4f14.gif (1511 バイト)

f50.gif (1987 バイト)

多くの人がはじめてのプラナーとして入手する50ミリ
それゆえよかれあしかれ、これがプラナーのリファレンスとなることも多いだろう


Killer Street - RTSII, P50/1.4, TriX

RTSII, P50/1.4, TriX

P135 F2 870g

乗鞍岳 - RTSII, P135/2, RVP

RTSII, P135/2, RVP

f20.gif (2098 バイト)
f135.gif (2154 バイト)

トーンあふれる柔らかさのなかの鋭いシャープネス、美しいボケ、淡い光に映える美しい発色、プラナーのイメージにもっとも近いがややプラナーとしては長めかもしれない

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英勝寺 - G1, P45/2, RDPIII

G1, P45/2, RDPIII


p45lens.jpg (11410 バイト)

 

 

f45.gif (1840 バイト)

これもプラナーを手軽に楽しめる一本
ただしその光学性能は高く妥協はない

そのシャープネスと抜けの良い発色はツアイスの新設計の代表格とも言える

 

アウトテイク2B - RTSII, P100/2, RSX50(+1増感)

RTSII, P100/2, RSX50(+1)

f100.gif (2300 バイト)
P100 F2.0

 

プラナーの中望遠としては85ミリがより有名だが100ミリは絞りや像高にかかわらず全域にわたってすばらしい高性能を見せる

そういう意味では柔らかさは控えめながら、もっともプラナーらしいレンズといえるかもしれない

f20.gif (2098 バイト)

f60.gif (2056 バイト)


柔らかでかつ高解像硬いマクロと柔らかなプラナーと言う相反するかに思えるイメージを覆してみせるマクロプラナー
以前はSプラナーと呼ばれていた

f28.gif (2197 バイト)

SP60 F2.8

冬牡丹 - RTSII, SP60/2.8, RDPIII(+1増感)

RTSII, SP60/2.8, RDPIII(+1)

Planar CF80 F2.8

 

ハッセルユーザーなら必ず手にするレンズ、35ミリでは標準に相当する
通常ブローニーサイズ用のレンズは35ミリとしては劣るとされるがこのレンズには当てはまらない
ここではCYアダプターを使用してRTSIIで撮影した


これはNASAの宇宙計画で宇宙から地球を写したレンズでもある
そのNASAが使用したものと同じプラナーをわれわれが手にできる
子供のころ図鑑で見たアポロから見た地球の美しさに感動したことがあるなら、それはこのプラナーの美しさに感動したのである

f28.gif (2197 バイト)

鎌倉文学館にて - RTSII, CF80/2.8, RDPII

RTSII, CF80/2.8, RDPII

f80.gif (2245 バイト)
 


Contarex II, P50/2, ACR

このレンズはコンタレックスの文字通りの標準レンズで1958年に登場した。P55/1.4とはライカのズミルックスとズミクロンの関係に似ていてF値が劣っていても性能が劣る訳ではない。もともとF値が一段暗いと言うことは収差も半分程度になりその分性能は高められるので、暗いレンズの性能が良いメーカーこそまじめにレンズを作っているとも言える。

重厚な描写とボケ味の美しさはF値を譲るもののP55/1.4ゆずりと言えるが、P55/1.4がやや甘さを残すのに対してこちらの方がきりっとしたシャープさを見せると思う。
このレンズは初期の白鏡胴のものでなんと最短は30cmまで寄れる。後期は黒でフラッシュマチックというフラッシュとのリンク機構があるのでブリッツ(電光)プラナーとも呼ばれる。ただし後期型の最短は38cmになっている。





RTSII, P85/1.2MMG, RVP

 

これこそ最高のレンズとしてのプラナーの代表格と言える。
開放性能が恐ろしく高く、左記写真は開放で撮ったものだがとうて
いF1.2レンズの開放描写とは思えない。それでいてボケ味も美しく発色は高いレベルの彩度を誇る。

これはコンタックス50周年と60周年のそれぞれに限定レンズとして発売され50周年はAEG、60周年はMMGである。

おなじF1.2限定レンズでいうとP55/1.2がシャープネスや発色で個性的な魅力を見せるのに対して、こちらはあるゆる点において優等生的な高性能を発揮するという差異がある。
またこのレンズはフォトキナでツァイスレンズの解像力の高さを示す作例を写したレンズとして使われたこともある。
(ツァイスホームページのレンズ生産の項参照)

これは大判用のプラナーで、もとは空撮用のレンズとして開発されたらしい。
135では37mm相当の標準〜準広角となる。新旧いくつかのタイプがあるがこれは日本プロフォート取り扱いのT*コーティングされた最新のものでコンパーの特注#1シャッターがついている。

一般的に大判用のレンズはオルソメタータイプが大半であるが理由はイメージサークルをかせぐ為らしい。それにたいしてこのレンズはダブルガウス(プラナー)タイプを採用していて、F5.6かF8が一般的な大判用レンズのなかでF3.5という飛びぬけた大口径を実現していて大判においても大口径に向いたプラナーの能力を誇示している。
また空撮レンズらしく他の大判レンズと違って開放からの性能と歪曲の少なさに重点が置かれている。
そのかわりイメージサークルは開放で4x5をぎりぎりカバーする程度でF22で2センチ程度シフトするのがせいぜいである。

岩崎邸:回廊
Technika, P135/3.5, ACR

上記はその応用例の一つでACROS100ノーマル、開放・手持ちで撮影した。
ピント合せはリンホフ・テヒニカの本体内レンジファインダーを使い、距離計にはもちろん連動している。
大判で手持ちというのは今日では意外な感覚もあるが、もともとテヒニカという名前の由来はスタジオやフィールドからプレスまで使用できる万能(テクニカルな)カメラという意味もありプレスカメラとしての流れも汲んでいる。
ただし距離計連動にはレンズごとに調整された専用カムが必要である。

 

 

 

 

 

 


次の100年へ

RTSII, P50/1.4, PR400

 

プラナーは55/1.2の登場でひとつの頂点を迎え、その歴史に一区切りがついたかに見える。そろそろ次の100年を迎えるときだ。
なにしろ写真の時代はいま新たな転換期を迎えている。それはデジタルの流れである。


好むと好まざるにかかわらず時代は進展する。実際このページのレンズを撮った何点かの画像はデジタルで撮られていて、何点かは銀塩カメラ-それもかなり優秀と評されるレンズを使用している。その差はかなり接近している。

たしかに引き伸ばせば差はまだ出るだろう、しかしそれは単に後は時間の問題という言葉の裏返しのようでもある。

デジタルの特長の一つはCCDがフィルムと違って究極の平面性をもっていることだ。ツアイスは常にレンズがあり、それに合わせたボディを要求してきた。いままでRTSIIIのRTVなどで苦労して引き出していたツァイスの特性をCCDはその内にすでに可能性として秘めている。
プラナーの名があらわすその像の平坦性はデジタルでこそ発揮されるかもしれない。しかしこの時代にはまた新たな覇者があらわれるかもしれない。

それは、まだわからない。

いずれにせよひとつ言えることは、ここまで述べてきたプラナーの長い歴史は単に本のなかで読むだけのものだったけれども、いまはわれわれがその歴史の先端にいるのだ、ということではないだろうか。


 


(2000/11)

 

主な参考資料

写真レンズの歴史 朝日ソノラマ
写真レンズの基礎と発展 朝日ソノラマ
アサヒカメラ誌等

Special thanks to 大介さん 山内さん



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