この撮影は三浦海岸の海と岩のせめぎあいを表現したかったのと同時に、つぶやき岩の秘密に至る道でもありました。
「つぶやき岩の秘密」はNHKのかつての少年ドラマシリーズの一本として放映されました。原作はその前年に出版された新田次郎の同名の児童文学です。
漁村に住む紫郎という少年を主人公にしてミステリー仕立てのストーリーの中で海や故郷、そして知人である老人など普通に接していたものに実は隠された姿があったことを知り、その秘密を理解することによって子供から大人への一歩を記すという少年の通過儀礼の物語でもあります。
海と少年の関係が密接でありその重要な舞台は新田次郎が一時住んでいた三浦半島西岸の三戸浜と言われています。つぶやき岩など実在のものを多く取り入れているため、ドラマもそれを尊重して同じ三戸浜でロケされました。
つぶやき岩の秘密は少年ドラマシリーズの中でも異色であるといえます。それはタイムトラベラーなどに代表されるSFが看板であったシリーズの中での位置づけ、そして石川セリの名曲であるタイトル曲の「遠い海の記憶」などもありますが、それとともに映像がきちんと現存しているということがあるからです。
少年ドラマシリーズの特徴のひとつは後年の高い評価とはうらはらにほとんど当時の映像が残っていないということにあります。当時は放送用ビデオテープが高価であったため、NHKといえども放送ごとに消してしまったのです。それとともにシーンの断片もみな追憶とともに消えてしまいました。
それに対してつぶやき岩の秘密は原作の雰囲気を重視するためオールロケによって撮影が行われ、そのため撮影にはフィルムが使われました。そのためビデオテープと違い今日まで現存できることになり、いまでも見ることができます。
そして三戸浜と三浦の海それ自体も当時の面影をのこしつつそこにあります。
つぶやき岩に至るためにはある謎を解かねばなりませんし、さらにある条件のときに行かねばなりません。それは物語でも現実の世界でも意味合いこそ少し違うけれども、同じ条件が必要なのです。
撮影のため、つぶやき岩に至る道を探すことは自分の心が少年の頃に戻ったような快い錯覚を覚えます。
このページ作成にはがろっとさんのホームページを参考にさせていただきました。他のつぶやき岩関連のサイトと同様にここでもつぶやき岩の場所はあえてあかさないことにしましょう。興味のある人はぜひ探してみてください、それは現実と追憶の狭間にきっと見つかることでしょう。
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