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4x5カメラのレンズ選択

 

大型カメラが35mmや中型カメラと大きく違うところはボディーとレンズがペアになっていないと言うことだ。
(ここでいう大型カメラとは蛇腹式のビューカメラのことで4x5や8x10のようなシートフィルムを使うものだけでなく6x9も含む)

大型カメラは一般的な35ミリ一眼レフや中型カメラとちがってカメラとレンズがほぼ完全に独立していて蛇腹でつないでいるため、メーカーや時代を超えてさまざまなカメラとレンズの組み合わせが可能である。
しかし、実際はさまざまな制約がありすべてに自由というわけではない。また焦点距離換算が違うため何ミリから買ってよいかもわかりにくい。

以降はわたしが大判を始めるにあたって大判レンズ選びのためのこれらの注意事項をまとめたものである。

 

レンズの制限事項

カッコ内はリンホフ・テヒニカの場合のデータ


1.ボードマウントのタイプ (リンホフボード)

リンホフボードは三型と四型以降の現行ではタイプが違うので注意。
またリンホフボードはホースマンやジナーを除いたタチハラなどの多くのビューカメラが採用している。ホースマンブランドでもウッドマンはリンホフ互換である。

2.ボードマウントの内径寸法 (83mm)

これに合わない大きな後玉を持ったものはマウント穴に入らない。
ただしこれに合ってなくてもレンズの後玉をばらしてあとでピントグラス側から入れる手もある。

3.フランジバック:ベローズの最短と最長 (92mm - 430mm)

これが一番大事なところでもある。一般にレンズのカタログの必要フランジバック長から自分のカメラの最大ベローズ長以下のものを選ぶが、下記の事項を知っておくと良い。

3-1.標準タイプとテレタイプ

レンズには大きく分けて標準タイプとテレタイプ(テレフォトタイプ)がある。
35ミリ一眼レフでもこの違いはあるのだがユーザーは意識することはあまりない。テレフォトタイプとは単に望遠レンズのことを指すのではなく、レンズの光学的な分類である。別な言い方をすると35ミリ一眼レフで広角で使われるレトロフォーカスタイプの逆でもある。つまりレトロフォーカスタイプが前面に大きな凹レンズ(負のパワー)を持って光学主点を前方に移動してフランジバックを長くするのとは逆に、後部に負のパワーを持ってフランジバックを短くするのである。

言い換えると35ミリ一眼レフの広角レンズの場合はミラーを避けるためにレトロフォーカスタイプでフランジバックを長くするが、ビューカメラの長焦点(望遠)レンズの場合は蛇腹の伸張距離を短くすませるためにテレタイプでフランジバックを短くしている。

たとえばフジノンレンズの300ミリを例にとると、標準タイプのレンズの場合は296mmフランジバックが必要でこのままだとホースマンでは蛇腹の長さが足りない。しかし、テレタイプの300ミリの場合はわずかフランジバックが196mmですむため取り付けることができる。

3-2.実際に必要なフランジバック

また単にフランジバックをクリアしただけでは無限にしかフォーカスが合わない使いかたしかできない。風景ならばこれでもよいが、一般的には標準タイプの場合はレンズの焦点距離(バックフォーカスでなく)に1.2をかけた長さが確保できれば通常使用が出来て、x2.0をクリアできれば近接が可能といわれている。これはあくまで目安である。

またテレタイプの場合は焦点距離に0.9をかけた長さが確保できれば通常使用が出来て、x1.2をクリアできれば近接が可能といわれている。

つまり360mmレンズの場合は 360x1.2=432mmのフランジバックが必要なのに対して、テレタイプの場合は360x0.9=324mmのフランジバックで通常使用が可能であることになる。
これを自分のカメラの最長フランジ長(最大ベローズ長)にあてはめればそのカメラで実際に使える最長の焦点距離がわかる。
 

 

何ミリを選べばよいのか?

35ミリカメラと比べて対角線から見た4x5の換算率はほぼ3.53である。よって180ミリが180/3.53=50.1でほぼ35ミリカメラの50ミリに相当する。

まずはじめに35mmカメラ同様に標準レンズを買うとする。
一般に4x5における標準レンズは150mmであると言われる。これは4x5の対角の長さから来ているのだけれども、これを135フォーマットに当てはめたときには対角の長さで標準を言えば43mmということになる。しかし、歴史的に135の標準は50mmとして多くの人が慣れているわけなのでこれを4x5で選ぶとすれば180mmとなる。

また4x5において広角で主として選ばれるのは超広角(20mm相当):75mm、広角(24mm相当):90mm、準広角(37mm相当):135mmなどがある。望遠はテレタイプが一般的で360mm(105mm相当)や400mm、500mmなどがある。

リンホフテヒニカの場合、もっとも焦点距離の長いレンズはテレ600ミリ(例えばフジノンT600/F12)である。ただ実際これをつけると風が吹いていたりすると安定性がかなり問題になる。

 

イメージサークルと包括角度

テレタイプのほかにカタログを見るとワイドやスーパーワイドといった文字をみることもある。これらは135の感覚の画角が広い広角レンズというわけではなく、包括角度が広いということをしめしている。
実際スーパーワイドタイプでも135の標準や準広角の画角をカバーしているものもある。

フランジバックが使える距離範囲を示すように、包括角度と画角の差は使用可能なアオリ量を示している。

4x5で最低限必要なイメージサークルは対角長の152ミリであるから、その差とカタログ上のイメージサークルの差を見ればどれだけアオリが可能かの自由度が分かる。

...(残り次回)

アクセサリーの規格

バックにたいしては国際規格というのがあり、ほぼリンホフと同じバックやファインダーが取り付けられる。

...(残り次回)

大判用ツァイスレンズについて


戦前から多くが作られているのでゾナーやテッサーもあるが、もっとも有名なものはPlanar135/3.5とBiogon75/4.5であろう。現在新品として購入可能なのはP135のみで、日本プロフォートから購入することができる。
(ちなみにPlanar100/2.8,80/2.8とBiogon53/4.5は4x5に必要なイメージサークルの152mmをカバーしていない)

この二つに共通する長は主に航空宇宙分野で使われたらしく空撮向けにレンズが大口径であるということとイメージサークルが小さいということだ。またツアイス側のコメントによるとP135などは開放性能をかなり重視しているという。

Biogon75は基本的にはSWCなどと同様にベルテレの90度F4.5ビオゴンと思われるが、これにはリンホフビオゴンと呼ばれるものとNASA・軍用タイプ(?)と呼ばれるものとエアロテヒニカ用などがある(光学的にはほぼ同じではあるらしい)。
このうちテヒニカに普通につけられるものはリンホフタイプと呼ばれるものである。
またテヒニカにつくというリンホフビオゴンでも、テヒニカIVの場合つきにくくテヒニカV(マスターテヒニカ)以降ならばつきやすいというのもあるらしい。

 

 








 

 

 

 

 

 

 

 

*ちなみに標準タイプは正・負・正のパワー配置になっている対称型のレンズで収差の除去にもっとも有利である。
形が対称形のダブルガウスでなくテッサータイプでもゾナータイプでもパワー配置は正・負・正となっている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*絞り値によって変化するので注意。表記が無ければカタログ値はたいていF22の時の値。


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