newlogo2.gif (3705 バイト)

3dm_03.gif (998 バイト)17%グレイトップ3dm_03.gif (998 バイト)T*トップ
            


 

IXY Digital L   6.4mm F2.8, 4群4枚, 3cm, 1/1500, 90.3×47.0×18.5mm, 100g

IXY Digital LはキヤノンのIXYデジタルシリーズの中でも最小のもので、わずか100gたらずのコンパクトボディの中に400万画素のCCDを持つ。ただしズームではなくF2.8/40mm相当の単焦点レンズが使われている。
メディアは従来のキヤノンとは異なりSDカードになっていて、電池は専用のリチウム式充電タイプのものを使う。この小さな電池をはずすだけでぐっと重さが軽く感じるほどボディ自体は軽量に出来ている。
http://cweb.canon.jp/camera/ixyd/l/index.html


デザイン・サイズ

なんといってもこのカメラを印象付けているのはその小型さとスタイリッシュなデザイン、それと4色選べるというバリエーションです。しかも4色は単に塗装が違うだけではなく色によってヘアラインのありなし、ヘアラインの粗密まで異なっています。わたしは当初はピアノブラックを購入しようとしていたけれども、店頭で見てシルキーブロンズのタイプに変更した、そのくらい表面処理の印象は違うし実際に見ないとわからない。
凝ったことにはパッケージまで色別になっているようでわたしのものはブラウンのパッケージになっていた。
ボディ側面は一体形成のステンレスになっていてチタンやアルミに比べると少し落ち着いた趣もある。

ストラップは安めのものがおざなりについてきて、ケースは付属していない。(写真は別売りのネックチェーンタイプ・ストラップ)
この辺は別売りのアクセサリーを使いましょうということで、FULRAブランドの革製の専用ケースなどが別売りで用意されている。

画質

IXY Digital Lの特徴は単にデザイン重視のお手軽カメラというイメージを覆す基本性能のレベルの高さで、特に画質は相当高いレベルにあると思う。小さめの1/2.5CCDで400万画素ならばノイジーな画像だろうという予断を持つけれども、実際はかなり細部に至るまで質が高くてISO50ならばノイズもほとんど目立たない。
レンズはF2.8の新開発40mm相当の単焦点でかなりの高屈折率ガラスを使っているようです。

この秋のベンチの写真をみると画質の高さは理解していただけると思う。


ISO50, F2.8  

暗部ノイズも少なくダイナミックレンジもわりと広く感じる。また解像感が非常に高い。(画像はレタッチしている)
ISO200以降はややノイジーになるのでISO100かできればISO50で常用したい。常用がISO50だと低すぎるのでは、とも思うけれどもこのクラスを使うときにちょっとフィルムカメラとは頭を切り替えねばならないことは、このクラスのカメラは焦点距離が6mm程度と極端に短いので回析の影響を受けやすいということです。これは昔の大きなネガのカメラは焦点距離が長いのでF64まで絞って良い画質を出していたということの裏返しといえる。
そのため絞った方が良いとは一概には言えなくて、絞りを開けやすい低感度が悪いとはいえなくなる。
ただ実写した限りではこのレンズは開放F2.8だと端がやや落ちるようで、像面全体での均質性はやはりF5.6位の方が高くなる。また下の紅葉の写真にあるように逆光での枝のエッジなどでデジタル特有の色にじみがやや大きく生じている。

もうひとつIXY Digital Lで興味深いのは絵作りの傾向です。

この木立の写真は非常にKissデジタルなどと共通の絵作りの傾向を感じさせるもので、いわゆる「DIGIC調」ともいえるタッチになっています。
デジタルでは最終的に画像処理エンジンで画像を作るわけなので、レンズやCCDの性質とともにこうしたDIGICのようなチップでも絵の傾向が変わるというのは面白いといえます。

画像自体はダイレクトプリントを意識したのかやや輪郭強調がかかっているので、それを色効果という機能でオフにすることが出来ます。この機能では発色を濃くしたり淡くしたり、セピアや白黒にしたりも可能です。

プリントにおいてはA4でも400万画素だと200-230dpi前後で出力できるため、コンパクトとしてはまずまずというところでピント面は悪くない。しかし、おなじ400万画素といってもEOS-1Dにはプリントにおいて大きく劣ります。この辺がCCDサイズが大きく効いてくるところでしょう。
またプリントにおいても逆光での被写体のエッジに出る色ずれはやや目立つ。



ISO50, F2.8

基本性能の高さを感じさせるIXY Digital Lのもうひとつの特徴はオート露出の正確さです。


ISO50, F2.8 

これは朝の斜光線が半逆光になっているなかなかむずかしいシチュエーションだけれども、ここでは露出補正無しでほぼ適正になっています。このようにIXY Digital Lはオートのままでかなり正確な露出を出すことができ、一昔前の写真界の言葉を借りると「よくあたる」露出計であるといえます。このため上のベンチでの写真のように表現的にあきらかに露出を変える意図を持たない限りはオードでかなり使えるカメラといえます。
これはシーン分析などの技術がきいているのでしょう。かえってこのクラスのほうが一眼レフのように像面とは別の露出素子を使うものより自由に露出などの計算も可能になってきたといえるかもしれません。

操作性

操作はスチル・動画・再生を切り替えるスイッチが基本で、デジタル一眼レフやPowerShotG3系にあるようにモードレスにはなっていない。またプログラムオートのみで絞り優先などの機能はない。
AFに関しても上記の露出と同様にAIAFによる測距点の選択もなかなか賢いといえます。またクイックAFという、いきなり全押しで簡略化されたAF計算でフォーカスをすることも可能です。またマクロもかなり強力なものでメモ用に使うにしても十分なものがあると思う。

液晶は小さいけれども視認性は悪くないと思う。
ただ一番の問題点は露出情報が撮影時にも再生時にも表示されないということで、ヒストグラムまで表示されるのに絞り値とシャッター速度が出ないことは少し不満です。
この辺もユーザー層からして露出というむずかしそうなイメージを隠そうという意図はあるかもしれないが、詳細表示と簡略表示が分けてあるのだから詳細モードでは表示して欲しかった。実用的にシャッター速度がわからないというというのは不便といえる。その代わりにコンパクトカメラでよくあるような手ぶれ警告のLEDが表示される。
小さくてファインダーに額をつけないためややホールディングが不安定になる。ただ片手でさっと撮れる事がこのクラスの利点なのであまり細かいところは気にしない、ということかもしれない。


このクラスのコンパクトデジタルは携帯のカメラと対比して取り上げられることも多くなるかもしれないが、小さくてスタイリッシュなデザイン、そして意外に高い基本性能のIXY Digital Lはわりと使えるカメラ、使いたいカメラに仕上がっていて携帯のカメラとは一線を画す事が出来たと思う。
値段も4万弱から3万台前半ということで求めやすくなっている。全体的にはオートでの完成度が高く上級者向けというよりはカジュアルユーザー向けだけれども、むしろズームがなくて単焦点だけという割り切りを思えば一眼レフユーザーのサブ機としてもなかなか良い選択ではないかと思う。

(2003/12/4)