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GR21  F3.5, 6群9枚, 30cm, 1/500, 117x64x26.5(38.5), 200g

GR21はリコーの28mmレンズ搭載の高級コンパクトカメラであるGR1シリーズのボディを流用して新設計の21mmF3.5レンズを搭載したコンパクトカメラです。
コンパクトカメラで超広角の21mmレンズを搭載して外付けに頼らない21mm対応の内蔵ファインダーとほぼ21mmをカバーするフラッシュも内蔵して200gというパッケージにまとめたことは特筆すべきことでしょう。TIPA2001を受賞しています。
2001年4月に発売されたが、現在は残念ながらリコーのフィルムカメラ撤退により生産が終了しています。

->詳細資料はリコーのウエブサイトを参照
ボディはGR1を踏襲していますが21mm対応のファインダーを組み込むためにやや背が高くなって重量もわずかに増えています。反面で大きくなったことを利用してシンクロソケットやケーブルレリーズの対応がされたのもコンパクトカメラとしてはユニークな点といえるでしょう。レンズは電源をオフにしても完全には沈胴せずにややかさばるけれどももともとが小さいのでさほど気にはなりません。
またGR1s/vではアダプターを介してフィルターを装着するようになっていますがGR21では標準でフィルターねじがあってフィルターをそのままつけることができます。フィルターは30.5mmでコンタックスT3/TvsII用のフィルターが使えますがケラレの問題はわかりません。またメタルフードも装着はできます。ちなみにローライ35も30.5mmです。
ケーブルレリーズは製品とともに入手困難となりましたが、社外品のUNのものがおそらく同じ製品です。
このように21mmをつけたことでマイナス面もあるけれども、それを逆に利用してプラスにしている設計には好感が持てるといえます。
ボディは縮緬風の表面処理がしてあり小さい割には高級感がありホールドもしやすくなっています。



GRシリーズの操作性の特徴は、他の高級コンパクトに比較してユーザーをハイアマ・ベテランと仮定してそうした層が使いやすくできていることといえるでしょう。
まずポジ使用を前提として露出補正が単独のダイヤルになっているということ、プログラムモードのほかに絞り優先モードの単独のダイヤルがあること、フラッシュの禁止が独立のハードスイッチになって常にオフがしやすく強制発光もしやすいということ、DXのほかにISO設定のマニュアル変更ができて増感がしやすいこと、AEBの装備、フォーカスモードに固定距離モードがあることなど多種あります。高級コンパクトといえ他のカメラが露出補正などを隠したがったり、いちいちフラッシュの発光をオフにしたりしなければならないのに比べると大きな違いといえるでしょう。


ただAEに関しては露出結果がリバーサルでのあがりを見るとややオーバー目(+1/2ほど)になるのは残念な気がします。これは写真工業のGR1vのAEテストでもおなじ結果なので意図的なものと思われます。これはせっかくポジ使用を意識した操作系になっているのだからストレートに出してほしかったところです。ただGR21については超広角で空の影響を受けやすいという点からすると致しかたないかもしれません。
それとGRシリーズのAEでもうひとつ特徴的なのはプログラム線図がF4を基点にしているということである。これは低輝度域でもあっさり開放にしないでF4で粘るということなのでGR21はともかくGR1では注意すべきところだろう。

AFに関してはフォーカスがワイドとスポットで選べるのは面白い点といえるでしょう。
最短の30cmくらいでもわりと正確に測距できますが、パッシブゆえに縦位置と横位置で検知できたりできなかったりということがあります。これはパララックスのせいかもしれません。
また低輝度では赤いAF補助光も投光されます。

ファインダーが外付けでなく内蔵ファインダーで21mmの視野が得られることが大きな利点の一つなので、ファインダーでやや無理をしているのは仕方の無いことかもしれません。ただわりと検討している方だと思います。
個人的には視度補正がないのが残念なところの一つで、GR1ではサービスセンターにて視度調整ができるそうですが、GR21ではさすがにできないということです。
またレンズがやや大きいし視野が広いのでファインダーの下方にレンズが見えて視野がややケラレてしまいます。
これはフードをつけるとやや大きい問題となります。
パララックス補正枠が近接域でのみ表示されるのはわかりやすいことといえるでしょう。

モードをSNAP(2m固定)にしたときにシャッターラグが最小になるのは良い点といえます。
巻上げがやや遅いかもしれませんが、AEBを使わない限りはそれほどは気になりません。ただフィルム装填がプリワインディングなためフィルムを入れたときにやや時間がかかるので注意しなければなりません。



SNAPモード

なんといっても高級コンパクトカメラはレンズ抜きには語れません。
ミニルックスのSummarit F2.4やCONTAX TのSonnar 38mmのように一眼レフのプロ用レンズでさえ凌駕する写りというのはゴリアテに伍するダビデのように気持ちの良いものです。
このGR21にはコンパクトカメラの常識を覆す21mmの超広角レンズが搭載されています。画角90度のこのクラスには現代レンズを代表するGマウントのビオゴン21mmF2.8や伝説的なRFコンタックスマウントのビオゴン21mmF4.5、またはMライカファン垂涎のスーパーアンギュロン21mmF3.4といったレンジファインダー系列のスーパースターから、一眼レフでもヤシコンのディスタゴン21mmF2.8のような超高性能レンズまでたくさんの新旧の名レンズがあります。


交錯 GR21,Delta400

このGR21も元はライカLマウント用のレンズとして発売されたものが搭載されています。
シャープネスが高くて発色に優れているのは現代レンズとしては当たり前のことですが、GR21が特徴的なのはその画質の全域での均質性です。撮影距離が最短の30cmでも無限でも、そして中央部から周辺まで均等な高画質であり画面の四隅でさえ画質が極端に低下することはありません。
歪曲もほとんどありませんし、超広角なのにボケ味もスムーズで自然な奥行きを感じます。
これらが作り出す絵は90度もの画角でありながらまるでもっと大きなプリントからトリミングされたような不思議な感覚を受けます。

欠点としてはややフレアに弱いということがあります。また場合によっては周辺が落ちることはあるようですが、これはレンズ構成上仕方ないのでしょう。
GR21のレンズを見てみると二枚目と三枚目を除くとGR28と同じ凹凸のレンズの配置なので、細かいところは違うとはいえやはりGR28から発展した対称型の一種と言うことなんでしょう。
レトロでない21mmのレンズというとさきのビオゴンタイプが思い浮かびますが、このGRレンズはこのクラスにはめずらしく第一レンズの物側に凹面がくる(前から見るとレンズ前面がへこんでいる)タイプです。このタイプは90年代初頭のズミルックスM35mm Asphericalが嚆矢だったと思いますが、現在では広く使われていて35mmでは他にズミクロンM35ASPHやヘキサーM35/F2,コシナフォクトレンダー35/1.7の新しいレンズ群があります。しかし21mm(約90度)では類例を知りません。そこに挑戦したところが全域の高性能に寄与しているのかもしれません。

もともと国産レンズは21mmでなく20mmが90度クラス単焦点のスタンダードだったと思いますが、あえて21という数字にこだわったのは21世紀の初頭に発売されたというこだわりがあったのかもしれません。
このときにほぼ同時にT3やクラッセなども発売されて一時的に高級コンパクトカメラが活況を呈したのですが、いまは活力がありません。デジタルは一眼レフについてはすばらしいレベルに達しましたが、コンパクトについてはこれを持って写真を撮りたいと思わせるようなカメラはいまだありません。
コンパクトの世界においてこそフィルムカメラが活きてくるのではないでしょうか。

(2003/6/29)