配布元が注意してやっておけば良いことをせずに配布してしまい、配布を受けた方がそれぞれ作業をするようでは、
配布先の数によっては大きな損失!
上司に「これをExcelで表にしてほしい」と頼まれました。
こんなシチュエーションで考えてみて下さい。
「表を作る」は最低条件です。
基幹システムががあって、「表」にする元データがCSV等で出力できるなら、それをExcelで開けば最低限の「表」にはなります。
一覧表なら1行目あたりに項目の見出しを作って、見出しは中央寄せにして文字に色を付けるくらいはするでしょうが、それで「完成」でしょうか。
もしかしたら貴方の技量や配慮の程度を計っているのかも知れません。
新入社員だから、とか初心者だから、とか「言い訳」はあるのかも知れませんが、WindowsやExcelが日本国内でも普及して20年以上も経つわけです。
企業内では「使えて当たり前」になってきているのです。
配属部署に配備された貴方がいまさらこの程度のことの「未経験」をできない理由に挙げるわけにもいかないでしょう。
下記の「悪い例」は結構基本的なことなので皆さんがこれらに配慮できているのかを考えてみて下さい。
[悪い例]
- シート名が「Sheet1」のままで、しかも「Sheet2」以降の空シートが残っている。
-
Excelは、デフォルトの新規ブックのシート数は「3」になっています。
つまり、新規作成すると1シートしか必要がなくても「Sheet2」「Sheet3」が付いてくるのです。
これらを削除しないで配布してしまうと、配布先で見る方が「Sheet2」「Sheet3」にもデータがあるのかと開いて見るという不毛な作業をすることになります。
新規作成でなくても他の担当者が以前に作ったものを引用利用するとしても、不要な「Sheet2」「Sheet3」が付いたままで配布されるとしたら、
配布するのが貴方だったら、配布先の方に不毛な作業をさせるのは「前任者が悪い」とは言えません。
引用したかどうかは貴方の作業段階のことであって、配布先の方から見れば貴方が作成したExcelワークブックはこういうものなのだという評価を受けるだけなのです。
また、シート名は「Sheet1」のままにはしないで、その表の日本語タイトルにするようにした方が良いでしょう。
- 件数の多い表なのに、下へスクロールさせると見出しが画面の上に消えてしまう。
-
Excelはシート全体が「データシート」なのですが、実際にデザインする場合は先頭の1、2行を「見出し」として扱うことが多くあります。
この場合は作成者が「見出し」と「データ」の区別を明確にし、さらに「見出し」はいつでも見られるようにしなければなりません。
これを設定するのは「ウィンドウ枠の固定」と言います。「見出し行」だけでなく「見出し列」も合わせて設定できます。
たとえば「社員マスタ一覧」といったもので住所、学歴、職歴などの横に長いシートの場合に右へスクロールさせた時に「社員コード」「氏名」が左へ消えてしまわないように固定させることができます。
- 印刷のページ設定が何もされていない。(横に長い表なのに、印刷するとA4縦で印刷される)
-
Excelでは、前項のような画面の設定と、印刷の設定は全く別になっています。
つまり、画面上は見やすいように整えたとしても印刷に関する設定を行なわないと、単にA4縦で罫線も引かれずに1ページに収まらない領域は別ページに印刷されます。
前項の「ウィンドウ枠の固定」の設定を行なっても、これは印刷には反映されないので縦方向2ページ目以降には見出しが付かない状態になります。
さらに横にはみ出した部分も別ページになってしまうので、「社員マスタ一覧」では住所、学歴等が誰のものか判らないということにもなってしまいます。
当然ながら、横に長い表をA4縦で印刷するというのがそもそもおかしいわけですが、これがデフォルトです。
用紙サイズや配置の縦横、場合によっては縮小率など、さらには枠線印刷などを含めて「ページ設定」で設定して下さい。
- 印刷したら、2頁目から見出しがなくなってしまう。
-
前項と重複しますが、印刷する場合の指定で画面での「ウィンドウ枠の固定」に当たるのが「ページ設定」の「印刷タイトル」です。
画面の「ウィンドウ枠の固定」と違うのは、途中行、途中列の指定も可能なことです。
たとえば、複数ページに渡ることが明確な縦に長い表で、途中行に見出しを設定すると1ページ目だけ見出しの上にヘッダ項目を印刷させるということができるわけです。
これはめったにないことですので、通常は「ウィンドウ枠の固定」と同様に先頭行、または先頭列を「印刷タイトル」に指定して下さい。複数行、複数列での設定も行なえます。
- 他の表にリンクが貼られているのに、受け取った側の環境では更新できない。
-
結構「ベテラン」の方がこういうことをやっているケースが時々見られます。
現在のネットワーク環境をよく理解した上でやっているなら外部参照を使ったままでもこの問題は起こらないのですが、問題になるのは「理解不足」と「自分がうまくいけば他も問題ない」という誤解です。
この問題は、作成したExcelワークブックをメールで配信したり、社内のグループウェアの掲示板もしくは共有フォルダに公開した場合に発生します。
何が問題なのかというと、作成者は複数のExcelワークブックを開いて目的となるExcelワークブックを作成しているのでしょうが、
その目的ブックに張られている外部参照式の参照先が配布先では参照できないということなのです。
作成者は開いて作業しているので気がつかないのかも知れませんが、外部参照式は保存してしまうと絶対パスで書き込まれます。
これがローカルディスク内であったり、ネットワークドライブだったりすると、ブックの配布先では参照エラー(#REF)になってしまうわけです。
さらにこれが「名前の定義」で使われていると、参照形式などの設定変更でもエラーになってしまうなど「迷惑千万」の状態になってしまいます。
- 大きいフォントで作ってあり、縮小して表示してある。
-
これは、CPU、GPUの負荷になるだけです。画面のスクロール動作などにも影響します。
現在ではCPU、GPUの性能も上がっているのでこれがレスポンス等で影響することは少ないかも知れませんが、そのままにしているのは単に作り手の「無精」とも言えるでしょう。
Excelは、デフォルトのフォントサイズが「11」なのですが、これは十数年前、おそらく初代の頃から変わっていないとおもいます。手書きでも書ける小さい文字程度です。
ですが、画面の精細度もレーザープリンタ等による印刷の精細度も向上していて、「9」くらいでも充分な状態なのです。
これをデフォルトの「11」のままで表を作成して「ズーム」で「80%」とか「75%」とかに下げているExcelワークブックも時々見かけます。
印刷の「ページ設定」でも「拡大/縮小」を使って倍率を下げているなら、わざわざ変倍させていることになり、フォントサイズを最初から下げておけば無駄がないということになります。
- 開いて見ると、改ページプレビュー状態になっている。
-
「改ページプレビュー」のまま保存させればそうなるのですが、どうしてそうするのかは良く理解できません。Word信者の方なのでしょうか。
Officeのような文書ツールは当初は印刷目的だったのかも知れませんが、最近ではB4横、A3横クラスでも
デスクトップ機なら画面で表示できてしまうので、いちいち印刷しないということが多くなってきています。一過性の文書ならなおさらそうです。
まさか、印刷の「ページ設定」を「ちゃんとやってあります」と誇示したいというわけでもないと思いますが....
- 桁数の決まった英数字のコードの列が「MS Pゴシック」等なので、行によって幅がまちまちに表示される。
-
Excelは、デフォルトのフォントが「MS Pゴシック」や「游ゴシック」です。
そもそも「MS ゴシック」と「MS Pゴシック」の違いを理解しないで使っている人は結構います。知らない人の方が多いのかも知れません。
「P」が付くのは「プロポーショナルフォント」だということです。「プロポーショナルフォント」は「可変幅フォント」ということであり、文章を美しく見せるためのものなのです。
ところが、これをデータ一覧的な表示に用いる場合は、逆に「見にくさ」を提供してしまう場合もあるということを理解しておいて下さい。
「MS Pゴシック」であっても数字に関しては固定幅で表現されるようになっていて、Excelシートでは「金額」など右詰めで並べた列について縦に桁位置が揃って表示されるようになっています。
ですが、「商品コード」「プロジェクトコード」などで英数字混在の文字列だと、桁数が統一されているものであっても全体の幅が不統一になって見にくくなってしまいます。
このような場合は「MS ゴシック」に変更すれば全体の幅が統一されて不自然さがなくなる上、誤って桁数を変えてしまうと一目で見つけられるようになります。
挙げていくときりがないのですが....
これらは「気配りのない例」です。
何人にあるいはどういった人に配付するか判りませんが、配付を受けた人それぞれがこれらの調整作業を行なうことを考えると不効率だと言えます。面倒くさいかも知れませんが、配付元の人が1回やっておけば済む作業です。
1回きりだから細かい気遣いはしなくても良いと思っても、結局、 その表を後で別の表に転用するようなことも発生します。
貴方の後輩が貴方のドキュメントを転用元にして作成したところが、上記のような問題点を指摘されてしまうとしたらどうでしょうか。
なお、これらの評価材料についての判断は人によって異なるのも事実です。
ですから、ここの挙げている項目についてはその理由説明を付けて挙げてあります。
戻る
先頭に戻る
ページ設定は必ず行なう。
個人の一時利用(例えば、縦横合計の数字だけが欲しいだけなど)を除けば、印刷を全く考えなくて良いことはほとんどないはずです。
用紙、ヘッダ、フッタ、見出し行固定(行のタイトル、列のタイトル)の処理、枠線などを設定しましょう。
(当然、画面の方も見出し行は「ウィンドウ枠固定」にします)
他人の表の転用で、元が設定されていないから「私もやらない」のもおかしいです。
印刷プレビューで余白を調節
印刷のページ設定が済んだら、印刷プレビューで印刷イメージを確認します。
ここで、「余白」ボタンをクリックして余白を枠をドラッグして調整します。
その他、次の点に注意して下さい。
- シートタブに名前を付ける。
- 100%で表示・印刷できるのが原則。
- 行数が固定しないシートは罫線を引かない。
- セルの書式は「標準」にままにしない。
→一覧表は列単位で書式設定した後に見出しだけ変更。
「配布時のポイント」で具体的に説明しています。