狂気の連鎖


 ・「サークルの先輩、鶴岡さんへ宛てて書いた手紙」をテレビドラマ『相棒』風に脚色してみました。
 ・前半部分、大幅に加筆しました('10/08)
 ・後半部分、大幅に修正・加筆しました('10/11)
 

警視庁特命係の部屋で
 いつも通り、杉下は紅茶を飲み、神戸はパソコンをいじっている。そこへ捜査一課の伊丹が訪ねてくる。
伊丹「(嫌味な調子で)特命係のお二人さんは今日もお暇そうですね。」
神戸「伊丹さん、珍しいですね。何の御用ですか」
伊丹「ちょっと、手伝って欲しい件があるんだ、よっ」
神戸「また珍しい」
伊丹「近頃、凶悪なヤマが立て続けに起って、猫の手も借りたいほど忙しいんだ。
猫の手を借りても特命の手は借りない、と言いたいところだが
あいにく、猫には手が無くてな」
神戸「何の事件ですか」
伊丹「『真美ちゃん事件』って知ってるよな」
神戸「ありましたね、そんな事件。ずっと昔に」
杉下「今から12年前ですね。若東区尾高町に住む、間島真美ちゃん当時14歳が
何者かに誘拐された事件です」
神戸「確か、深夜、コンビニに行ったのを最後に消息が分からなく
なっているんですよね」
杉下「真美ちゃんは、深夜1時頃、自宅の隣町にあるコンビニに
買い物に行きました。防犯カメラに姿が写っていたそうです。
そして忽然と姿を消し、翌日には家族は警察に捜索願を出しました。
誘拐事件として捜査されましたが未解決のままです」
伊丹「あの事件では随分とマスコミに叩かれてな」
杉下「当初、真美ちゃんが家出した可能性もあると、警察は
なかなか本気で動きませんでした。家族は家出をする理由など一切ないと
訴えていたのに。結局、公開捜査に踏み切ったのは事件が起きた2週間後でしたが
全く手がかりも無く未解決のまま。初動捜査の遅れが犯人を検挙できなかった
原因だと、新聞・テレビで随分と騒がれました」
神戸「でも、なんで12年も前の事件を今頃? 誘拐事件の時効はもう過ぎて
いますよ」
伊丹「真美ちゃんが殺されている可能性があるというんで、誘拐殺人で
洗い直せって言うんだよ。刑事部長殿が」
神戸「内村さんが?」
杉下「あの当時、内村刑事部長は、事件を担当した若東署の署長でした」
伊丹「そう。あの事件でマスコミから猛バッシングを受けたせいで
部長殿は出世コースからはずれたというのが、もっぱらの噂だ。
自分を出世コースからはずした奴らの鼻をいつか明かしたいと、
今でも思っているんだろうな。あの粘着メガネ下駄!」
神戸「で、とりあえず何をすればいいんですか」
伊丹「こいつを調べて欲しい(と言って男の顔写真を一枚差し出す)
北川広康、35歳」
神戸「何でこの男を?」
伊丹「事件が起こった当時、例のコンビニのある蔵内町に住んでいたんだよ。
調べてみると、こいつは夜中にうろつく癖があるようでな」
神戸「(写真を見ながら)へえ、北川ねえ。見たところ、おとなしそうな
男ですが。ほかには?」
伊丹「事件があった当時、つまり北川が大学生だった時、付き合っていたという彼女から
話を聞くことができたんだよ。真面目そうな男だと思って付き合い始めたが、実は
大違い。まあ、悪の限りを尽くしたとんでもない奴だったんだとよ」
神戸「へえ、人は見かけに寄らないというのか。じゃあ、彼女に会って、もっと詳しく
話を聞きますか?」
伊丹「ところが彼女は、これ以上北川のことを思い出すのは辛いと嫌がるんだよ。
彼女をよく知っている男性がいる。彼女が大学院へ行っていた時
同じ研究室にいた海野という男だ。海野に会う前に、目のチッコイ女、イヤ、
一課のアイドル・福嶋女史から話を聞いてくれないか?
北川の捜査の班長なんだ」

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警視庁の一室で

杉下「北川さんが付き合っていたのは、小山順子さんという女性ですね」
一課の女性捜査員・福嶋「はい、ふたりは大学のサークルの同期です。
北川は留年していて大学5年の時、小山さんは大学院1年の時に付き合い始めて、
4年間ほどの関係でした」
杉下「二人の関係はどうだったのですか」
福嶋「北川は落語が好きで、よく二人で新宿紀伊國屋の落語会や
末広亭へよく行ったそうです。また、北川は地図を収集するのが
趣味で、よく本屋の地図売り場で探し物をしていたとのことです」
杉下「なるほど、北川さんの趣味は落語を聴くことと
地図集めだそうですね」
福嶋「小山さんも最初は北川は優しい男だと思ったものの
付き合い始めてみると大違い。暴力をふるう、女癖は悪い、金をせびる、
窃盗の手伝いをさせられたこともあるそうです。
そういう奴なので、一課もマークし始めたのです。間違いなく本ボシです」
(福嶋、小さな目を吊り上げて、興奮気味に語る)
神戸「本人に事情聴取した方が手っ取り早いんじゃないですか」
福嶋「あくまで内偵です。小山さんの話しでは、北川という男は口がうまくて
聴取でボロを出すような人物ではないそうですから。24時間徹底的に
見張って、いつか悪事をしでかした時、本性を出した時に取っ捕まえるしか
ありません」
杉下「北川さんが小山さんに出したラブレターというのがあるそうですね」
神戸「ラブレターとは、また随分と古風な」
福嶋「筆跡からして北川の書いたものに間違いありません。
これが小山さんと北川が付き合うようになったきっかけです。
小山さんの不幸の始まりというわけです」
(福嶋、再び小さな目を吊り上げ、北川という男が憎くて憎くて仕方ない
というような表情)
杉下「ちょっと見せてください。・・・『あなたの事を気にしています。
JR埼京線武蔵浦和7番線ホーム、毎週水曜日10時34分発新宿行きの電車の
4号車乗車口で待っています』なるほど・・・。これが出されたのが1992年、
小山さんが大学院へ行っていた時ですか・・・」

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喫茶店で杉下と神戸は、北川のサークルでの同期生であった海野と話す。

神戸「海野さん、あなたは北川さんとサークルの同期なのですね」
海野「はい、大学横断的なサークルで、私は峰北大、北川は九重大でした。北川は
2年でサークルを辞めてしまいましたが」
杉下「そして、小山さんは速星大、小山さんは大学を卒業して
あなたと同じ峰北大の大学院に進学したのですね」
海野「はい、同じ学科の同じ研究室でした」
神戸「つまり、あなたと小山さんはつきあっていた」
海野「つきあっていたというか・・・、彼女と親しくなったのは
大学4年の時です。一緒に食事をしたり買い物をしたりする仲に
なりました。彼女が私と同じ峰北の大学院へ行く、と言い出したので
彼女は私のことを好きなのだな、と思いました」
杉下「で、あなたは」
海野「はい、私も十分その気でした。遠くない将来、彼女とは
結婚するものだと思っていました。それが大学院の1年だった時のある日、
突然、彼女が北川と付き合いはじめたと言い出したんです」
神戸「それを聴いてあなたはどう思いましたか」
海野「はっきり言ってショックでした。彼女はとても嬉しそうでした。
一緒にサッカーの試合を観にいったとよく言っていました」
神戸「サッカー?」
海野「はい、一緒にゼイシャル桶川のサポーターをやってたって言って
ました。北川が新洋電機の桶川の工場に勤めているっていうんで」
神戸「桶川の新洋電機というとゼイシャル桶川の前身ですよね」
杉下「そして3年後、あなたは別の女性と結婚することになったのですね」
海野「はい、小山とは研究室でいつも一緒でしたが、彼女が
いつも北川との惚気ばなしをするのです。それで当て付けといったら
なんですが、研究室の別の女性と付き合うようになり結婚する
ことになりました」
杉下「その結婚式には小山さんと北川さんも招待したのですね」
海野「はい、北川とは彼がサークルを辞めて以来会ったことが
なかったので久々に会いたいと思って招待しました。招待状は
小山さんを通じて渡してくれるよう頼みました。ところが北川
は結婚式には姿を現しませんでした。小山さんになぜ北川は来ないかと聴いたのです。
そうしたらワーッと騒ぎ出したのです。半狂乱になって。走り回るやら
物を壊すやら・・・」
神戸「そうして小山さんは神経科の医者に通うようになった」
海野「はい、北川は平気でウソをついたり人を裏切るような
奴だったのです。小山さんには絶えず暴力をふるっていたんです。
犯罪の片棒担ぎ見たいなこともさせられたそうです。それで彼女の心は
蝕まれていったのです。私と北川とは
サークルで2年間一緒にやっていました。穏健で真面目な男だと
思っていましたけどね・・・」
杉下「あなたは、北川さんとはずっと会ってないのですね」
海野「はい、彼がサークルを辞めて以来、会ったことも電話で話したことも
ありません」

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 杉下と神戸、歩きながら

神戸「やっぱり、北川って一見、大人しそうで、実はとんでもない
奴なんですね」
杉下「一つ、気になることがあります、北川さんが学校を卒業して勤めたのは
藤下工産でしたよね」
神戸「はい、でも、小山さんには、新洋電機に勤めていると
ウソを言っていたのですね」
杉下「それは、なぜでしょう?」
神戸「それは・・・、その方がかっこよかったんじゃ、
ありませんか? 新洋電機っていえば、サッカーの名門でしたから」
杉下「果たして、そうなんでしょうか? どうも僕には気になります。
北川さんのかつての勤務先は、埼玉の桶川でしたね。電車で行って見ましょうか」

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桶川の駅前で

神戸「タクシーきませんね、バスはあるのかな」
バス停の時刻表を見る
「2時間先まで無い! 工業地帯のバスは昼間は少ないんですね」
杉下、バスの時刻表を覗き込む。
「1つ手前『新洋電機』止まりのバスなら10分後にあります。
杉下、地図を見ながら 
「北川さんの勤めていた藤下工産の工場はその隣ですね。
新洋電機のバス停から、歩いて5分ほどでいけるでしょう」
神戸「『新洋電機』って北川が彼女であった小山さんに勤めているって
ウソを言っていた会社ですよね。隣だったんですね」
杉下、少し考える。
「神戸君、北川さんが藤下工産に勤めていたのは
いつのことですか」
「えーと」神戸、資料を探す
神戸「あ、はい、1992年から1994年までです」
杉下「バスと電車の時間を調べる必要が有りますね。
鉄道の事ならあの人に聞いてみましょう」

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警察署の一室にて

米沢「これが1992年から1994年の間の電車の時刻表全部です」
神戸「図書館にあったのですか」
米沢「いえ、私の鉄道仲間で過去50年間の時刻表を全部持っている
男がいるんです。そいつから借りてきました。それとバスの時刻表は
バス会社の倉庫の中にあったということで取り寄せました」
杉下「藤下工産の始業時間は8時半でしたね」
米沢、バスの時刻表を机に広げる。これを見ながら
米沢「これに間に合うバスというと、桶川駅8時2分発」
杉下、電車の時刻表を見ながら
「このバスには7時57分に駅に着く電車に乗らないと間に合いませんね。
米沢さん、新洋電機止まりのバスはありませんか」
米沢「あ、はいあります。8時11分に」
杉下、電車の時刻表を見ながら
「そのバスだと、1本後の8時6分着の電車でも大丈夫です。
駅から新洋電機までバスで8分。そこから藤下工産まで
歩いて5分、始業時間には十分間に合います」


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真実

杉下「分かりました。全ては小山さんのウソから始まったのです」
神戸「えっ?」
杉下「北川さんは、学生の時も勤めていた時も住んでいる場所は
一緒ですね」
神戸「はい、若東区蔵内町です」
杉下「当然使っている駅も一緒」
神戸「はい」
杉下「小山さんはサークルで一緒だった、北川さんに恋愛感情を
抱いていた。しかし、北川さんはサークルを2年で辞めてしまった。
その代償として、小山さんは別の男性、海野さんと親しくなった。
海野さんと親しくなり、一緒の大学の一緒の研究室へ通った。
しかし実は小山さんは北川さんのことを忘れられなかった。
サークル時代、北川さんは小山さんに自分がどこに住んでいるか
話していた。サークルの同期生ですから、そのぐらいの会話があっても
不思議ではありません。それを頼りに、小山さんは
北川さんの住まいの最寄駅に立っていた。そうして見つけた。通勤途中の
北川さんを。小山はそっと北川さんの後を付けた。
北川さんは桶川の駅で降り、バスに乗り換えた。そうして新洋電機の
バス停で降りた。だから、小山さんは北川さんが新洋電機へ勤めているものと
勘違いしたのです」
神戸「しかし、北川が勤めているのは藤下工産ですよね。
どうして新洋電機行きのバスに乗ったのですか」
杉下「たまたま寝坊かなんかして、いつもより乗る電車が1本遅くなったの
でしょう。1本遅い電車でも新洋電機行きのバスに乗って、
終点から5分ほど歩けば充分8時半の始業時間に間に合います」
神戸「小山という女は北川さんをストーカーしていたんだ。
二人が付き合っていたというのも、そもそもウソ。
北川さんが暴力をふるうとか、とんでもない奴だという話も当然、デタラメ・・・
えっ、でも北川が女に出したラブレターがあるでしょう」
杉下「その点もほぼ察しがついてます。もう一点、米沢さんに調べてもらいましょう」


*******************
警視庁特命係の部屋で
杉下座りながら、いつもの通り紅茶を片手に、
神戸は立って、相変わらずヒマそうにしながら会話をする。
神戸「結局、北川さんへの捜査は打ち切りだそうですね」
杉下「20人体制で1年間捜査しました。24時間北川さんを
監視していましたが全ては無駄骨でした。捜査に使った経費は
1億円を下らないでしょう。全ては税金です」
神戸「一人の女性のデタラメにさんざん振り回されてしまいましたね。
まあ、その女の言う事を信じる方も信じる方なんですが」
そこへ捜査一課の伊丹が駆け込んでくる。
伊丹「お忙しそうですね、お二人さん。
(真剣な表情で)ちょっと頼みたいことがあるんだ」
神戸「なんですか?」
伊丹「特命係でないと出来ないことだ」
神戸「は?」
伊丹「失踪事件だよ、よりによって警察官の」
神戸「なんという人です?」
伊丹「福嶋女史だよ。うちの課のあの目のチッコイ女!」
杉下「なんでまた?」
伊丹「3日前、課長から北川への捜査中止命令が出たんだよ。
そしたら女史は、『いや、北川は絶対にホシだ』って言い張って
課長と大喧嘩。そしてプイと部屋を出たっきり行方不明
なんだよ。自宅にもいないし携帯にも繋がらない」
杉下、少し考えて、バッと立ち上がる。
杉下「神戸くん、福嶋女史の行くところというと、あそこしかあり得ません!
すぐ行きましょう」
杉下、コートをバッと着て、特命係の部屋を出る。
唖然とした神戸も後を付いてゆく


*******************
雨の降りしきる中、とある場所の路上
杉下と神戸、足早に歩いている。
神戸「それにしてもひどい降りですね・・・。ここはどこです」
杉下「北川さんの自宅のすぐそばです。・・・あっ、いました!」
雨の中、傘も差さずに立っている、ベージュ色のコートを着た目のチッコイ女。
神戸「福嶋さん!」
福嶋、神戸の呼び掛けに気が付かず、一点をジッと凝視している。
神戸「福嶋さん!、福嶋さん!」
神戸、福嶋の肩を何度も揺する。
福嶋、神戸の方を見ず、一点を凝視したまま
福嶋「あそこが極悪人、北川の自宅です・・・。絶対に捕まえてやる!」
福嶋、白目を剥き、身体がワナワナと震え出す。
神戸「北川さんは、悪いことをするような人じゃありませんよ」
杉下「福嶋さん、全てはあなたの思い違いです。小山という女と北川さんが
付き合っていたというのが、そもそもウソなのです。
そして小山という女は、事もあろうに北川さんをストーカーしていたのです」
福嶋「私は、一年間、あいつのことをずっと監視していました。
あいつのことなら何でも知っています。そんなのデタラメです」
杉下「デタラメを言っていたのは、小山という女なんですよ。
そのデタラメをあなた方捜査班は信じ込まされていた」
福嶋「違う! 北川が出したラブレター、あんた方も見たでしょう!」
杉下「小山という女が北川さんをストーカーしたのは1回ではないのです。
何年もの間、恒常的にストーカーしてたのです。だからこそ、北川さんが落語や地図集めが
趣味だということを知っていたのです。北川さんはあるとき、自分を小山さんが
ストーカーしていることに気付いた。昔、一緒のサークルで活動していた
小山のことを北川さんは心配した。『二人でちゃんと会って、冷静な気持ちで
話し合おう、そうしてストーカーの狂気から脱してもらいたい』と、
それであの手紙を書いたのです。指定日時を1回限りにせず『毎週水曜日』として
何度も会うチャンスを作った、北川さんなりの心配りなのですね」
神戸「北川は見た目どおり優しい男だったんですね」
福嶋「違う! それこそデタラメだ!」
杉下「証拠はあります。そのラブレターとやらが届いたのはいつのことですか?」
福嶋「1992年の10月だ!」
杉下「あの手紙には『埼京線・武蔵浦和駅10時34分発の新宿行きの電車』
と書かれていますね」
福嶋「それがどうした」
杉下「確認のため米沢さんに頼んで、当時の時刻表を調べてもらいました。
1992年の10月当時のダイヤでは、10時34分発の新宿行きというのが無いんですよ。
10時34分という電車が走るようになるのは1998年のダイヤ改正からです。
あの手紙は、1992年に出した手紙ということは、ありえないのです。
一見ラブレターのように見えますが、実は1998年以降に出された
小山さんを気遣う手紙だったのですね」
神戸「分かりましたか。もう帰りましょう」
福嶋「(絶叫して)いや、北川は絶対に凶悪犯だ。絶対にそのうち本性を見せる。
その現場を取り押さえてみせる」
神戸「何言っているんです・・・」
杉下「神戸君、何を言っても無駄です。彼女は北川さんが凶悪犯だという
暗示にかかっているのです。おそらくこの暗示が解けることは無いでしょう」
神戸は、福嶋に傘を渡そうとするが、福嶋はそれを打ち捨てる。
降りしきる雨の中、福嶋はじっと立ち尽くし、北川の自宅の方を見ている。
杉下と神戸は、福嶋から離れてゆく。


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 杉下と神戸、雨の中二人で歩きながら
神戸「あれじゃ、まるでストーカーですね」
杉下「心理的にはストーカーそのものでしょう」
神戸「『ストーカー規制法』では、『愛情もしくは愛情が満たされない
ことから発する怨恨』からつきまとったり、イヤガラセをしたりする行為と
規定しています。福嶋さんの場合は、最初から北川さんを憎しみべき人と思って
いた訳ですから、規制法は適用されません」
杉下「マザー・テレサの言葉に『“愛”の反対語は“憎しみ”ではなく“無関心”』
というのがあります。『愛』と『憎しみ』は対極にあるのではなく
相手に対して『執着』するということで通じ合っているのです。
小山さんは北川さんに対する『愛』という執着から狂気に転じた。
福嶋さんは北川さんへの『憎しみ』という執着から狂気に転じた。
『狂気』というのは連鎖するものなのかも知れませんねぇ」


(終わり)

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