憲法を変えて戦争に行こう

 いきなりぶっそうなタイトルで恐縮だ。
でもしかたない。選挙で国民が小泉自民党を大勝させたのだから、という意味かというと、そうではない。
 実は岩波ブックレットの一冊。本の名前なのだ。よく見ると表紙一面に広がっている青い大きな文字の「憲法を変えて戦争へ行こう」の下に小さく、これも青字で「という世の中にしないための18人の発言」と書かれている。

 自民党が改憲案を明らかにしたが、改憲の中心課題はなんと言っても9条問題につきる。  

9条を変えるか変えないか、軍隊を持つと書くか書かないかがポイント。そうした観点でこの本は編まれている。

 もとろん、タイトルの通り、9条を変えて戦争に行こうという世の中にはしたくない、すべきでないと考える人たちが文章を寄せているのだ。

 軽く読めて、その内容はきわめて説得的。ぜひ一読をお勧めする。

 トップバッターはペシャワール会の現地代表を務める中村哲医師。アフガン北東部での医療に従事してきた彼は、日本人だから命拾いしてきたのは9条があったおかげという。そして、「軍隊を派兵できる普通の国になるべきだ」という意見を、「そんなこと言うのは平和ボケした、戦争を知らない人たちの意見なのでは」と一刀両断。そして「改憲したい、という人々は、戦争の実態を体験していない人なのではないか」とたたみかける。

 「理想だけではやっていけない、ちゃんと現実を見なければ、と言いますが、それこそが平和ボケの最たるものです。それは、マンガや空想の世界でしか人の生死の実感を持てない、想像力や理想を欠いた人の言うことです」と手厳しい。

 しかし、アフガンの実態をいやというほど知っている、体験してきた氏の言うことだけに説得力があるではないか。はたしてこの意見に反論できる人はいるのだろうか。

 巻頭の中村医師の文章を少し紹介しただけで、このブックレットの本質はおわかりと思うから、引用はこれくらいにして、執筆者の氏名だけ紹介しておきたい。

 美輪明宏、香山リカ、吉永小百合、姜尚中、松本侑子、井筒和幸、辛酸なめ子、ピーコ、猿谷要、井上ひさし、半藤一利、森永卓郎、渡部えり子、黒柳徹子、品川正治。そして、詩と絵のページには、木村裕一の詩に田島征三が絵を描いている。

 500円硬貨ひとつで買える本だ。あなたもぜひ。この本の表紙が赤色の文字になり、そして、「という世の中にしないための18人の発言」の文字が消えてしまわないようにするために。その意味はあなたが書店でこの本を手に取ったら、わかってくれるはず。

(2005.11.6)