東京ドームのミスターF's
2000本安打達成。そして引退報告の日。

2007 5/18 田中幸雄、通算2000本安打達成! (5月17日/対楽天イーグルス戦/2打席目/投手山村/東京ドーム)

四回裏、第二打席。打球が一二塁間を抜けた歓喜の瞬間。
前日に「残り1本」となった時点で、今日絶対出ると思った。東京ドームでの試合なのも、神様のお導き。この試合に行かなくてどうする! というわけで内野自由席。ライトポール際。二打席目のライト前ヒット、ほんとにもう、打球が俺んとこに向けて飛んで来たよ。泣けるね。80年代後半から90年代、ファイターズの辛く苦しい時代を共に乗り越えて来た仲間として(主力選手とただのファンという違いこそあれ)心から祝福してあげたい。
2000本安打は史上35人目。ファイターズ一筋では初。実働22年目での達成は史上最長。2205試合目での達成は2290試合の大島康徳に次ぐ長さ。39歳5ヶ月での達成は歴代6位タイの高齢。シーズン打率3割以上なしは柴田勲以来2人目。生涯通算打率では35人中最低。それでも2000本だ! 初安打は1986年6月10日の対南海ホークス戦、井上祐二からの本塁打。
旧フランチャイズということで、古くからのファンが大挙して訪れ、感動に包まれた東京ドームではあったけれど、しかし試合は負けました……(6-11)。
こんな時くらい勝て! 

田中幸雄・年度別成績

年度

試合

安打

打率
1986 14 4 .148
1987 112 66 .203
1988 130 141 .277
1989 130 106 .247
1990 130 129 .287
1991 130 109 .241
1992 1 0 -
1993 128 120 .253
1994 130 148 .286
1995 130 142 .291
1996 130 142 .277
1997 133 137 .254
1998 107 115 .274
1999 131 137 .270
2000 97 84 .256
2001 139 125 .255
2002 132 130 .278
2003 78 66 .275
2004 35 20 .253
2005 98 46 .237
2006 58 15 .174
2007 32 20 .230
Total 2205 2002 .263

(5/17まで)

(↓)シーズン終了時

2007

65

30

.222

Total

2238

2012

.262


2007 9/19 田中幸雄、引退報告

東京ドーム最終戦、対東北楽天ゴールデンイーグルス。「試合後に田中幸雄の引退報告」ということで駆けつけました。そしたら想像以上の大入り。試合開始時には自由席は内外野とも満杯。客席には新旧ユニフォーム、Tシャツの背番号6がちらほら(俺もだ!)。いゃあ、やっぱり東京での田中幸雄人気はすごいなぁ。というか……「ちらほら」ぐらいしかいないな……まぁ、皆様ほんとは今季初の「ダルビッシュ VS. 田中将大」目当てだったのかもしれない。そして、ふと気付くとなんと三階席が開放されている! 東京ドームのF戦としてはほんとに久々の出来事(観客数27972人)。
ダル様はいつもながら不安定な立ち上がり。2-3ピッチが多く、回が進んでもコントロールがいまひとつ。しかし球威でゴリ押しして4回2死までノーヒットに押さえ込む。打線は初回からマー君を捉え稲葉のタイムリーで先取点。初回から
稲葉シェイクだが、でも残念ながら東京ドームの外野スタンドは札幌のようにズカンズカンと揺れてくれないのだ。そこはもの足りないね。2回には金子誠のソロホームラン。金子のホームランなんて年間に3〜4本しか打たない珍しいものを見られてまことに嬉しいかぎり。しかし3回以降はマー君を攻め倦ね、6回には三者三振を喰らうなど、いいとこなし。一方、ダルも楽天打線の逆襲を受け度重なるピンチを背負うが、自身のバント処理(完璧!)やセギノールの好守(身長2mから更に1m手を伸ばしてライナーをキャッチ!)で6回7回とゲッツーを取り、ここぞというときには渾身の奪三振で相手に点を与えない。
そして2-0のまま7回裏、ファイターズ一死一三塁で代打田中幸雄! いやぁ、
観客総立ちでスタンディング・オベーションですよ。やっぱりみんな田中幸雄が好きなんだなぁ。2万7千人超(←楽天ファンが900人として)の想いが幸雄に伝わったに違いない。一塁走者の金子誠がスタートを切ったその真上を、打球がライナーで超える! ライト前にタイムリー! もう客席は大興奮! 拍手が鳴りやまない中、森本が犠牲フライ、4-0となって田中幸雄は一塁走者に残ったまま。ここでついに田中将大が降板、初対決はとりあえずダルビッシュの勝ちとなった。ファイターズ・ファンはほぼここで勝利を確信したはず。で、ひと息ついたとたん、田中賢介の打球は右中間最深部へ! これを磯部が獲れない! 一塁にいた田中幸雄が激走してホームイン、続いて打者走者の賢介もホームイン! なんとなんとこれがランニング・ホームランとなってしまった! うひゃー、ランニング・ホームランなんて初めて見たよ。まぁ、ほとんどの観衆もそうだったはずで、東京ドームはもうお祭り騒ぎ。ファイターズ戦の観戦勝率2割くらいの俺もこれでほんとに勝ったと思えたのだった。もう試合としてはあとはおまけ。熱狂の余韻冷めやらぬまま、6-0で試合終了。
そして、普段ならもう既に観客の何割かは席を立っているはずなのに、今日は誰も帰ろうとしない。

帰らない人々
(↑) 試合終わったのにこんなに人が残ってる。というか、東京ドームのFs戦にこんなに観客が入ってることにもびっくり。

そしてついに、その時が。スクリーンに田中幸雄のデビューから2000本安打までの姿が映し出され、それが終わるとともに田中幸雄が一人グラウンドへ歩み出る。「この東京で、後楽園球場2年間、東京ドーム16年、札幌ドームで4年。1年目から試合に出させていただいて22年間、幸せな現役生活を送ることができました」と、いつもながらの朴訥な声で、でもしっかりと「今季限りでの現役引退」を発表したのであった。怪我にも苦しみ、けして幸せな事ばかりではなかったとは思うが、日本一も勝ち取り、野球人としては幸福な人生だったのではないか。というか、まだ「東京の巻」が終わっただけでシーズンが終わったわけではないので、まだもう少しがんばれ! ジャイアンツと日本シリーズ戦うことになったらまた東京ドームでやるんだしな。
幸雄は日本一の照れ屋さんでもあるので発表後はすぐベンチ引っ込んでしまったが、球団マスコットB☆Bに引っ張られてライトスタンド下で一礼。そしてまた鳴りやまぬ拍手と声援の中、逃げるようにベンチへ帰ってしまった。最後までいかにも田中幸雄らしい姿。
いやー、ほんとに感動的な「引退発表式」でした。敗戦後でありながら席を立つことなく暖かく紳士的に見守っていただいた東北楽天ゴールデンイーグルス応援団並びにファンの皆様にも御礼申し上げておきます。
球団からは「功労者」でもあり打撃コーチとして残留のオファーはあるそうだが、まだ受諾するかどうか、意思を表明してはいない。
(後日、固辞しました)

引退の辞
(↑) 田中幸雄にしては長い挨拶でした。この日この場にいられてよかった。

ライトスタンド
(↑) 満杯のライトスタンドからは暖かい声援が途切れることがなかった。

帰り道で拾ったちょっといい話。
駅に向かって前を歩いていた老夫婦の会話。
「いやぁ、よかったなぁ。今までで一番感動したよ」
「そりゃそうよ、幸雄さんだもの」


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