2010年私的 文庫 Best10
2010年(1月〜翌年年始)に読んだ文庫のBest10。文庫以外の本ももちろん読むぞ。んでもここも文庫に限ったのだ。電車で立って読むには文庫が一番楽だからな。それからついでに言うと、発行年に関係なく読んだ年で選ぶことにしておるのだ。だからときどき、すごい古いものが入ってくることもある。10位が2つあるのは毎年恒例のようなものだな。というか、今回も3つだ!
10
ぼくとペダルと始まりの旅 ロン・マクラーティ 新潮文庫
邦訳出版時にけっこう評判になった「奇蹟の自転車」を文庫化にあたり改題。がまんして文庫まで待ってましたよ。内容は「ダメ男が自転車でアメリカ横断をする人生再生のロードノベル」。1990年という時代設定がハートウォーミングなホラ話にぴったりマッチングしている。フォレストガンプ(もちろん原作の方)との強い類似性は感じずにはいられないが、感動的な愛すべき作品であることはまちがいない。10
さよならまでの三週間 C・J・ボックス ハヤカワ・ミステリ文庫
ノンシリーズ。養子縁組に纏わる善人と悪人の争い。善と悪が明確に別れ過ぎていて作り物っぽい感は否めないが、そこはさすがにボックスなので物語の流れに不自然さはない。ラストの決め方も見事!10
武士道シックスティーン 誉田哲也 文春文庫
求道者と不思議ちゃん、対照的な二人の剣士(共に16才の女子高生)が織りなす剣道LOVEの青春スポーツ小説。視点を交互に入れ替えるという構成が生きてる。章題のセンスもいいです。確信犯的なあざとさは感じないでもないが、とりあえず◎。映画化されたキャスティングはあんまりイメージしない方がいいと思う。9
オッド・トーマスの救済 ディーン・クーンツ ハヤカワ文庫
死者の霊を見る青年<オッド・トーマス>シリーズの3。この回は人里離れた修道院での「正体不明の超自然的な何者かに襲われる孤立した集団」ものだ。おお! クーンツの本道というか、初期のモダンホラーを思い出させる懐かしいテイスト。なんだかこの設定は前に読んだことがあるぞ、という感想は脇へおいておこう。8
ベルファストの12人の亡霊 スチュアート・ネヴィル RHブックス+プラス
自分が殺してきた亡霊に取り憑かれた元IRAの戦士。オカルト風味のサスペンスというか、頭のおかしな殺し屋の自己贖罪物語というか。なるほど、和平合意後の北アイルランドならこういうプロットは可能であったのか、というアイデア勝ちの一作。アイデア負けせず、中味も充分に読み応えがある佳作。北アイルランド紛争史の手短な解説にもなっている。2010年ひろいもの大賞だな。7
こころげそう 畠中恵 光文社文庫
江戸の下町、幼なじみの男女9人を描いた連作短篇。どうということもない青春人情劇なのだが、幽霊が1人交じっているところがこの作者らしいところ。それぞれの物語もいいうえに、最後でひとつに収束するところが更にいい。切ないけど清々しく美しい。6
猛き海狼 チャールズ・マケイン 新潮文庫
第二次大戦のドイツ海軍軍人を主人公にした海洋冒険戦争小説。前半はボケット戦艦、後半はUボートというドラマチックではあってもマイナーな舞台設定が興味深い。まぁドイツ海軍自体がマイナーな存在でしたが。艦内の生活や戦闘場面はもちろん、戦争で破壊されていくドイツの街や国土、人々の描写もリアリティに溢れている。終盤の陸上でのドラマも手に汗握ってしまう。ちなみに作者はアメリカ人です。5
イリアム1〜2 ダン・シモンズ ハヤカワ文庫SF
オリュンポス1〜3 ダン・シモンズ ハヤカワ文庫SF
イリアム〜オリュンポスと続く、なんだかわからないけど読み出したら止まらない超絶面白SFシリーズ。5巻合わせたら4000頁ぐらいある! ギリシア神話とトロイア攻略戦と未来人と外宇宙の人型ロボットと謎の生命体が入り乱れる謎の超大作。とりあえずダン・シモンズの力業に感服。03年度ローカス賞受賞作。超面白い! 疲れる! 謎が残ったままだ!4
音もなく少女は ボストン・テラン 文春文庫
あまりにも激しく、痛ましく、でも心強い小説。人種であったり、障碍であったり、その性自体であったり、さまざまな理由で迫害、虐待を受けながらも助け合い戦い続けた女たちの物語。テランを読むたびに思う。テランは凄いなぁ。3
フランキー・マシーンの冬 ドン・ウィンズロウ 角川文庫
引退したマフィアの殺し屋にふりかかる災厄と、その真相。ウィンズロウらしいクリアーな筆致で西海岸のマフィア通史が語られる。そこにあるのは前作「犬の力」のような圧倒的な怒りの炎ではなく、爽快感さえ漂う温かな語りである。こういう適度な「ゆるさ」がウィンズロウの真骨頂だと思うわけですよ。2
ラストチャイルド ジョン・ハート ハヤカワ・ミステリ文庫
少女失踪事件を軸として家族と友情と愛の強さと弱さを淡々と綴るジョン・ハートの最高傑作(まだ3作目ですが)。主人公の少年の頑迷さに苛つくこともあるが、そこがまたこの作品の骨幹でもある。ボケミス版(1巻)と文庫版(上下2巻)と同時刊行(価格は同じ)という謎のスタイルだが、私は文庫にしました。単に持ちやすいからだったんだけど、ポケミスにしてたらこのランキングの対象に入らないところだったな……1
愛おしい骨 キャロル・オコンネル 創元推理文庫
繊細で剛腕、これぞキャロル・オコンネル。2位の「ラストチャイルド」と事件自体のベースが似てて興味深い。展開の意外性、キャラクター造型、「物語としての面白さ」でわずかにオコンネルを上位にしました。といえうか、そんなことより「マロリー」シリーズの続訳を希望!!!特別賞/シリーズ終結の2作
回帰者 グレッグ・ルッカ 講談社文庫
アクション・ハードボイルドの傑作!<アティカス・コディアック>シリーズ7作目にして完結編。1作目「守護者」からこんな物語に到達するとは思いもしなかった。今作は最初の動機付けが他人の事件なのは異質な気がしないでもないが、いつもながらの目まぐるしい展開と混乱で息をつかせない。あの人が出てくるのもシリーズ愛読者にはうれしい。それにしてもアクション・ハードボイルドにおいてメガネをかけた主人公という存在はアティカスしか思い浮かばないのだが、他に誰かいただろうか?最後の音楽 イアン・ランキン ハヤカワ・ポケット・ミステリ
エジンバラの一匹狼の捜査官<リーバス警部>シリーズ最終話。停年退職十日前に関わった「最後の事件」解決への執念と、残された時間との戦い。とうとう最後までワーカホリックな物語だった……。20年18作にわたって書き続けられたハイクオリティのシリーズ。ジョン・リーバスにもう会えないのはかなり寂しい。というか、退職したからといって大人しくしているリーバスではないと思うのだが。
- さいですか。
- ふりだしにもどる。