2001年私的 文庫 Best10
2001年に読んだ文庫のBest10だ(13冊あるけど)。文庫以外の本ももちろん読むぞ。んでもここも文庫に限ったのだ。電車で立って読むには文庫が一番楽だからな。それからついでに言うと、今回から発行年に関係なく読んだ年で選ぶことにしたのだ。だから今後、すごい古いものが入ってくる可能性はある。
10
ウルフ・ムーンの夜 ステーヴ・ハミルトン ハヤカワ・ミステリ文庫
前作「氷の闇を越えて」もよかったけど、これもいい!! 真冬の北ミシガンを舞台に、一方には「厳しい寒さ」があり、もう一方には「人の温かさ」がある。個人的には物語の端緒ともなる「元マイナーリーグ捕手の主人公が無理矢理アイスホッケーのGKをやらされる」というところがなんか身につまされるし、あと、カナディアン・モルソンBEERも好き。というわけで極々極私的に一票。9
ハドリアヌスの長城 ロバート・ドレイパー 文春文庫
歴史物じゃないよ。真の友情と、真ではない友情。根本的に辛い話ではあるが、ポイントポイントに配された暖かみがあるので、暗い物語にならない。佳作。デビュー作だそうで、今後に大いに期待。8
斧 ドナルド・E・ウェストレイク 文春文庫
ウェストレイク名義だがコメディではない。辛く陰惨で自分勝手な話、と言ってよい。でも面白い。描写がうまいし無駄な書き込みがないので読みやすい(訳もいいからだろう)。ほんとにこの作者って才人だなあ、と再確認。7
騙し絵の檻 ジル・マゴーン 創元推理文庫
いやー、おみごと!! 伝統的本格推理。現代(と言っても80年代だが)を舞台にしても本格推理の手法が有効に生かせるというお手本。技能賞。6
頭蓋骨のマントラ エリオット・パスティン ハヤカワ・ミステリ文庫
2000年度アメリカ探偵作家クラブ最優秀処女長編賞受賞作。囚人が探偵役となって捜査をするというパターンはよくあるが、この作品の主人公は中国政府によってチベットの収容所に入れられた中国人の元経済捜査官というかなり特殊な設定。作者はアメリカ人。きっとチベットの風習や事物に関していろいろと間違った記述があるにちがいない。が、しかし、お話はとても面白い。賞を獲るのも当然。5
夜のフロスト R・D・ウィングフィールド 創元推理文庫
出るたびに高い評価を受けるフロスト・シリーズの3作目。ワンパターン、とは言え、これまでで一番面白いかもしれない。ワーカホリックにして自己管理能力ゼロ、警官的直感敏にしてデリカシー欠如、そういうフロストの極端さがよくわかる。4
心の砕ける音 トマス・H・クック 文春文庫
買って2か月、積んだままだった。クックを読んでると気分が落ち込んでくるので、なかなか読み出せないんですよ。これも、なんか暗くて重くて苦しいんだけど、読み出しちゃうとやめられない。例によって読者を引きずり込んで離さない泥沼になってる。ただ、この作品のラストには意表を突かれてちょっと驚かされた。記憶シリーズとはちょこっと傾向が違ってる。3
カリフォルニアの炎 ドン・ウィンズロウ 角川文庫
ここ数年、一番好きな作家。おそらく原文もそうなのだろうが、現在形を多様した今回の文体がすごくいい。主役はへらずぐちを閉じさせて、健康的にしたニール・ケアリー。相変わらずキャラ作りの才はピカ一。2
愛しき者はすべて去りゆく デニス・レヘイン 角川文庫
パトリック&アンジー・シリーズ4作目。レへインはルヘイン名義で出た「ミスティック・リバー」(早川書房)が2001年度各ベストテンの上位に入ったぶん、こっちのシリーズには票が入らなかった(ちなみに俺が「ミスティック・リバー」読んだのは2002年になってからなのでした)。だがしかし、このシリーズだって、どれも当代きってのハードボイルド作品として高く評価されている。それは、その卓越した人物造形であり、テンポのいい語り口であり、飛び抜けた描写力によるものである。つーと、欠点がないようだが、ない(強いて言えば登場人物がみんなみんな幼なじみだという特殊な地域性が日本人には理解しにくいところだろうか)。でも切なく哀しい……。1(って4冊もあるが)
氷の天使 キャロル・オコンネル 創元推理文庫
アマンダの影 キャロル・オコンネル 創元推理文庫
死のオブジェ キャロル・オコンネル 創元推理文庫
以上、キャシー・マロリー・シリーズ
クリスマスに少女は還る キャロル・オコンネル 創元推理文庫
2001年最大の収穫はキャロル・オコンネルという作家を知ったことだ。とにかくキャラクターの造形が飛び抜けてる。マロリー・シリーズで言えば、天性の泥棒で真性な嘘つきでコンピュータの天才でもある一匹狼の美貌の冷血女警察官、そんな極端な設定がまるで嘘臭くない。上記マロリー3作はオコンネル初期の作品で、デキとしてはその後から書かれた「クリスマスに少女は還る」(99年の各ベストテンにも選出されてたのに読んだのは2001年)の方が数段上なんだが、だからこそ、今後訳出されるであろうこれからのマロリー物に期待大。もうほんとに待ち遠しいよ。今年もまた入らなかったけど日本の作家のも読むぞ。でも日本人作家だといきなり文庫、ってことはないからな。
- さいですか。
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