ペディオカクタス 天狼 
  ’ユタ州型’

(ユタ州ワシントン郡)

 天狼はかつて「ユタヒア属」と呼ばれたこともありますが、ほとんどのコロニーがアリゾナ州に集中しています。ですがここはギリギリでユタ州の南の端っこにあたり、また分布域の西端でもあります。ここまで紹介した産地とは比較的距離が離れていて、孤立した貴重なコロニーです。特徴的にも刺数がより多いことや花色がピンクがかっている(筆者未見)など、若干の差異が見られます。
 とはいっても、レッドサンドと石膏泥の地層的な境界付近に自生する点は同じ。思い切り干上がったセメント採掘場みたいな場所で、訪ねたのは6月でしたが開花の形跡も成長の様子もありませんでした。硬く縮んでいるせいで、刺がいっそう密生しているように見えます。大株はストレスをうけ、肌が褐変したり刺が退色しているものも多いのですが、それはそれで野性味です。少なくともこの年の春は降雨を見ず、休眠したままだったと思われます。ペディオ・スクレロ産地では往々にしてあることのようで、雨がふらないので3年間休眠、といったことさえあるようです。
 いちばん上の写真の群生株は総径で40センチくらいあります。いったい何年生きているのでしょうか。写真2〜5枚目はややストレスを受けている株で、肌色刺色はくすんでしまっています。草一本生えぬ灰白の大地に、まさにとりつくような様ですが、生きているのか死んでいるのかも定かでない迫力があって、向き合ったときは畏怖の念さえ感じました。6枚目の天狼は、これも硬く縮んでいますが、生気は失っていない若苗。尖端のみ黒く染めた純白の刺が密生する素晴らしく美しい個体でした。また、その下の株のように、金刺の天狼も美しいものです。写真には写っていませんが、こんな場所でも実生苗は結構生えており、彼らにとってはこの不毛の地こそ適地であると言うことなのかも知れません。温室で発芽した天狼が、このような雄姿を見せてくれるのはいったいいつのことなのか、それが果てしなく遠い日であればあるほど、憧れはいっそう募るものなのかも知れません。
 いちばん下の写真は、ここを訪ねた晩に野営した場所。遠くに見える赤い岩肌と平地のあいだに、石膏泥のテラスがあります。この赤土の平原まで降りてくると、もう天狼の姿はありません。昼は30度を軽く超える6月の暑い日でしたが、明け方にはフリースを着込んでも寒いほどの冷え込みでした。
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 Pediocacatus sileri  "Utah form"
   (Washington Co. UTAH) 

Formerly P.sileri was named "Utahia sileri". But most localities of them are in Arizona, except around here. This "Utah form" has denser spination and sometimes pinkish flower. P.sileri here are really tough surviver of harsh desert environment. I was struck with awe when they appeared before my eyes in their intense, and magnificent wildness.