柚月裕子著  『最後の証人』





 

                2016-01-25





  (作品は、柚月裕子 『最後の証人』    宝島社による。)


          
  本書 2010年(平成22年)5月刊行。

  柚月裕子:(「臨床真理」より)

1968年、岩手県生まれ。山形県在住。フリーライター。雑誌やテレビ局のホームページで作家の対談・インタビューのまとめを担当。


主な登場人物:

佐方貞人
(さかたさだひと)

中野にある弁護士。検察官になった5年目に、ある事件を機に辞め弁護士に。被告人は無実と確信し、弁護を引き受けるが・・・。

小坂千尋 法科大学院に通い、学費を稼ぐため1年前佐方の事務所で働く優秀な女性。
庄司真生(まお) 米崎地検の検察官。きびきびした動きや頭の回転の速さからキレる女、30代前半。今回の殺人事件の担当検察官。
筒井公判部長 庄司真生の上司。かって佐方の上司でもあった。

高瀬光治
妻 美津子
息子 卓

三森市(県庁所在地の米崎市の隣)岡崎町に個人の内科クリニックを開院して5年。38歳の時大学の付属病院から独立。
妻の美津子は大学の同期の妹。光治は美津子の大学卒業を待ってプロポーズ。
息子の卓は小学5年生の時自転車での塾の帰り、雨の中交差点で自動車にはねられ死亡。そのことを機に、美津子がxxxxめめめ

直樹 高瀬卓の友達。卓と一緒に塾の帰りに事故に遭うが、助かる。直樹は相手の信号無視と酒酔いを告げるも、取り上げられることはなかった。
島津邦明 地元建設会社社長。7年間前の時運転していたのは島津邦明。当時県の公安委員長、不起訴となる。
丸山秀雄 7年前の交通事故の担当警察官
寺元純一郎 今回の事案の裁判長。
裁判での証人たち

・田端啓子 高瀬家の隣の住人。高瀬夫婦の様子を語る。
・五十嵐雅司 タクシーの運転手。被害者を乗せる。
・田沢広 米崎市”グランビスタホテル”のベルボーイ。被害者の第一発見者。
・西脇聡 法医学教室の教授。鑑定結果の報告。


物語の概要(図書館の紹介記事より)

物的証拠と状況証拠のすべてが、被告人が犯人であることを示していた。依頼人の言葉を信じる敏腕弁護士は、逆転無罪を勝ち取ることができるのか…。驚愕のラストが待ち受ける、傑作法廷ミステリー。

読後感

 何か違和感を覚えながら読み進んでいく。裁判でのシーンとそれにまつわる息子の交通事故死に伴う復讐殺人計画。てっきりその筋で読んでいたのに、公判3日目の最終論告から最終弁論での出来事に唖然。
 無罪を勝ち取る確信で弁護を引き受けたという佐方弁護士の最初の言葉が最終的には・・・。
 
 結論はさておき、それにしても例えば交通事故に遭った被害者の家族が警察の担当者に会って詳細を問うたり、調書を見せてもらったり、不起訴の内容を調べようにも満足に調べられないということは本当なのか。どういう理由でそうなったのかを知りたいと思うのは当然のことと思うが、それが出来ない(?)ということはどういうことなのか。
 幸い実際にそのような事態に遭遇したことはないけれど、被害者の身になったとしたら、我慢できない。
 内容を記載すると読み手に面白みがなくなるのでよすが、高瀬美津子と光治の夫婦の絆は固かった。 

  

余談:

・筒井の口癖「法より人間を見ろ」「机にへばりついて警察が持ってきた書類や証拠だけを見てるんじゃない。人として被告人を見ろ」
・筒井が佐方に投げた言葉「真実を暴くことだけが、正義じゃない」
 これに対し、佐方の言葉「あんたが言う正義はなんだ。俺の正義は、罪をまっとうに裁かせることだ」
・佐方が真生に向かって放った言葉「法を犯すのは人間だ。検察官を続けるつもりなら、法よりも人間を見ろ」
・小坂の思い「光治を救いたい、小坂は思った。罪を犯せば裁かれる。裁かれなけばならないと思う。光治もそれは同じだ。どのような理由であれ、罪は罪として償わなければならない。しかし、まっとうに裁くということは、事件の裏側にある悲しみ、苦しみ、葛藤、すべてを把握していなければ出来ないことなのではないか。行動の裏に理由があるように、事件には動機がある。そこにある感情を理解していなければ、本当の意味で罪を裁くことにはならないのではないか」 
 庄司真生、小坂という若い人間に筒井や佐方が放つ言葉がやさしい。

背景画は、正義の女神像テミス像のフォトを利用(色々な像がある事を知った)。

                    

                          

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