柚月裕子著  『臨床真理』









                   2015-10-25

(作品は、柚月裕子著 『臨床真理』      宝島社による。)

        

本書 2009年(平成21年)1月刊行。

柚木裕子:(本書による)

 1968年、岩手県生まれ。山形県在住。フリーライター。雑誌やテレビ局のホームページで作家の対談・インタビューのまとめを担当。

主な登場人物:

佐久間美帆
弟 達志

国立病院機構東高原病院の臨床真理士、29歳。この春大学院を卒業し資格を取ったばかり。
・達志 精神病を患っていて駅のプラットフォームから飛び込み自殺。
これを機に美帆、心理学を専攻、司の目に達志の目を見る。

高城 ベテランの精神科医、50歳。美帆の上司。
内田主任

看護士主任。この道30年のベテラン。厳しさ定評。美帆に辛くあたる。
安藤施設長の遠い親戚。

湯原遙 看護師2年勤務、美帆より5歳年下。楽天的でどこか強さを感じさせる性格。
安藤守雄 知的障害者入所更正施設至誠学園の施設長。
藤木司 今から4ヶ月前至誠学園の施設で事件を起こし、指定入院機関である東高原病院に入院、佐久間美帆が担当となる。心を開かない状態が続く。彩とは仲が良かった。
水野彩 精神疾患の一種“適応障害”を患っていた。リストカットを繰り返していた。
栗原 ハイテク犯罪対策室の警察官。美帆の高校時代の同級生。
梶山健一 消防署勤務の救急救命士。彩を病院に搬送途中、司に乱暴される。
西澤利明 障害者就労援助せんたーの支援人材派遣部長。施設から企業に障害者を紹介。
物語の概要:(図書館の紹介記事より)

臨床心理士の佐久間美帆は、勤務先の医療機関で藤木司という20歳の青年を担当することになり…。臨床心理士が醜悪な事件の真相を追う、一級のサスペンス。「このミステリーがすごい!」大賞第7回大賞受賞作品。

読後感

 臨床真理士という佐久間美帆が主人公、まだ新人で担当になった患者である藤木司なる超能力を持つ人間に対する疑いと信用の狭間に揺れながらも、弟の達志の経験からなんとか信ずることで行動する姿は今まで読んできた世界と少し分野が違うだけに興味をそそられる。

 水野彩というこれまた精神を患っている(?)女性の死に司が自殺でないと訴え、その真相を探ろうとする。ミステリー的要素が読者を引き込んでいく。
 施設長の安藤、就労援助センターの西澤あたりが怪しいとなるところまでは素直な展開だったが、一件落着かにみえた後半になって意外な展開が待ち受けていた。

 内容は伏せるとして、「このミステリーがすごい!」大賞の書評をみて、「文書や会話、人物描写、冒頭のつかみや中盤のサスペンスなど、素晴らしい。ただし問題はストーリー。」として現代社会特有のゆがみや現象を反映しているなど「いま」を感じさせるものがあれば言うことなしとまさにそう思わせるものだった。

余談:

 人間の素顔はまったくもって判らないもの、それは生い立ちやそれまでの経験してきた生き様に拠るところも多々あるし、培われてきた生き方の哲学のようなものがその人を形作っていくのだろう。

 背景画は、本書の内表紙絵を利用。