柚月裕子 『あしたの君へ』


              2022-08-25


(作品は、柚月裕子著 『あしたの君へ』    文藝春秋による。)
                  
          
  
  
初出  オール読物
       背負う者    2014年8月号
       抱かれる者  2014年11月号
       縋る者      2015年5月号
       責める者    2015年5月号
       迷う者     2015年11月号(「旅立つ者」から改題)
  本書  2020年(令和2年)10月刊行。


 柚月裕子
(ゆづき・ゆうこ)(本書による)

 1968年、岩手県生まれ。山形県在住。2008年、「臨床真理」で第七回「このミステリーがすごい!」大賞を受賞し、デビュー。13年「検事の本懐」で第十五回大藪晴彦賞を受賞。15年に刊行された「弧狼の血」は、第六十九回日本推理作家協会賞(長編及び連作短編集部門)を受賞したほか第一五十四回直木賞候補、「このミステリーがすごい!2016年版」第三位、「本の雑誌が選ぶ2015年度ベスト10」第二位となった。他の著書に「最後の証人」「検事の死命」「蟻の菜園アントガーデン―」「パレートの誤算」「朽ちないサクラ」「ウツボカズラの甘い息」がある。 

主な登場人物:

[ 福森家庭裁判所 ]関係者

九州の県庁所在地にある家庭裁判所

望月大地<主人公>

家裁調査官補佐官(通称カンポちゃん)。実務修習で3人(美由紀、志水)同じグループで研修中。
法学部出の静岡出身、22歳。

藤代美由紀

九州出身、大学の専攻は発達臨床心理学、22歳。
沈着冷静で負けず嫌い。

志水貴志(たかし) 大学院出、26歳。大学で心理学専攻。
プライド高く、酒席にはほとんど出席しないタイプ。
真鍋恭子(きょうこ) 家裁調査官、統括主任、42歳。
溝内圭介(けいすけ) 少年事件担当の主任。8年経験。
露木千賀子 家事事件担当の主任。(離婚や相続問題を扱う。)4年目。
第一話 [背負う者] 17歳 友里)

鈴川友里
母親 直子
妹 杏奈(あんな)

コンビニでバイト他でお金を稼ぐ。窃盗で捕まり家裁送りに。
・直子 ビルの清掃員で働く。父親は没。
・杏奈 中学を卒業後は家に引きこもり。

第二話 [抱かれる者] 16歳 潤)

星野潤
母親 良子(よしこ)
父親 譲(ゆずる)

市内の進学校に通う高校二年生、16歳。
ストーカー行為で「殺してやる」発言。
・良子 旧姓丹田(たんでん)実家は名家。
・譲 単身赴任中、福岡銀行の支店長。

相沢真奈 ストーカー被害者。別の高校に通う1年生。
交際二ヶ月で「もう会わない」と告げる。
第三話 [縋(すが)る者] 23歳 理沙)

望月大地
母親 香苗(かなえ)
妹 夏海(なつみ)
兄 大津

静岡に帰省。中学時代から仲のよかった仲間と飲み会。
・夏海 2歳年下、看護学校に通う。
・大津 4歳年上。水産学校卒業して海に出て行く。
父親(耕太郎)は6年前他界、享年51歳。漁師だった。

瀬戸理沙 中学時代の同級生。
第四話 [責める者] 35歳 可南子)

朝井可南子
夫 駿

何もいらないから別れたいと。子供なし。
・駿 保険会社勤務、41歳。5年前結婚、半年前から別居。

第五話 [迷う者] 10歳 悠真)

片岡悠真
母親 朋美(ともみ)
父親 伸夫(のぶお)

小学5年生。
・朋美 保険会社勤務、35歳。
・伸夫 46歳。 
夫婦は夫の実家で同居、半年前から妻は別居状態に。
悠真は父親と祖父母と暮らしている。

物語の概要:(図書館の紹介記事より。)

 修習中の家裁調査官補・通称“カンポちゃん”の望月大地。心を開かない相談者たちを相手に、彼は真実に辿り着くことができるのか。 彼らの未来のため、悩み、成長する「カンポちゃん」の物語。

読後感:

 静岡の地から九州に家庭裁判所家裁調査官の研修でやってきた主人公の望月大地が、同じグループの藤代美由紀、志水貴志と共に修習に励む姿が実際の案件をサポート役の溝内主任(少年事件担当)、露木主任(家事担当)の助けを借りて成長していく物語である。

 少年事件では、[第一話] でラブホに誘い相手の財布を盗んで逮捕された鈴川友里の案件に。
 遊ぶ金欲しさにやったと陳述する友里に、事情を調べる内に隠された事実とは。
 [第二話] の星野潤の案件では、付き合いを断られ、ストーカー行為から「殺してやる」発言の少年に対する隠された真実とは。やはり家庭の事情が色濃く反映されていた。親の育て方、さらにはその親の育ってきた環境が色濃く影響していた。

 家事事件では、[第四話] では何もいらないから、別れたい。 調停では妻の言い分からは、別れたい理由が理解されなかったが、ここにも隠された真実があった。
 [第五話] も離婚調停の案件、ここでは子供の親権争いが焦点に。 小学5年生の悠真の扱いに苦慮することに。 子供の心の叫びを知ったときの、親たちの心情はやはりどうしたものか。

 いずれの案件も現実の世界でもあるようなもので、知らず知らずのうちに、涙する場面も。
 [第三話] だけは大地が扱った案件ではないが、中学時代の同級生の瀬戸理沙が抱えている事案を通して大地への応援メッセージのようなもの。

余談:

 家庭裁判所の家裁調査官の仕事を理解でき幸い。
   家裁調査官の仕事は:
 問題を抱えた当事者の背景を調査し、持っている専門知識を生かして調停委員や裁判官をサポートしながら、紛争を解決へと導くこと。

背景画は、自然いっぱいの素材集がErrorとなって消失してしまったので、背景素材無料のものからに。

           
戻る