印象に残る表現:
◇金本が少年に言う言葉
(補足:金本は、元ヤクザ。英知の父が、ベガスに改名する以前の宝球殿の時代に、もめ事を解決した企業舎弟。少年もこの男には頼りにしているし、金本も少年に対しては色々面倒を見ている。)
「子どもってのはおとなにとって過去であると同時に未来なんだ、先のことはわからねえけど、知りたいんだ、占いたいんだ、てめえがいなくなった先の未来をガキのなかに見て安心してえんだ。
おれも金閣のおやじさんもどんな目でお前を見てたと思う? おやじさんはもうすぐくたばるんだ、そのおやじさんがおまえに救いを求めてなぜいけない! 三途の川を渡りきってふりむいたとき、おまえが向こうの岸で生きてんだなあと思ってなにが悪い。 おまえは勝手だと思うだろうが、そういうもんなんだよ、そういうふうに生きてんだ、いいか、ちんけな希望を持ってくたばりたいんだよ、
◇少年の考え(つまり作者の考え)
社会の網の目は通年と利害でしっかりと結ばれ、それ以外の要因で引き起こされた出来事は網にはかからない。実は子供こそ通年と利害に異常なほど敏感だということにおとなたちは気づいていない。通年と利害ではない関係で人間が衝突することへの驚き、このふたつから逸脱した犯罪が起きると、犯罪心理学者はすぐに快楽殺人とか愉快犯と名づけて精神的な障害を持ち出すか、通念が疲弊し、利害が錯綜していることを知ろうとしていないだけだ。
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