吉永南央 『その日まで』



              2022-01-25


(作品は、吉永南央著 『その日まで』    文藝春秋による。)
                  
          

 
本書 2011年(平成23年)5月刊行。書き下ろし作品。

 吉永南央
(よしなが・なお)(本書より)

 1964年、埼玉県生まれ。群馬県立女子大学卒業。2004年、「紅雲町のお草」でオール讀物推理小説新人賞を受賞。08年、同作を含む「紅雲町ものがたり」(文庫化に際し「萩を揺らす雨」に改題)で単行本デビュー。他の著書に「オリーブ」「誘う森」「Fの記憶」「アンジャーネ」がある。

主な登場人物:

杉浦草(そう)
息子 良一(没)

70もとうに過ぎている。離婚歴があり、息子を亡くしている。
雑貨屋時代から長年「小蔵屋(和食器とコーヒー豆の店)」を営んでいる。昔マルフジの藤原との再婚話が持ち上がり消えた。
・良一 水の事故で先立った3歳の息子。

久美 「小蔵屋」の正規従業員。嫁入り前、充分若い。
由紀乃 草の幼馴染み。脳梗塞の後遺症で左半身がやや不自由で、外出しにくい。

田沼
姉の息子 タケル

フリーの設計士。自称なんでも屋。
・タケル 姉の子、5〜6歳。姉に頼まれ、預かっているがストライキ中。
・姉夫婦(連れ子同士の再婚) 長野で蕎麦屋を営む。別れる方向で話し合い中。

寺田 運送屋。
ライカの男 一応プロのカメラマン。
青砥

結婚式場勤務、27歳。福祉作業所「たんぽぽ」でボランティア。
小蔵屋にキャンドルの売り込み。

須之内ナオミ(すのうち)
妹 洋子

彫刻家。草より2周りほど年下。父親がアメリカ人。実家とは絶縁状態。肝臓、腎臓当たりに病巣。来週ニューヨークへ帰って治療に専念予定。ナオミの実家は“須之内学習塾”。
・洋子 ナオミと年子。姉と同じ女子校。

妹尾(せお) 「香菜」の裏手で工房を営む。

浅井香菜(かな)
夫 稔(没)

「香菜」という家庭的な雰囲気のカレー専門店を営む。
・稔 妹尾の後輩。二年前店のオープン目前で亡くなる。

浅井秀介 稔のいとこ。猫背の男。
平田能理子

夫婦で「富久鮨(ふくずし)」を営む。職住一体の店舗。
ダイデン不動産、長要、つづらの悪巧みで店を手放し、借金苦に。夫は県北の草津で働きに、娘は姉夫婦が営む平田ベーカリーに身を寄せることに。

藤原一京(いっけい) 呉服店“マルフジ”の会長、80代半ば。藤原はホスピスを脱出、車椅子生活。診療所には北爪の父親として、そして北爪を娘として装い、マルフジへの影響を及ばないように。
ハツ子 昔マルフジを手伝っていた、藤原の姪。人の気持ちに敏感な人。
水沢 洋菓子店を営む男。ハツ子の幼馴染み。
北爪 藤原一京の付き添い看護師、40前後。父親は自ら失踪10年になる。
<関係する会社や店名>
呉服店マルフジ

札付きの金貸し。当時の藤原が呉服店から金貸しまで広げる。
ダイデン不動産と懇意。 草が手伝いに行かされていたことがある。

ダイデン不動産 よく知る人ほど悪く言う。
長要

建設会社。古物商、廃品回収業など色々やっている。
“つづら”の店長の父親がやっている。

和雑貨店“つづら” 「小蔵屋」に嫌がらせを仕掛ける。

物語の概要:(図書館の紹介記事より。)

 北関東の紅雲町でコーヒー豆と和食器の店を営むお草。最近、近所に和雑貨店が開店し、露骨な営業妨害を仕掛けてくるので、くさくさしている。 しかも…。知的で小粋な老女が活躍するコージー・ミステリー。

読後感:

「小蔵屋(こくらや 和食器とコーヒー豆の店)」を営む70を過ぎた杉浦草が主人公の物語。ミステリーと紹介されているが、ちょっと趣が違う感じ。確かに謎の展開があるのだが、日常の展開に潜んでいる問題に絡んで、人情話やら、・・・・

 各章は陰暦の呼び名がついた表題でまとめられているのだが、 話自体は一連の出来事が絡み合い、要は不動産取引におけるダイデン不動産と長要、マルフジが絡んだ詐欺まがいのやり口で困った人々のことに、草が自身の店「小蔵屋」にも嫌がらせが及んできたことからも、止めさせたいのと、真相を知りたいことから実態の中心にいると思われるマルフジの会長、藤原一京に直接会うことで「小蔵屋」へ及ぶことを止めようと乗り込む姿が描かれている。

 この作品は「紅雲町
(こううんちょう)コーヒー屋こよみ」としてシリーズものの、 2作目に当たる。ただ、草が3歳で亡くしたという良一の息子のことが、 時に出来事により思い返される事情が判らないので、一作目を読んでみたいと思う。
 シリーズということで、この後は又別の展開が待っているのか、それと、こういった内容のミステリーの味もおもしろそう。


余談:

 昔は知っていた旧暦の名前と現在の暦との関係を再認識したい。
   一月   睦月
(むつき)
   二月   如月
(きさらぎ)
   三月   弥生
(やよい)
   四月   卯月
(うづき)
   五月   皐月
(さつき)
   六月   水無月
(みなづき)
   七月   文月
(ふみづき)
   八月   葉月
(はつき)
   九月   長月
(ながつき)
   十月   神無月
(かんなづき)
   十一月  霜月
(しもつき)
   十二月  師走
(しわす) 

背景画は、自然いっぱいの素材集がErrorとなって消失してしまったので、背景素材無料のものからに。

           
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