読後感:
六話の短編であるが、なんともぞっとする怖い話にすごい小説を書く者と関心。
<夜警>を読んで現実の警察官に対してある種恐ろしさを感じてしまう。どこか危うさを感じる警官がいる。しかもそんな人間が拳銃を持っている。そんなことを感じさせる新鮮な物語。
<死人宿>は2年前に姿を消した佐和子が秘湯で仲居、会いに行って私が以前と変わったかどうか試される。死を予告させる遺書の犯人捜しでそれが試される。宿が自殺の名所で繁盛するというのも恐ろしいこと。
<柘榴>では離婚したときの夕子と月子の子供たちの両親に対する見方がこういうものだったのかとこれまたこわ〜い話だった。良い家庭人でなかった夫に対し、子供たちの反応はまさに意外や意外。男親とは・・・。
<万灯>はバングラディッシュという外国生活での商社の人間の生き様がすさまじい。新鮮で、ちょっと前3話と乖離していてなじめなかったが、後半になって緊迫感が一気に高まっていく。挫折していく人間の姿、日本に戻ることで癒やされるのが感触として理解できるし、帰えるところを持っていることが幸せと感じてしまう。それとは別にこの話も恐ろしい話。
<関守>は4年の内に4件の転落事故があり、それを都市伝説と絡めて原稿作成しようと取材をする過程で物書きのこつのようなものを感じ参考になった。
転落事故のバックに潜んでいたものは・・・。
<満願>は先にザ・ベストミステリー2011で取り上げたが、再び読んでみた。鵜川妙子という女性が殺人を起こした動機を再度考えることになったが、家宝の掛け軸に対する愛着、誇りが他人には理解できないものだったのかも。「酒に強いのも不幸だが、女房が立派なのはなお悪い」と夫重治の、あなたという妻を持ったことを身の不幸と嘆いていたのを知っていたのか?
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