主な登場人物:
◇ 動機 |
警察署の内部で金庫に保管の30冊の警察手帖が盗まれた。犯人は内部の人間か?はたしてその動機は? |
貝瀬正幸 |
J県警本部警務課企画調査官。親子2代の警察官。警視、44歳。
自ら提案の警察手帖の紛失防止を狙って導入の新制度が・・。
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◇ 逆転の夏 |
前科者の山本の元に“殺して欲しい”と、名乗れない男から完全犯罪の計画の電話がかかってきて・・・。 |
山本洋司 |
13年前に女高生殺害の前科を持つ40過ぎの離婚歴のある男。及川という保護司の世話で“ノザキ典礼搬送”に勤める。 |
◇ ネタ元 |
鷲見市に起きた主婦殺人事件を社運をかけて追っている。部下の上げた目撃情報は犯人に結びつくのか?自分のネタ元との関係は頼りになるのか? |
水島真知子 |
「県民新聞」の中堅記者、29歳独身。新聞の“鷲見戦争”の中、東洋新聞から引き抜きの話が・・・。 |
◇ 密室の人 |
地裁の裁判中、裁判長が居眠りをし、寝言で妻の名前を呼ぶという不祥事。その影響は?波紋の果ては? |
安斎正幸 |
D地裁の裁判長。先妻は6年前病死、茶室で知り合った若くて美しい茶道教室の先生の娘美和と1年前に再婚。 |
物語の概要:(図書館の紹介文より)
『陰の季節』で松本清張賞を受賞した著者の第2作品集。警察手帳紛失事件に内部犯行説が…。男達の矜持を描く迫真のミステリ。
読後感:
朝日新聞の天声人語(9月28日付朝刊)にこの作品のことが載っていて、読む動機に。
“動機”は短編でありながら警察署の内部で警察手帖が30冊保管庫から消えたその犯人捜しにまつわる内容である。主人公の警務の調査官xxが提案した退庁後に警察手帖を一括保管するという提案の試行での出来事。一方で背景に巡査であった父親が定年退職後妻を亡くし壊れてしまった父親との面会で感じたことがこの事件の動機に関わっていることに思いが及ぶきっかけに。犯人の動機を巡る洞察に。
一つ一つの短編はどれも粒ぞろいで著者の力量が推察できる。人間の弱みを巧みに描写していて、読者を引き込ませる。結末は意外な展開で又読み返したくなる。
“逆転の夏”は過去に殺人の罪を犯して今の勤め先で社長が知るだけで安心して働けるとは言えない。殺人の依頼の相手は誰だか判らず、疑心暗鬼に陥ってきて・・・。
電話の相手が山本と電話で話しすぎたことが失敗につながったとは。
“ネタ元”では地方新聞記者水島真知子の引き抜きの話が今まで不満だった社内の人間のこと、何故自分なのかの疑念に迷う心理。そしてネタ元であった彼女の本当の関係を知り・・・。
“密室の人”では裁判長が法廷で居眠りをし、寝言で妻の名を読んだという今まで聞いたこともなかった題材が描かれ、とても新鮮。司法記者に対する裁判所側の反応と対応、弁護人の行動などこれまた興味深い展開で一気に読み切った。
物語の軽快な展開、そぎ落とされて簡潔な文章、短編小説も素敵なものと改めて感じさせられた。
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