椰月美智子著 『るり姉』
 





              2013-10-25



(作品は、椰月美智子著 「るり姉」  双葉社による。)

             

 初出 「小説推理」2008年9月号〜2009年1月号に掲載された作品に加筆訂正。
 本書 2009年(平成21年)4月刊行。

 椰月美智子
(やづきみちこ):(本書より) 

 1970年神奈川県生まれ。「十二歳」で2002年第42回講談社児童文学新人賞を受賞してデビュー。「しずかな日々」で07年第45回野間児童文芸賞、08年第23回坪田譲治文学賞を受賞。他の著書に「未来の息子」「体育座りで、空を見上げて」「みきわめ検定」「枝付き干し葡萄とワイングラス」など。

主な登場人物

渋沢
母親 けい子
姉 さつき
次女 みやこ
末っ子 みのり
おばあちゃん
駄犬 アニー

母親のけい子はナース(精神科病院)、父親とは離婚、3人の子供を育てている。
さつき:今年の春高校生に。さつきが小1の時両親が離婚。
みやこ:さつきの1つ年下の中3。腐った赤キャベツの頭とるり姉から呼ばれるヤンキー。
みのり:小6
地域のバレーボールチームに6年生でレギュラー。

藤本
夫 開人
(かいと)
(通称 カイカイ)
妻 るり子

開人は運送会社の運転手。先輩に飲み会に嫌々誘われ、るり子に出会って一目惚れ。
るり子はけい子の四つ年下の妹。バツイチ(前の夫はまあ兄、仲が良かったのに何故別れたのか?)。
さつき、みやこ、みのり達からるり姉と慕われている。



物語の概要(図書館の紹介記事より)
 
 家族の日常は奇跡の連続だ。三姉妹が慕う、母親の妹のるり姉は天真爛漫で感激屋。そんなるり姉が入院した。るり姉が元気だった頃の愛おしい日々が語られる…。注目の著者が贈る、家族小説最新刊。

読後感

 第一章でるり姉の奔放さ、子供のような純真さ、そして渋沢家と藤本家の家族の仲の良さ、思いやりがイチゴ狩りの中に凝縮されていて、その後のるり姉の入院で急激に萎えていくるり姉の先行きに暗雲がたれ込める。

 次の第二から四章では、そこに至る半年ほど前の姉のけい子、みやこ、開人が主人公となり、るり姉との関係、るり姉が元気であった頃の様子が判ってくる。
 そして第五章ではみのりが主人公で4年後の様子が描かれる。果たしてるり姉はどうなっていたのか。

 うまい構成で読者を惹きつける。特に第一章が秀逸である。
 それにしてもこういうるり姉のような人物が居たら、家族はどんなに和み、いとおしい日々が過ごせるかと・・・。
 三人の娘達の行動も好い、母親の行動も好い、おばあちゃんの存在も好い。

 カイカイはなんだか最初は蚊帳の外といった感じだったが、第四章の開人のところでのるり姉とのやりとり、るり姉への首ったけの思い・・、なかなかのもの。幸せってほんとうに逃げていかないでこのまま続いたらと願わずにはいられない。

  

余談:

 読書でもって元気をもらえる作品がある。この作品もそんな心が軽くなるような本であった。新聞広告を見てすぐに読みたくなった。コピーの作戦勝ちか。

背景画は、るり姉が元気だった頃、みんなで出かけた苺狩りの様子をイメージして。

                    

                          

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