読後感:
『市立第二中学校2年C組』
2年C組の生徒全員?と担任の先生および幾人かの先生を含め、10月19日月曜日の一日を時間を追って描写。そのとき起こる事態、心の様子、時にバックグラウンド、時に家庭内の様子と通してみれば、つながりのない場合がほとんど。でも所々でつながっている話もあり、数ページであったり、少し多めのページであったりと。
どんなところに著者はウェイトを置いているのかなあと考えてしまう。多分著者が描きたかった箇所もあったり。
テーマは”いじめ”の話がやはり気になるかも。内海窓華に関するものが気になるところ。持ち物がなくなったり、特に遠足の際のグループ分けの辺りのいやさ加減は自分のことのように思えて本当にいやな時だったろう。そこに登場の救世主?悪魔?のような学級委員の金子の存在。とても救世主でなく、イヤ味みえみえ。でもその金子自体の存在も端から見ると嫌われていることを本人は知ってか知らずか。一生本当の友達が出来ないタイプと評される。
とにかく今時の中学生たちのイラダチ、ムシャクシャする気持ち、自分で自分がコントロールできない衝動と反省する気持ち。そしてちょっとした思いやり、優しさに感動してしまう純な気持ち。そんな色んな感情を内に込めて生きている中学生たちの存在がまぶしい。
対して大人はというと、保健室の矢吹先生(若い先生と思っていたら52歳だった)の人生を読み切った言動、担任の北村先生は26歳の若さと、男女ともの生徒に好かれているようだが、「明るく人気者のふりをしているけど、案外冷静に色んなことを見てるタイプではある」と評されているが、内海窓華にとってはちっとも救いにならない言動に嘆くばかり。
『しずかな日々』
読んでいると夏休みの小学5年生の男の子の人生のターニングポイントともいえる懐かしくもあり、これ以上もない幸せ感あふれる瞬間を味わっている様子が伝わってきて、一気に読み上げてしまった。
そこに含まれている情景は母との二人暮らし、学校でも影の薄い、友達もいないひっそりとした毎日であったのが、5年生の新学期、席の後ろに座った押野という、何の屈託もないこの存在が、自分のこれまでの有り様をすっかり外向きに変えてくれ、次々に自分を解放してくれる姿に感動。
それにおじいさんの古いが広くて大きな家と庭のあるまさに田舎の良さをあふれさせている舞台が大きな役割を果たしているようで懐かしさに浸ってしまった。
また空き地での草野球をする学年に関係のない友達の存在、押野の家族、特に姉との交流、母親と別れて母親の父親であるおじいさんとの二人だけの生活の経験から次第に外向きに変わってゆく姿を見るのもすがすがしくていい。
もうひとつ担任の椎野先生の優しい目に心を開かれ、大人たちのやさしさも捨てがたいところ。
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