椰月美智子著 
              『坂道の向こうにある海』






                    2014-02-25


 (作品は、椰月美智子著 『坂道の向こうにある海』 講談社による。)

             

 初出 「小説現代」2008年4月、7月、10月号、2009年2月、5月、8月号。
 本書 2007年(平成19年)7月刊行。

 椰月美智子:(本書より)
 1970年生まれ、現在小田原市在住。2002年「十二歳」で講談社児童文学新人賞受賞。2006年刊行の「しずかな日々」で野間児童文芸賞、坪田譲治文学賞をダブル受賞。その他の著書に「未来の息子」「体育座りで、空を見上げて」「みきわめ検定」「るり姉」「ガミガミ女とスーダラ男」など。

主な登場人物:

一寸木朝子
(チヨツキ)(28歳)

デイサービスセンター西湘勤務の介護士。特養に勤めて7年、そこを辞め職場を変わって4ヶ月。
今は相川正人と付き合って4ヶ月。その前は山中卓也と付き合っていた。情緒不安定?、正人といるとつい突っかかる。

相川正人

デイサービスセンター西湘勤務の主任。
梓と付き合っていたが、朝子を好きになって別れる。
顔好し、仕事も出来、性格も良し。


弟 悠

デイサービスを辞め、今は自宅で仕事探し中。芸能人にでもなれるくらい美人。

山中卓也
妹 祥子

正人と同じ職場。優しくひたむき誠実。おとなしく口数少ない。朝子と別れた後、梓と付き合っているが、人畜無害のいわゆるいい人。妹からは梓とのこと不釣り合いと言われる。
妹の祥子は開けっぴろげで、梓とすぐ仲良くなる。


物語の概要:
(図書館の紹介文より)

朝子と正人、卓也と梓は恋人同士。けれど少し前までは、朝子は卓也と正人は梓と付き合っていて…。城下町・小田原を舞台に描かれる、傷つき、もつれた四角関係の行方を描く、著者初の青春群像ストーリー。

読後感:

 朝子、梓、卓也、正人の各章があり、それぞれの立場での思いが綴られていって恋愛の様々、さらにその先の結婚を考えると間にあるそれぞれの事情でどういうことになるのか。
 なかで一番おとなしくもあり、惨めっぽい立場の卓也の行為に、己を重ね合わせてしまうほど、感情移入してしまう。女性としては梓の心の優しさがいい。

 朝子の独りよがりというか性格がぱっぱっと変化するところは扱いにくいだろうなあ、でもその気持ちの変化の源を察すると判る気がしたりしてなかなか捨てがたい女性でもある。
 正人はあまりに出来すぎ、完全な人間過ぎて、弱みが見つからなさそうでちょっと敬遠。でもそんな彼にも悩みどころが存在していた。

 4人の人物の絡みは心の機微が描写されていて「るり姉」でも感じたが、好ましい作品と感じる。落ち着くところはそうだったのかと。。。。
  
余談:

 著者の在住が小田原ということで、登場する舞台が小田原城址あたり、数年前に行ったのでなつかしい。そんな情景を思い出しながら楽しく読めた。

 背景画は、本書の「小田原ウメ子 −梓」の章の挿絵を利用。