山本一力著 『あかね空』

                   
2005-06-25

(作品は、文藝春秋 山本一力あかね空による。)

     
江戸の下町を舞台に家族の絆を描いた時代小説「あかね空」で 2002年、直木賞を受賞。

主な登場人物:

・京や主人永吉、女房おふみ。長男栄太郎、次男悟郎、おきみの三人兄姉
京都平野屋で修行し、京の豆腐を江戸に持ち込んで店をはじめる。世話になっている源治の娘おふみと夫婦になる。
・桶屋職人源治、女房おみつ、その娘おふみ
深川蛤町の三軒長屋に住む。 永吉を支える。
・鍛次郎
同業の担ぎ屋。京やとは商売敵だが、おふみになにけれとなく相談相手となる。
・相州屋清兵衛とその女房おしの
同業の豆腐屋。永大寺、江戸屋を得意先にもつ。4歳になる正吉を亀戸天神で迷子にし、行方知れず。おしのは永吉を正吉に重ね合わせて、影ながら支援する。

・(仲見世)江戸屋秀弥
相州屋とはなじみの取引相手。清兵衛より二十年後京やが続いていたら相州屋に貸すよう頼んで権利書を預ける。
・平田屋庄六
相州屋の跡地を手に入れたがる。さらには京やを潰そうと、栄太郎を賭場に誘い込む。
・木場の鳶親方政五郎

おふみと幼なじみ、栄太郎を預かる。おふみの思いを判っている。
・傳蔵

深川霊巌寺の裏、賭場の親分。筋目を重んずるところがある。生い立ちには訳ありの人間。

物語の大筋:

 江戸で豆腐屋を開業するため、京の南禅寺そばの平野屋で修行した永吉が、深川蛤(ハマグリ)町に上京してきた。
 近くの三軒長屋に住む桶屋職人の源治、その娘おふみや長屋のみんなの親切で、あれこれ準備が整い、京やという豆腐屋を開業した。
 しゃきっと腰のある江戸前木綿豆腐と、柔らかい京風豆腐では、口に入れた感じが違い過ぎた。 いつまで経ってもお客がつかず、豆腐は水風呂に溢れていた。
 永吉を腕の立つ豆腐職人と認めているが、同業の担ぎ売りの嘉次郎からヒントを得たおふみの努力で、相州屋清兵衛が得意の永大寺に取り入ることが出来るようになり、やがておふみと世帯を持ち、豆腐作りに励む。
 栄太郎、悟郎、おきみと三人の子供に恵まれたが、生まれるたびに不幸が襲う。 商売のこと、子供達と父、母の葛藤が小気味よくトントンと展開する。

感じたこと:

 湿めっぽくじっとりした感じでなく、からりとして時にほろりと、時に我が意を得たりと話の運びが実にいい。
 途中に出てくる話が後になって効いてくる伏線も、後で読み返してみるとなるほどと思わせる。読み返しても涙が溢れ出てしまうほど夫婦愛、兄弟愛、家族の絆そして人情の機微がよく出ている。 さすが直木賞作品と思わせる。
 特に鳶の政五郎の話の持って行き方には自然と涙が溢れてしまった。


 

   


余談1:

 とかくどの作品を読むかはちょっとしたきっかけがある。 今回の場合、ラジオの深夜放送か,どんな放送内容であったかは、夢うつつで寝ながら聞いていたので思い出せない。

 頭の片隅にいつか山本一力の作品を読もうと意識づけられていた。作家の名前も響いたこともある。 対談の内容も気に入った意識付けの要因であったのもある。


背景画は、鎌倉御霊神社でのアジサイ。

                               

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